多くの物件に影響?相続税評価額の算定方法見直しで「タワマン節税」封じへ。最新路線価とあわせて仕組みをわかりやすく解説
今年の路線価が発表されました。路線価は土地の公的な価格のひとつとして、相続税や固定資産税を算出するときにも使われます。この路線価と、マンション上層階の市場価格の差を利用した節税手法を「タワマン節税」といいますが、この「タワマン節税」を防止するために来年以降、マンションの評価方法が見直されることになりました。経緯を詳しく解説します。
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相続税評価額を算出する路線価とは?どうやって調べればいい?
路線価とは、土地そのものではなく、道路(=路線)につけられている価格のことです。この道路に面する土地が1㎡あたりいくらかを示したもので、この路線価に土地の広さ(㎡数)をかけて相続税の評価額を算出します。
路線価は毎年7月上旬にその年の1月1日時点のものが発表され、インターネットで確認できます。2023年の調査地点は約32万カ所あります。
実際は2面が道路に接している土地や奥行きの長い土地など多くのケースがあるため、それらを補正するための計算方法が定められています。
また、賃貸住宅が建っている場合は「貸家建付地」として評価が軽減されるなど、土地の形態によっても様々な調整が行われます。
2023年の路線価は全国平均で2年連続上昇
今年の路線価は、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し経済活動が活気を取り戻しつつあることもあって、全国平均で1.5%上昇しました。昨年に続き2年連続の上昇ですが、昨年の上昇率は0.5%だったことからも、勢いが出てきているのが分かります。
「日本一高価な土地」として毎年話題にのぼる「東京都中央区銀座5丁目・銀座中央通り」は、1㎡あたり4,272万円。38年連続のトップとなります。
全国的に見ても、都道府県庁所在都市47市のうち、上昇が前年の15都市から29都市へとほぼ倍に。下落が続いている地域でも下落幅が縮小していることから、路線価は上昇傾向にあるといえます。
路線価が上がるということは、相続税や固定資産税額の引き上げにつながります。そのため、不動産を持っている人は特に、押さえておくべき情報といえるでしょう。
「タワマン節税」防止へ。仕組みと見直しの経緯を解説
それでは、路線価とマンション上層階の市場価格の差を利用した節税手法である「タワマン節税」とはどのような仕組みなのでしょうか。実はタワーマンションに限らず、3階以上のマンションを区分所有している人すべてに関わる改正が行われる見込みです。
不動産の相続税は土地(路線価)と建物の評価額をもとに算出されます。マンションの場合の土地の評価額は、建物が建っている土地の評価額÷各戸の専有面積分で表されるため、戸数が多いマンションほど、1戸当たりの土地の評価額は低くなります。平均総戸数が300戸にもなるタワーマンションは、まさしくそれに当てはまります。
さらに、マンションの実際の売買価格は上層階になるほど高くなります。その乖離率(市場価値÷評価額)は平均2.34倍。一戸建ての乖離率平均が1.66倍であることからも、マンションの乖離率は高く、戸数が多く上層階が高額になるタワーマンションが乖離率を引き上げていることが分かります。
例えば1億円を現金で相続したときは、当然1億円分の相続税を納めなければいけません。しかし、1億円のタワーマンションを相続した場合は平均乖離率2.34倍を当てはめると、評価額は約4,273万円。そのため、タワーマンションをはじめ、乖離率の大きい不動産で相続を行うことを「タワマン節税」と呼びます。
大幅な節税ができてしまうことから問題視されるようになり、今回、マンションの評価方法が見直されることになったのです。
マンションの評価方法はどう見直される?
具体的には、以下のような評価方法の見直しが検討されています。
現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率×最低評価水準0.6(定数)
現行の相続税評価額に評価乖離率をかけたものを理論的な市場価格として、その60%を評価額とする、という方法になります。評価乖離率については以下の計算方法が示されています。
評価乖離率=①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220
①:当該マンション一室に係る建物の築年数
②:当該マンション一室に係る建物の「総階数指数」として、
「総階数÷33(1.0を超える場合は1.0)」
③:当該マンション一室の所在階
④:当該マンション一室の「敷地持分狭小度」として、
「当該マンション一室に係る敷地利用権の面積÷当該マンション一室に係る専有面積」により計算した値
ちなみに評価額が市場価格の60%以上の物件については、現行の評価額が採用されます。
マンションの評価方法見直しはいつから始まる?
マンション評価方法見直しの施行については、今後パブリックコメントなどを経て調整が行われ、2024年1月からとなる見通しです。
乖離率の高いタワーマンションに注目が集まっていますが、現在、約65%のマンションの評価額が市場価格の半額以下となっている現状からも、ルール見直しで多くの物件が影響を受けるとみられます。
3階以上のマンションを区分所有されている大家さんも、いま一度、現在の市場価格と評価額を見直し、必要であれば贈与等を検討してみる時期かもしれません。
※この記事内の情報は2023年7月19日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
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