住宅の省エネ化・脱炭素への動きが進行。これから先の賃貸住宅「ZEH」を理解しよう
「ZEH(ゼッチ)」についてご存じでしょうか?認知率は注文住宅建築者が8割なのに対し、賃貸入居者は2割にすぎません。賃貸住宅オーナーで知らないという人も少なくないでしょう。今後、住宅の省エネ性能の主流となる「ZEH」について、導入された背景や基本的な内容、賃貸経営への影響などを紹介します。
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温暖化対策で基準強化。2030年にZEH義務化?
日本政府は地球温暖化への対策として「2050年までにカーボンニュートラル」「2030年度までに温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)」の目標を掲げ、脱炭素社会の実現を目指しています。
その達成に向けた建築分野での取り組みとして、建築物省エネ法が改正され、2025年4月からはすべての新築住宅に現行の省エネ基準(2016年制定)への適合が義務化されることとなりました。
さらに「2030年度以降に新築される住宅で、ZEH水準の省エネルギー性能の確保を目指す」との政府目標が設定されています。
つまり今、建築を検討しているなら、現行の省エネ基準ではなく、もう一段厳しいZEH水準の賃貸住宅が、長い目で見たときに競争力の維持につながるでしょう。
「建築物の省エネ性能表示制度」がスタート(省エネ性能ラベル)
2024年4月からは「建築物の省エネ性能表示制度」がスタート。住宅の購入や賃借を検討している人が省エネ性能を比較しやすいよう、新築物件の広告は省エネルギー性能に関する表示が努力義務となります。中古物件も表示が推奨される。つまり車を燃費で比較するように、住宅を省エネ性能で比較する時代になるわけです。
「建築物の省エネ性能表示制度」が始まると、省エネに関わる3つの指標がわかりやすく表示されるようになります。①★マークの数で表す「エネルギー消費性能」、②7段階の等級で示す「断熱性能」の2つが必須で、③年間の目安光熱費は任意項目。ZEHに適合するか否かも表示されます。
省エネ+創エネで脱炭素集合住宅は4種に定義
「省エネ住宅」とは、冷暖房機器で使うエネルギー消費量を抑えるために、建物本体の断熱性や気密性を高めつつ、冷暖房や給湯などの設備機器を高効率にした住まいのことを指します。熱の出入りが少ないため、光熱費を節約しながら室内の温度環境を快適に保つことができる、いわば“燃費”の良い住宅のことです。
しかし、省エネで消費量を減らすだけでは脱炭素には力不足。そこに太陽光発電による“創エネ”を加えたのが「ZEH」です。
「ZEH」とは、エネルギーを使う量と創る量を相殺して、1年間の消費エネルギーの総量を実質的にゼロ以下にする住宅のことです(図表②)。省エネ性能を比較すると、ZEHは現行の省エネ基準より20%高くなっています。
なおアパートやマンションのような集合住宅は、ZEH-M(ゼッチ・マンション)と呼ばれます。高層になって住戸数が増えても限りある屋上面積に十分な太陽光発電を搭載できず、エネルギー総量をゼロにするのは難しいケースも多数。そのため省エネ割合に応じて4つの種別があります(図表③)。創エネ以外のZEH水準は共通です。
一次エネルギー 消費の削減率 (省エネ+創エネ)※ |
建物階数の目安 | |
『ZEH-M』 (本来のゼッチ) |
100%以上 | 低層タイプ 1~3階建て |
Nearly ZEH-M (近ゼッチ) |
75%以上 100%未満 |
|
ZEH-M Ready (準ゼッチ) |
50%以上 75%未満 |
中層タイプ 4~5階建て |
ZEH-M oriented (ゼッチ志向型) |
20%以上 (省エネのみ) |
高層タイプ 6階建て以上 |
※住宅性能表示制度の「断熱等性能等級5」かつ「⼀次エネルギー消費量等級6」の両方をクリアした「ZEH 水準」は共通
ZEHを採用することのメリットは下のコラムの通り。建物自体の性能が優れているので、長きにわたり資産価値や収益性を維持できます。
また、断熱・省エネ性能に優れた住宅は、光熱費が削減できて住環境も快適。差別化となり空室対策や家賃のアップにつながります。
災害時に太陽光発電などで発電できることも安心です。入居者にとっても恩恵があるため、集客力強化や退去防止になるでしょう。
ZEHを採用することによるオーナーのメリット
● 建物が劣化しにくく、長く使える(長寿命) ● 付加価値が高く、差別化できる ● 快適な住環境で入居者確保・退去抑制 ● 売電収入を得る、または入居者に還元 ● 融資を得やすい |
省エネ住宅の建築費への補助金あり。競争力を高めるための投資と考える
ZEHの条件をクリアするには、相応に建築コストが高くなります。
ただ、国が政策として進めているため、工事費用の一部をカバーする補助制度が用意されているので活用するようにしましょう。
例えば「中高層ZEH-M支援事業」は、4~5階のマンションが対象で、補助対象経費の3分の1以内の補助金が出るというもの。予算が決まっているので、利用する場合は事前に確認してください。
また、事業者が建物の屋根を借りて無料で太陽光発電システムを設置し、建物の所有者と電力購入契約を結ぶ「TPO(第三者保有)モデル」を活用すれば、初期投資を抑えることも可能です。
賃貸入居者の主流となる現在の20代は、断熱性の優れた実家で生まれ育ち、当たり前のように性能の高い部屋を求める傾向があります。数十年前の低い住宅性能のまま老朽化を迎えた物件は、住宅性能を求める入居者に選ばれにくくなっています。
また今後、ZEH水準の賃貸住宅が増えれば、さらに競争力が低下しかねません。次世代に優良な資産を受け継いでいくために、ZEH水準での建て替えを視野に入れるのも良いでしょう。ZEH対応のコストを単なる負担増ととらえず、将来的に安定的な収益を得るための投資と考えてみましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年11月25日時点のものです。
文/木村 元紀
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