アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説

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公開日:2024年1月10日
更新日:2024年3月8日
アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説1

アパート経営をするうえで必ず知っておかなければならない概念である「利回り」。「利回り」とはどの数字を指すのか、その計算方法や相場、基本となる考え方、利回りを上げる方法などをまとめました。

アパート経営における利回りとは

アパート経営における「利回り」とは、そのアパートを経営するにあたり投資額に対してどのくらいの利益があるのかを表す数字です。アパート経営の投資対効果をはかるための基準となります。

アパート経営においては、利回りを把握し、その最低ラインや目安を知っておく必要があります。アパートに限らず、利回りを意識しない経営は赤字になり、失敗のリスクが高くなります。

アパート経営の利回りの種類と計算方法

アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説2

アパート経営の利回りは、例えば4,000万円の物件で年間家賃収入が200万円の場合の計算式は以下の通りです。

200万円÷4000万円=0.05

計算してみると、利回り5%という計算になります。同じ物件で年間収入が400万円なら利回り10%。これは、アパート経営で「利回り」という場合に一般的に使われる「表面利回り」というものです。

実は利回りにはいくつか種類があり、大まかな計算方法は同じですが、その内容や数字が示す意味は異なるのです。

表面利回り

上記のように、「年間の家賃収入÷物件の購入(建築)価格」で表されるのが表面利回りです。

【表面利回りの計算式】
表面利回り = 年間の家賃収入 ÷ 物件の購入価格 ×100

表面利回りには、購入時の諸費用やアパート経営でかかってくるお金(経費)を考慮に入れていないため、実際の利益とイコールではありません。しかし、複数の物件の収益力を比較するときなどに、目安として用いられます。細かい要素が入っていない、シンプルな利回りということになります。

そのため「単純利回り」「グロス利回り」などとも呼ばれます。

想定利回り

「想定利回り」とは、アパートが満室だった場合の家賃収入を基準にした利回りのことで、期待できる最大利益の概算を求めるために用いられます。「表面利回り」は実際の過去1年の家賃収入を基準にしているため、空室があった場合は想定利回りの方が高くなります。

【想定利回りの計算式】
想定利回り = 年間の満室時家賃収入÷物件の購入価格 ×100

不動産投資の広告などでは、想定利回りが表示されていることがあります。しかし、実際に物件を購入してアパート経営を始めると想定利回りの通りにはいきませんので注意しましょう。

実質利回り

「実質利回り」とは、年間の家賃収入から固定資産税や火災保険料、修繕費、管理費などの経費を引いた実際の収入を、購入費用+諸経費の総額で割ったものです。

【実質利回りの計算式】
実質利回り =(年間の家賃収入-経費)÷(物件の購入価格+諸経費) ×100

収入も投資額も実際にかかるお金をベースにしているのが実質利回りです。アパート経営においては、実質利回りを基準に資金計画を行うのが最も現実的といえるでしょう。

アパート経営の利回り合格基準と最低ラインの目安は?

アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説2

アパート経営を始めるにあたり、どれくらいの利回りがあればアパート経営が成り立つかは気になるところです。アパート経営の利回りには、理想と最低ラインが存在します。

理想の利回りと最低ライン

立地や投資額などによっても変わりますが、新築アパートの場合、目指したい実質利回りは5%以上、最低ラインは3%程度とされることが多いようです。0%を下回ると赤字ということになります。

例えば、8戸あるアパートを諸経費含む8,000万円で建築した場合で計算してみましょう。家賃は7万円/月、空室率は10%と仮定します。年間経費は家賃収入の20%程度が目安なので134.4万円です。計算してみましょう。

7万円 × 8戸 × 12ヶ月 × 90% - 134.4万円 = 470.4万円

上記の470.4万円が年間の収入となります。

470.4万円 ÷ 8,000万円 = 0.0588なので実質利回りは5.88%で、健全に経営しているといえるでしょう。ちなみに、同じ物件でも空室率が40%だと実質利回りが3.36%となってしまいます。

アパート経営の利回り相場

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理想と最低ラインの目安はあるものの、アパート経営には立地や築年数、規模など様々な要素がかかわり、それぞれ利回りの相場も異なります。

ローンの返済方法などによっても利回りは変動するため、ここではいったん表面利回りでの相場について解説します。一棟アパートの2023年12月の全国平均利回りは8.06%、平均取得価格は7,857万円※とのデータがあります。

首都圏では平均利回り7.51%(取得価格8,242万円)なのに対し信州・北陸では13.69%(取得価格4,342万円)であることから、地域差もかなり大きいことが分かります。

取得価格も4,000万円以上の違いがあります。首都圏の利回りが低く地方で高いのは、家賃の設定額が都市圏の方が高い反面、取得にかかる費用も高くなるためです。

新築アパート(一棟)の利回り相場

アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説2

新築アパート(一棟)は取得費用(建築費用)が高いため、利回りは中古よりも低くなります。また、土地を元々所有している場合と、土地も含めて取得した場合で、利回りは大きく変わります。

例えば5,000万円の土地に3,000万円でアパートを建てた場合、年間家賃収入が300万円だとすると、土地を所有していた場合は表面利回り10%であるのに対し、土地購入も含めた利回りは3.75%となります。

土地込みの新築アパートを一棟購入した場合、表面利回りの相場はいくらくらいなのでしょうか。2024年1月現在、LIFULL HOME’Sで一棟売りアパート(条件:満室、新築、総戸数4戸~12戸)を検索した結果、東京都下で5~6%、地方で6~8%程度が相場のようです。

中古アパート(一棟)の利回り相場

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中古アパート(一棟)については、築年数によってかなり差が大きく、一概には言えませんが、築10年以内であれば新築と大きく変わらず5~8%程度が相場となります。全国平均では築10年未満の物件が6.36%、築10年~の物件が7.35%、築20年~の物件で9.39%というデータ※が出ています。

都心では築年数を重ねても利回りが下がりにくく、築20年~でも東京23区は6%台なのに対し、地方では利回り10%を超えるところも出てきます。

築20年を超えると地方では購入価格が1,000万円を下回る物件もあるため、表面利回りが15%を超える場合もあります。しかし、築年が古い物件はランニングコストや空室リスクも高くなるため、表面利回りと実質利回りの差が大きくなりやすいのも特徴です。

アパート経営で利回りを上げる方法

利回りは様々な要素で増減することが分かりました。実質利回りを上げて、安定したアパート経営を目指すにはどうすれば良いのでしょうか。

アパート経営で利回りが低くなる理由とその改善方法

表面利回りも実質利回りも、大まかには「収入÷支出」の計算から導き出せます。利回りが低い理由は、収入に対して支出が大きくなることにあります。

つまり、利回りを改善する方法は「収入を上げる」か「支出を下げる」しかありません。実質利回りを上げるためには、具体的には次のような方法が考えられます。

空室を作らない

「理想の利回りと最低ライン」の例で再び計算してみましょう。

収入:7万円 × 8戸 × 12ヶ月 - 134.4万円 = 537.6万円
支出:建築費(諸経費含む) 8,000万円

満室の場合の実質利回りは6.72%ですが、空室率が上がるにつれ、利回りはどんどん下がっていきます。空室率20%で5.04%、空室率30%で4.2%。いかに満室状態に近づけるかどうかが利回りを左右します。

家賃を下げない

アパート経営の主な収入が家賃です。そのため、家賃を下げてしまうと利回りに直接影響します。同様の例で計算すると、家賃が7万円で満室であれば6.72%の利回りが、家賃6万円にすると5.76%まで下がってしまいます。(経費は115.2万円で計算)

家賃の減額は空室率を下げるには有効かもしれませんが、リスクの大きい方法です。物件と周辺の相場から、妥当な家賃を設定し、途中からの減額はできる限り避けたいものです。

人気の高い設備を入れる

空室率を下げて、家賃を上げる方法に、物件そのものの魅力をアップさせる方法があります。例えば、入居者に人気の高い設備を導入することで物件の付加価値を高めるのです。

「全国賃貸住宅新聞」による人気の設備ランキング※では、単身者向けで「インターネット無料」「エントランスのオートロック」「高速インターネット」「宅配ボックス」「浴室換気乾燥機」が上位5位でした。

間取りやターゲットによっても人気の設備は異なり、ファミリー向けであれば「追いだき機能」や「システムキッチン」が上位に入ってきます。

ただし、あまりに大がかりな設備投資は費用対効果が得られない可能性もあります。まずは比較的低コストで後付けできる宅配ボックスや、セキュリティーに有効な防犯カメラ、モニター付きインターホンなどの導入がおすすめです。

家賃以外で利益を上げる

アパート経営の主な収入は家賃ですが、家賃収入以外の方法で利益を上げる方法もあります。例えば、駐車場・駐輪場を貸し出すこともそのひとつです。初期投資や経費もアパートほどはかからないため、利回りのアップにつなげやすいこともポイントです。

他に、アパートの敷地内の自動販売機や、屋根に太陽光発電システムを設置することで、家賃以外の収益につなげることができます。

管理会社の契約や火災保険料を見直す

毎月かかるコストのひとつとして、管理会社への手数料があります。管理手数料の相場は家賃収入の5%程度と言われていますが、管理会社によって委託できる業務に幅があります。

建物の巡回や清掃、点検などが含まれる場合は、その頻度も様々。巡回や清掃等は自ら行う自主管理に切り替え、管理費のコストカットをはかる方法もあります。いま一度、管理会社の管理内容と手数料が妥当なものなのかを冷静に比較検討し、コストに合わないと感じたら見直すようにしましょう。

保険料についても同じで、補償範囲などを比較して、コストパフォーマンスの高い保険への切り替えを検討します。

アパートを相続した場合は、先代からのお付き合いがある管理会社や保険会社との契約を引き継ぐケースも多いでしょう。ただ「長い付き合いだから」という理由で継続するのではなく、内容をしっかり検討したうえで、必要であれば切り替えるのもひとつの方法です。

フリーレントをおこなう

空室を長引かせたくない場合は、フリーレントを検討してみるのも良いでしょう。フリーレントは一定期間、家賃が無料になる契約のことで、入居者にとっても引っ越しの初期費用が抑えられるというメリットがあります。

フリーレントの期間は家賃が得られないため、家賃を下げるのと同じでは?と思われるかもしれませんが、家賃を下げるのは最終手段です。

その理由のひとつは、同じ物件で部屋を借りている他の入居者と不公平が生じ、トラブルになりかねないためです。

さらに、家賃の減額で利回りを下げることが、物件自体の資産価値を下げることにつながるためです。もし将来、物件の売却を考えたときには売値にも影響が出てしまいます。

フリーレントで一時の損失が出ても、家賃を下げるよりはずっとリスクが少ないので、選択肢のひとつとして考えてみましょう。

この物件の利回りは妥当?投資についての相談先

アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説2

多くの選択、判断をともなうアパート経営。投資物件売却のページには様々な規模・利回りの物件が掲載され、数字だけでは判断がつかないことも多いでしょう。アパート経営についての相談先としては、どのようなものがあるでしょうか。

具体的な物件については不動産投資会社に、資金計画まで含めたお金の相談はファイナンシャルプランナーへ。ローンについて不安がある人は、信託銀行なども選択肢に入ってくるかもしれません。

アパート経営に際して法人設立などを検討している人は行政書士、確定申告等は税理士に相談することになるでしょう。専門家にも得意分野があるため、不動産投資に関する業務が得意な相談先を探しましょう。

また、身近な投資経験者からに話を聞いてみるのも有効です。経験をベースにした質問や悩みを相談することで、情報収集に役立ちます。専門家を紹介してもらえるかもしれません。

アパート経営の利回りを見るときの注意点

アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説2

最後に、これまでの内容からアパート経営における利回りを考えるうえでの注意点をまとめます。投資物件の購入を検討しているときや、アパート経営を始める際の参考にしてみてください。

実質利回りで計算する

前述の通り、利回りには「表面利回り」「想定利回り」「実質利回り」があります。アパート経営で資金計画を行う時は、必ず実質利回りで計算するようにしましょう。

アパート経営にかかる年間経費を現実的に想定しておく

実質利回りを想定するときにズレが出やすいのが、収入から差し引く年間経費です。家賃収入の20%という目安はあるものの、その物件のケースに当てはめて計算する方が実際の利回りに近い数字が導き出せます。

ポイントは、年間経費には固定資産税などの税金、保険料、管理委託費、入居者募集費用の他に、修繕費も含んでおくことです。

修繕費は入退去時の清掃やクロス貼り替えといった軽いものから、数年に1回のメンテナンス、10年以上の単位で行う外壁・屋根等の大規模修繕があります。

大規模修繕となると数百万円もかかるため、将来の必要経費として逆算し、毎月の収益から積み立てておく必要があります。毎月の積立分も修繕費として含めることで、より正確な利回り計算ができます。

空室率をリサーチして利回りの計算に含める

アパート経営には、必ず空室リスクが伴います。LIFULL HOME’Sの調査による2024年1月現在の賃貸用住宅の空室率は、2024年1月現在、東京都で14.5%となっています。

空室率というと、一般的には「空室戸数÷全体の戸数×100」の時点空室率で示されることが多くなっています。

しかし、アパート経営では空室期間も加味した稼働空室率で計算した方がより正確です。稼働空室率は「(空室戸数 × 空室日数)÷(全体の戸数 × 365日)×100」で計算され、空室戸数が少なくても、空室期間が長くなれば空室率は高くなります。

満室経営が理想ではありますが、自然発生的な人の入れ替わりでも空室は発生します。エリアの傾向や平均がありますので、それを目安として計算に入れるようにしましょう。

ローンの金利が上がった場合を想定しておく

アパートの取得に際し変動金利型でローンを組んだ場合、半年ごとに金利の見直しが行われます。そのため、金利の最低ラインと最高ラインを想定して、金利が高くなってもローン返済が滞らないような計画を立てる必要があります。

金利が上がりそうなときは、固定金利型に変更する、繰り上げ返済をするなどの対策も有効です。

家賃が下がった場合を想定しておく

「家賃を下げるのは最終手段」ですが、アパートの築年数が古くなると競争率が低下し、空室を避けるために家賃を下げざるを得ない局面があります。

総務省の資料※によると、借家の経年劣化による家賃の下落率は年率1%と言われています。計算値では0.84%というデータも出ています。

0.84~1%の年間下落率で計算すると、10万円の家賃も10年後には9万~9.16万円に、20年後は8万~8.32万円まで下がるということになります。アパート全体への影響はかなり大きいことが分かるでしょう。

計算値は「平均築年数の前年差を考慮した経年変化率(木造共同住宅)」2014-2017年の平均値を参照

まとめ

アパート経営の利回り最低合格ラインと理想の目安は?計算方法や相場を解説2

利回りは、投資に対するリターンが分かりやすく、アパート経営を考えるうえでとても便利な数字です。しかし、利回りには多くの要素がかかわり、その利回りですら物件を判断するひとつの指標にすぎません。

アパート経営は長期間の投資です。1年後、5年後、10年後、20年後の状況も想定しつつ、トータルで黒字となるように試行錯誤を重ねる必要があります。利回りは常に意識しながらも目の前の課題をしっかりと見極め、動くようにしましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年1月10日時点のものです。

文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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