【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説

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公開日:2024年3月27日
更新日:2024年3月28日
【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説1

最近増えている訪問営業トラブルの注意点や、資材高騰による工事費用のトラブルなど、大規模修繕にまつわる気になるトラブル事例について、弁護士の久保原先生・伊藤先生がわかりやすく解説します。

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この記事の監修者
【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

文/九帆堂法律事務所弁護士 久保原 和也(写真)、伊藤 和貴

<久保原弁護士プロフィール>
2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。2008年、九帆堂法律事務所設立。最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。
<伊藤弁護士プロフィール>
東京大学法科大学院修了。2018年、九帆堂法律事務所入所。大家さんの代理人として多数の賃貸借案件を扱う。

Q1:飛び込み営業をしてくる会社には警戒が必要だと思いますが、特に注意する点はありますか。

【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A1:工事が本当に必要か、代金が適正かなどと言う前に、焦らないことが何より重要です。

突然インターホンを鳴らし、「建物を拝見したところ、今すぐ大規模修繕を行わないと大変です」などと言って営業する会社がいます。

建物の老朽化に応じ、必要な工事は惜しみなく行うべきです。賃貸物件の収益性を維持するために大規模修繕が合理的な場合もあります。ただ訪問営業の場合、突然の訪問に驚きながらも営業トークを聞いていると、建物が危険な状態であり、早急に決断しないといけないという精神状態になってきます。この点が一番危険です。

一度お引き取り願い、落ち着いて考えても遅くありません。そうすれば、建物の危険性を確認し、工事内容が適正か、代金の合理性が取れているかなど、十分に考慮して修繕会社を選択すべきだということに、容易に気付くはずです。

Q2:大規模修繕工事の足場を組み始めたら、入居テナントより賃料減額請求を受けました。

【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A2:通常、賃料減額に応じる必要はありませんが、各入居者に寄り添った対応が必要です。

貸室の全部又は一部が使用不能となった場合、その割合に応じ賃料が当然に減額されます。例えば、大規模修繕工事の施工時に店舗の出入口が塞がって入店できない場合、日数に応じて賃料が減額されます。また工事で生じた騒音や振動は、受忍限度を超える場合、損害賠償責任を負うことがあります。

逆に言えばテナントが問題なく使用でき、工事の騒音や振動が受忍限度内に留まっていれば、オーナーは賃料減額等の請求に応じる必要はないということになります。

しかし、テナント側からすれば、工事中の建物で来客数などに不安が生じるのは当然でしょう。計画段階でテナントに予定を伝え、営業への悪影響がなるべく軽微になるよう相談し、理解を得るための手立てを尽くすことが大切です。

Q3:修繕中、入居者の室内天井に水漏れが生じました。オーナーに法的責任はありますか。

【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A3:法的責任の有無にかかわらず、まずは大家さんが問題解決に向けて真摯に対応すべきです。

漏水事故が発生した場合、原因が施工会社のミスなのか、建物の老朽化なのか、はたまた上階の洗濯機から水漏れしたのか等、原因によって最終的に誰が法的責任を負うかが変わります。

しかし、誰が責任を負うかという点に気を取られ、原因が分かるまで行動を控えるという姿勢は、必ずしも適切ではありません。貸室に問題が生じている以上、大家さん抜きで問題は解決できません。

また、軽微な漏水と侮っていると天井の落下や、室内に大量のカビが発生して収拾がつかなくなるおそれがあるなど、大家さんに直接降りかかる問題でもあります。

まずは漏水を一刻も早く止めることを最優先事項と捉え、事態の把握、原因の究明に向け大家さんが積極的に行動することが重要です。

Q4:資材高騰という理由で工事代金増額を求められ、完成後は想定外の追加代金も請求されました。

【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A4:工事代金変更に関する契約の定めの有無、追加工事の合意の有無などが問題になります。

資材・人件費の高騰が続いています。工事会社から、その費用高騰分を工事代金に反映するよう求められることは少なくありません。

建築工事請負契約で代金を定めていれば、代金が自動的に増額されることは基本的にはありません。ただし契約書に、市況に応じて工事代金を変更する旨の条項が定められている場合、適正な増額幅を巡り工事会社とよく話し合う必要があります。

他方、追加工事の代金請求に関しては、裁判となれば元々の契約との関係、追加工事の合意の有無、追加工事の代金の合意内容等が争点となります。資材・人件費の高騰や追加工事の代金が問題となり得ることは事前に予測できますので、事前に工事会社と対応策を協議し書面化することが重要です。

Q5:大規模修繕の結果、期待した出来栄えでない場合でも代金を支払わなくてはいけませんか。

【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A5:支払義務は当然には消滅せず、問題の箇所ごとに損害賠償請求等が可能か検証を要します。

工事代金の支払時期は、完成した成果物の引き渡しを受けた時とするのが原則ですので、大規模修繕工事が完了し、工事会社から建物の引き渡しを受けたタイミングで代金を支払う必要があります。

他方、建物が工事請負契約の内容に適さない状態になっていた場合、発注者は工事会社に対し、修補請求、代金減額請求、損害賠償請求等をすることができます。

いずれの請求の場合も、問題の箇所の仕上がりが期待外れだという程度では足りず、締結した契約に対して不適合だと言える必要があります。1箇所ずつ、本当に修補を要する状態か、当初契約した内容とどう異なるのか、その原因は何か、どんな損害が発生しているのか等、検証する必要がありますので、専門家に相談しましょう。

Q6:区分所有マンションにおいて、大規模修繕の修繕積立金が貯まっておらず困っています。

【訪問営業、資材高騰など最近増えている事例も】大規模修繕にまつわるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A6:修繕の必要性によっては、金融機関から借金をしてでも工事を行う必要があります。

区分所有マンションでは、修繕計画を立てて将来必要な大規模修繕の費用を見積もり、それに応じ区分所有者から修繕積立金のプールを行います。ただ、修繕計画の予測が甘かったり、修繕積立金の滞納があったりすると、費用が準備できていない事態が生じ得ます。

緊急時の出費も見込んだ修繕計画を立てること、滞納が生じたときに速やかに督促、法的手段を取って滞納者が増えないよう対処することが重要です。

大規模修繕を怠ると、漏水等の事故が多発し、その都度修繕工事が必要となり、かえって出費が増える事態を招きかねません。総会で修繕積立金の増額決議を得るか、場合によって金融機関から資金を借りてでも、必要な大規模修繕はやらざるを得ないことになります。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2024年3月1日時点の情報です。

イラスト/黒崎 玄

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