「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉

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公開日:2024年4月3日
更新日:2024年4月8日
「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉1

3月8日に閣議決定された「改正住宅セーフティネット法」。高齢の方や所得の低い方、つまり住宅確保要配慮者(要配慮者)の賃貸住宅への円滑な入居を促すもので、孤独死の対応や残置物の処理についてもルールが整備されています。今回の法改正で変わった点を解説します。

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「住宅セーフティネット法」は2007年制定。2017年に改正

「住宅セーフティネット法」の正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」で、2007(平成19)年に制定、2017(平成29)年に改正されました。住宅確保要配慮者とは、低額所得者(月収 15.8 万円以下)、被災者(発災から3年以内)、高齢者、障がい者、子育て世帯(子供が高校生相当以下)、外国人等と定義されています。

2017年から施行されている現行制度の概要は以下の3本柱。

◆ 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅(セーフティネット登録住宅)の登録制度
◆ 登録住宅の改修・入居への経済的支援
◆ 住宅確保要配慮者に対する居住支援

「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉2

登録制度については、賃貸オーナーが自分の所有する賃貸物件を住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅として「セーフティネット住宅情報提供システム」に無料で登録し、広く情報公開できる制度です。登録には申請が必要で、登録によって間取り変更やバリアフリー改修などの工事に対し賃貸オーナーに補助が出ます。

さらに「家賃低廉化に係る補助」として世帯月収が15.8万円以下の入居者を登録住宅に受け入れる場合、家賃補助や家賃債務保証料などが補助されます。補助額は自治体によって異なりますが、一例として月額最大4万円が最長10年間オーナーに支給されます。

さらに支援活動を行うNPO法人などを「居住支援法人」として指定する仕組みをプラス。居住支援法人の主な活動は、入居前は物件の紹介や内覧の同行、入居後は定期訪問による安否確認や緊急時の駆け付けなど多岐にわたります。

今回の改正の背景は?大家さんの不安は依然として大きい

「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉2

2017年に大幅な改正が行われ「新たな住宅セーフティネット法」とも呼ばれた現行の法律ですが、今回さらに改正されることになりました。

背景には、2030年には800万世帯に迫るとも言われる単身高齢者世帯の増加や持ち家率の低下があります。要配慮者の賃貸住宅へのニーズはさらに高まると想定されるものの、孤独死や家賃滞納などへの不安による大家さんの拒否感はまだまだ根強く、国交省の調査では高齢者の受け入れに対して約7割の大家さんが拒否感を示しています。

その一方で賃貸の空室は一定数存在しており、賃貸オーナーと入居者、どちらも安心できる更なる仕組みづくりが必要とされていました。

また、居住支援法人が増えているとはいえ、入居した後の見守りや、入居者の生活に関する様々な相談先を求める大家さんも多くいるという現状がありました。

改正法の「大家が賃貸住宅を提供しやすい市場環境」とは?

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今回の改正法案の概要は以下の通りです。

◇大家が賃貸住宅を提供しやすく、要配慮者が円滑に入居できる市場環境の整備
◇居住支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進
◇住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化

現行の「住宅セーフティネット法」と比べると、支援策がより具体的になったのが分かります。賃貸オーナーとしては「大家が賃貸住宅を提供しやすく」の部分が気になりますが、次のような支援策がとられています。

終身建物賃貸借の利用促進

終身建物賃貸借とは、入居者が死亡するまで更新がなく、死亡時に終了する契約のこと。貸借権の相続が発生しないため、契約終了後の手続きが簡単になります。終身建物賃貸借契約の利用には都道府県知事の認可が必要ですが、その認可手続きが簡略化され、住宅ごとから事業者ごとの認可となります。

居住支援法人による残置物処理の推進

居住支援法人の業務に、入居者からの委託にもとづく残置物処理が追加されます。

「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉2

これまでは入居者死亡時の残置物は相続人が引き取るか処分する必要があり、相続人が見つからない場合、賃貸オーナーが勝手に処分することもできず次の人に物件を貸せないなどのリスクがありました。あらかじめ委託された居住支援法人がこれを行えるようにすることで、残置物の処理がスムーズになります。

家賃債務保証業者の認定制度の創設

要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者(認定保証業者)を国土交通大臣が認定する仕組みです。現在の登録業者に加えて「要配慮者の家賃債務保証を原則引き受ける」「緊急連絡先を親族などの個人に限定しない」などの基準にのっとった業者を認定することで、家賃滞納リスクを軽減することがねらいです。

生活保護受給者の扱いは?家賃は代理納付が原則に

さらに大家さんの不安を軽減するための取り組みとして、「居住サポート住宅」の認定制度がつくられます。法律上は「居住安定援助賃貸住宅」とされるもので、居住支援法人等が大家さんと連携し、日常の安否確認と見守り、生活・心身が不安定になった時の福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。

現行のセーフティネット登録住宅では「大家が拒まないこと」、「その物件情報を公表すること」によって要配慮者に住宅が供給されていましたが、それに「居住支援法人等がサポートを行うこと」が加わるイメージです。

「入居して終わり」でなく、訪問など日常の見守りに加えて、もし一人暮らしが困難になった場合に福祉サービスにつなぐところまでがサポートされます。また、「居住サポート住宅」に認定されると、人感センサーなど安否確認に必要な設備設置のための費用の一部が補助されます。

「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉2

生活保護を受給している入居者の場合は、家賃の代理納付が原則化されます。これは、生活保護の一部として支給される住宅扶助費を福祉事務所などが代理で直接、家賃として支払う仕組みです。住宅扶助費の生活費などへの流用を防ぐことで、滞納のリスクがなくなります。

目標は「施行後10年間で10万戸、人口カバー率9割」

住宅支援は福祉や地域との連携が不可欠であることから、連携を強化する仕組みも追加されます。「居住支援協議会」という、地方公共団体の住宅部局・福祉部局、居住支援法人、賃貸オーナー含む不動産関係団体、福祉関係団体(NPO)などで構成される会議体の設置が努力義務化されます。

官・民で話し合いながら、国土交通大臣と厚生労働大臣が策定した基本方針に沿って、地域ごとの総合的な居住支援体制を整備していくことが目的です。

これらの改正によって、居住サポート住宅の供給戸数を施工後10年間で10万戸目指すとしています。また、居住支援協議会を設置した市区町村の人口カバー率を施行後10年間で9割と目標設定しました。

まとめ

「住宅セーフティネット法」改正法案が閣議決定!大家さんが賃貸住宅を提供しやすくなる⁉2

国交省の報告書では、セーフティネット住宅のこれまでの成功事例として、NPOによるサブリースで住宅支援と空室対策を両立した取り組みなどが紹介されています。

人口減少にともない単身社会人や学生が減っていく一方、増加している高齢者の受け入れは賃貸オーナーにとって避けて通れない問題となりつつあります。

今回の改正は、要配慮者受け入れリスクを軽減する施策が多く盛り込まれており、賃貸オーナーにとってはより検討しやすくなります。25㎡以上などの要件はあるものの、セーフティネット住宅は1戸から登録できます。ぜひ、社会貢献にもなる空室対策として考えてみてはいかがでしょうか。

※この記事内のデータ、数値などに関して本記事は、2024年4月3日時点の情報をもとに制作しています。

文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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