好調といわれる賃貸マンション市場の懸念点。今後の見通しや課題は?事業者を対象にアンケート調査

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公開日:2024年6月12日
更新日:2024年6月12日
好調といわれる賃貸マンション市場の懸念点。今後の見通しや課題は?事業者を対象にアンケート調査1

都市部を中心に賃料が上昇を続けるなか、賃貸マンションのマーケットはどのように推移しているのでしょうか。また、市場に懸念点や課題があるとすれば考えられることとは?賃貸マンション市場を把握するために三菱地所リアルエステートサービス(株)が実施したアンケートの結果をご紹介します。

2024年の賃貸マンションマーケットの見通し

好調といわれる賃貸マンション市場の懸念点。今後の見通しや課題は?事業者を対象にアンケート調査2

アンケートの回答者は、賃貸マンションを手がけるデベロッパーやアセットマネジメント会社の仕入れや管理運営部門などの担当者。回答エリアは約9割が東京23区内、1割が大阪市内で、2024年2月〜3月に実施しています。

不動産市場には一定の期間で、マーケットが「回復期」→「拡大期」→「縮小期」→「後退期」と変化するサイクルがあるとされています。現在の賃貸マンションマーケットがどの段階にあるかを聞いたところ、「拡大が続き、ピークに近づいている」との回答が45.8%で過半数近くとなりました。次いで「回復が続いている」28.9%、「ピークである」14.8%が続きます。

前回2022年の調査では「拡大が続き、ピークに近づいている」と「ピークである」がそれぞれ約3割という結果でした。また、「ピークを過ぎ、減退局面に転じた」は前回14.9%から今回7.0%に半減しました。

「賃貸マンション市場に良い影響を与えると見込まれる要因」については「分譲マンションの価格高騰」が最も多く、次いで「雇用拡大・賃金の上昇」、「都心部への人口回帰」が続いています。

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市場に悪い影響を与えると見込まれるマイナス要因

好調といわれる賃貸マンション市場の懸念点。今後の見通しや課題は?事業者を対象にアンケート調査2

賃貸マンションマーケットが拡大期からピークにあるという見方が大部分を占めるなか、懸念されるマイナス要因はあるのでしょうか。

市場に悪い影響を与えると見込まれる要因は、「供給過剰」が最も多く、「物価・資源価格・人件費高騰」、「日銀の金融引き締め」が上位3位までとなります。

需給バランスの不均衡や建築費や、管理運営コストの上昇分を賃料に反映しきれない状況がマイナス要因と見られているようです。

また、4位に入った「高齢化の進行・世帯数減少」は前回と比べて割合が増加しています。

空室率や、成約時・契約更新時の賃料単価水準は?

空室率についての見通しは、前回と比較すると「やや上昇する」が37.0%→28.2%と8.8%減少。「変わらない」は31.7%→40.1%と8.1%増加しました。しばらく現状維持という見方が4割を占めています。

成約時の賃料単価水準について、前回は「やや上昇する」「上昇する」の合計が35.6%でしたが、今回は65.5%と大きく増加。契約更新時の賃料単価も、上昇予測が62.7%と多くを占めています。

これには、インフレによる物価高や資源価格高騰の影響の他、都心回帰で需要が高まり、賃料を上げても成約することなどが影響していると分析しています。

コストや取得価格は上昇、期待利回りは低下の見通し

好調といわれる賃貸マンション市場の懸念点。今後の見通しや課題は?事業者を対象にアンケート調査2

賃料については、多くが上昇の見通しでしたが、コストも上昇傾向という結果が。やはり物価高の影響が大きく、広告宣伝費やフリーレント期間などのリーシングコストは6割以上、それ以外の管理運営コストは7割以上が「やや上昇」「上昇」という見通しです。

取得価格についても同じで、「やや高くなる」、「高くなる」で71.1%となり、前回の55.8%から大幅に上昇しています。取得価格は今後も高騰すると予測されていることがわかりました。

賃貸マンション(用地含む)の取得競争についても、「今後更に激化する」との回答が約8割となっています。

投資家の期待利回り水準については、「変わらない」が38.0%で「やや低下」「低下」の合計が43.6%。前回と大きくは変わらず、上昇(18.3%)よりも低下の見通しが多くなっています。

賃貸マンション事業のトレンドや今後の取り組みは?

賃貸マンションの市場規模については、「やや拡大」「拡大」の合計が52.1%と過半数を超え、引き続きマーケットは拡大するとの見方が優勢に。

賃貸マンション事業において注力して取り組んでいる施策・トレンドを3つまで複数回答で聞いたところ、次のような答えが上位5つとなりました。

賃貸マンション事業において注力して取り組んでいる施策・トレンド
1位 付加価値サービスの提供
2位 専有部の仕様・設備・機能の更新・見直し
3位 投資(取得)戦略の見直し
4位 共用部の仕様・設備・機能の更新・見直し
5位 出口(販売)戦略の見直し

 

最も回答を集めた「付加価値サービスの提供」(33.1%)は前回の5位から順位を上げています。具体的には以下のようなコメントがありました。抜粋してご紹介します。

・7坪ワンルームではなく、少し広めの部屋が注目を集めている
・ワンルームタイプからファミリータイプへの投資対象見直し
・以前は単身者住戸をメインとしていたが、最近はファミリー住戸の割合を増やしている
・水まわりの3点ユニットをトイレ・浴室セパレートに更新や、陳腐化した共用部の刷新などのフルリノベーション
・防音マンション等 ニッチなニーズへの対応
・専有部リノベーション、カーシェア導入
・宅配ボックスの新設、ジム(筋トレ)の新設

 

課題で最も多いのは「投資(取得)戦略の見直し」

賃貸マンション事業において対応に課題を感じている項目を3つまで複数回答で聞いたところ、以下が上位5項目となりました。

賃貸マンション事業の課題
1位 投資(取得)戦略の見直し
2位 専管理・運営コストの削減
3位 SDGs対応
4位 付加価値サービスの提供
5位 ESG投資対応

 

課題についてのフリーコメントでは、以下のようなものが挙がっています。(抜粋)

・土地取得、建築コストが増大し過ぎており、運営から見直す必要がある
・改修した結果賃料への反映が難しい(特にSDGs対応)
・昨今の土地代・建築費の高騰により、共用部の作り込みに費用や空間をあてにくくなっている
・環境対応とそれに掛かるコストとの見合いがなかなか見出せていない
・今後ZEH対応が必須となるがコスト増となるため用地取得が困難となる
・人件費、部材の高騰で管理コストが増えているが、賃料の伸びと比例していない

 

コストの上昇が賃料に反映しきれていない点や、コストに見合わずSDGs/ESG投資がなかなか進まないことを課題としているコメントが多く寄せられています。

まとめ

賃貸マーケットは今後も拡大するという見通しが多くを占めるなか、取得の難しさや物価・人件費などの高騰でコストも上がり、賃料と整合性がとれていないという課題も明らかになりました。

好調といわれる賃貸マンション市場の懸念点。今後の見通しや課題は?事業者を対象にアンケート調査2

賃料は上がっているものの、かかるコストも大きくなっている現状は、多くの賃貸オーナーも不安を感じているのではないでしょうか。賃貸経営のなかで生じた課題解決のヒントを探すためにも、このようなマーケット調査には常にアンテナを張っておき、市場を把握しておきましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年6月10日時点のものです。

文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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