不動産投資家へのアンケートから読み解く最新事情。修繕費を失敗例に挙げるオーナーが多数
コロナ禍の収束や都心を中心にした住宅価格の高騰、ゼロ金利解除など、不動産を取り巻く状況は大きく変わり続けています。賃貸市場も例外ではなく「何もしなくても家賃収入が入る」というイメージは過去のものになりました。そんななか、不動産投資にチャレンジした人や、経営中の賃貸オーナーはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
投資用物件の購入「失敗したことはない」が1位に
まずは不動産投資家を対象にした「不動産投資用物件を購入した後の失敗談」についてのアンケートから見ていきましょう。不動産投資用物件の購入後に「失敗した」と思ったことを聞いたところ、次のような結果になりました。
1位 | 失敗したことはない | 36.8% |
2位 | 修繕費がかさみ経営を圧迫 | 21.8% |
3位 | 空室が多く、収益が上がらない | 18.4% |
4位 | 税金負担が思ったより多い | 14.3% |
5位 | リフォームの費用対効果が悪い | 10.9% |
以下、「家賃や賃料の滞納トラブル」「物件価値の下落」「入居者とのトラブル」と続きます。ほぼ1/3が「失敗したことがない」と答えています。
一方で、複数回答であることから、複数の失敗を体験した人もいるのかもしれません。フリーコメントには「(失敗は)有りませんが、法律、法令には詳しくなりました」というものもありました。
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全体では修繕費、50代以下では空室の悩みが上位
失敗例の中で最も多かったのは物件の修繕費についてで、およそ5人に1人という割合でした。購入時は建物が老朽化することを想定していなかったこと、古い物件を買ってしまって維持費がかかることなどがその内情です。
アンケートでは年齢別での集計も公表しているのですが、どの年代も「失敗したと思ったことはない」がトップで、その割合は60代以上のベテラン投資家において最も多くなっています。
全体で見ると、失敗例のトップは修繕費ですが、40代と50代では「空室が多く、収益が上がらない」が最多となります。調査では、60代以上は相続対策や税金対策が不動産投資の目的となるため、空室については50代以下の方ほど気にしない傾向が見られる、とまとめています。
入居者募集の取組みは「礼金0」がトップで約6割
40代、50代というとローンの審査も通りやすく、不動産投資家としては層の厚い年代といえます。そんな年代の投資家が失敗例として多く挙げている空室に対し、どのような対策ができるのでしょうか。
健美家による「賃貸物件の入居者募集を行う際の取組み」についての調査結果をご紹介します。
1位 | 礼金を0にする | 62.1% |
2位 | 敷金を0にする | 51.7% |
3位 | 一般媒介で募集依頼する | 50.0% |
4位 | 専任媒介で募集依頼する | 44.8% |
5位 | 広告料(AD)を①カ月分支払う | 36.2% |
6位 | フリーレントを付ける | 35.3% |
7位 | ペット相談 | 27.6% |
以上、25%以上の回答があった対策を抜粋しました。「礼金を0にする」が最も多く、「敷金を0にする」とともに過半数となっています。他にも「広告料(AD)を1カ月分支払う」など、入居募集でオーナーが費用を負担するケースが一定の割合を占めています。
入居条件については4人に1人以上が「ペット相談(OK)」と回答。「外国籍歓迎」22.4%、「高齢者歓迎」20.7%など、入居者の間口を広げる対応を図る人も増えています。
条件改善やステージングなどその他にも様々な工夫あり
その他、次のような取り組みがフリーコメントで挙がっていました。抜粋してご紹介します。
・(不動産仲介会社の)店舗に足を運ぶ。店長さんと募集条件について腹を割ってお話しする
・SNSを利用している ・同類の競合物件と比較し優位に立つ家賃の設定 ・仕様の説明書、室内の採寸表、街の説明を用意する ・照明を含めた一般的な設備(ネット無料やウォシュレットなど)は整えておく ・アパートのワンルーム8部屋のうち5部屋が半年間空室でしたが、家具家電付きにしたら3ヶ月で満室に ・草むしりなど、共用部の清掃 ・入居者の生活支援プレゼントやアクセントクロスなどのプチリフォーム。水栓などをピカピカに拭き上げる ・デジタルステージング+小物によるリアルステージング ・自分で案内している ・セルフ内見可能にしている |
まとめ
入居者募集を成功させるためには、SNSをはじめとした各メディアの利用のほか、仲介を依頼している不動産会社との関係づくりや、こまめな掃除など地道な対策を重ねている不動産投資家も多いことがわかりました。
最初から失敗をしないに越したことはありませんが、トライ&エラーを繰り返しながらできることはすべて実行する、という姿勢が空室対策につながっているようです。賃貸オーナーはぜひ、ご自身の物件でも参考にしてみてはいかがでしょうか。
※この記事は2024年8月5日時点の情報をもとに作成しています
記事・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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