土地の価格はどうやって調べる?調べ方と土地価格の種類を解説
土地を売却もしくは購入しようと考えたときに、まず気になるのはその値段。土地の価格はそれぞれ異なり、常に変動しています。さらに、同じ土地に複数の価格が存在します。土地価格の相場を調べる方法や、どのように土地の価格が決まるのかについて解説します。
土地の価格相場を調べる方法
検索エンジンで「土地 相場」などと入力すると、大手不動産会社のWEBサイトがいくつかトップに出てきます。これらのサイトは住所を入力するとその土地の価格を査定してくれるので、実際に土地の売却などを検討している人には便利なものです。
しかし、「とりあえず周辺の相場が知りたい」というときには、個人情報を入力するのに抵抗があるかもしれません。土地の価格相場は自分で調べることもでき、その方法には次のようなものがあります。
不動産情報ライブラリ
「不動産情報ライブラリ」は国土交通省が提供しているWEBサイトで、不動産の価格を調べることができます。2024(令和6)年4月に「土地総合情報システム」から「不動産情報ライブラリ」に変わりました。
主な市町村ごとの土地取引価格の平均値が知りたい人は、トップページから「不動産価格の情報をご覧になりたい方へ」→「土地取引価格の概況」ページに移動。該当の市町村をクリックすれば、過去5年間の平均取引価格の推移を見ることができます。
取引価格とは、実際にその土地が売買された価格です。不動産の購入者を対象にアンケート調査を行い、それにもとづいた情報を掲載しています。対象の土地そのものでなくても、周辺の土地の実勢価格がわかるので、売却や購入の参考にできます。
国交省が調査している公示地価を調べたい場合はトップページ「地価の情報をご覧になりたい方へ」→「データの検索」をクリックして、住所の他に用途地域や調査年から地価を検索します。また、地図上で「国土交通省地価公示」「都道府県地価調査」「不動産取引価格情報」「制約価格情報」を切り換えたり、同時表示したりすることもできます。
路線価図
「路線価」とは相続税や贈与税の算出に使われる土地の価格で、国税庁が公表している「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」から確認することができます。トップページから都道府県を選択し、「路線価図」から市町村名を選択します。
路線価は主要な道路に面した土地を対象にしており、価格も道路上に表示されています。土地が面している道路上に表示された数字を1,000倍したものが土地の1㎡あたりの路線価となります。
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」があります。単に「路線価」という場合は「相続税路線価」を指すのが一般的です。
一括査定サイト
不動産会社による査定を、複数社一括で行えるサービスがあります。「不動産一括査定サイト」と呼ばれるもので、多くの不動産会社と提携しています。利用者は一度の入力で4〜20社程度の会社から土地価格を査定してもらうことができ、結果を比較検討することができます。
原則として個人情報の入力が必要ですが、匿名で利用できるサイトや、査定の段階では不動産会社には物件情報のみ伝えるとしているサイトもあります。不動産会社による査定の他に、AIによる査定シミュレーション機能を提供しているサービスも。気になる方は一度お試しください。
専門家に相談
土地の相続や離婚にともなう財産分与など、公的な証明が必要な場合は不動産鑑定士に依頼することになります。不動産鑑定士は国家試験に合格し、不動産の経済価値を判定することができる専門家です。
不動産査定とは違い、不動産鑑定は国の基準に沿った正式なものであるため信頼性が高く、鑑定書類は税務署や裁判所などに提出することができます。しかし不動産鑑定士に依頼した場合、土地の規模や立地などによって金額は異なるものの、報酬として20万円以上がかかります。
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土地価格の種類とそれぞれの調べ方
よく「一物五価」といわれる通り、1つの土地には5つの価格が存在します。前項「土地の価格相場を調べる方法」でも少しご紹介しましたが、「公示地価」、「実勢価格(時価)」、「相続税路線価」、「固定資産税路線価」、「基準地価(都道府県基準値標準価格)」の5つになります。それぞれどのように違うのか見ていきましょう。
公示地価
「公示地価」は国土交通省による1月1日時点での標準地の1㎡あたりの価格で、毎年3月下旬に発表されます。公示地価は国土交通省の土地鑑定委員会が地価公示法に基づき、鑑定評価員(不動産鑑定士)による鑑定評価をもとに算出されます。
前項の通り、公示地価は国土交通省が運用する「不動産情報ライブラリ」で調べることができます。
実勢価格(地価)
実際に不動産市場で取引されている価格です。売主と買主の双方で決定され、成約した場合はそれが実勢価格になります。取引価格は売買の当事者間で決まるため、売主が売却を急いでいて相場よりも安く売却するケースや、逆に買主からの需要が高く取引価格が上がるケースもありえます。
実勢価格は「不動産情報ライブラリ」から過去に売買されたときの成約価格を調べることができます。ただし、同じ地域でも土地ごとの特性や時期、売主・買主の状況によって価格は変動するので、あくまで実績として参考にするようにしましょう。
相続税路線価
「相続税路線価」は「路線価図」の項で触れた通り、相続税や贈与税の算出に使われる土地の値段です。相続税路線価は国税庁が各道路に設定した価格で、毎年1月1日時点の結果を7月ごろに公表します。相続税路線価は公示価格の8割程度が目安となっています。
相続税路線価は、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」から都道府県を選択、「路線価図」から市町村名を選択して調べることができます。
固定資産税路線価
「固定資産税路線価」は固定資産税や都市計画税の算出基準となる路線価で、管轄は国税庁ではなく各市町村(東京23区は都)となります。算出のサイクルも相続税路線価とは異なり、3年ごとの1月1日時点での路線価がその年の4月ごろに公表されます。また、固定資産税路線価は公示地価の7割程度が目安となります。
固定資産税路線価は市町村のホームページの他、(一財)資産評価システム研究センターが提供している「全国地価マップ」で確認することができます。同マップには他に相続税路線価や公示価格、都道府県地価調査価格も表示されています。路線価は1㎡あたりの価格となるため、「路線価×土地面積」で土地の価格を求めることができます。
また、所有している土地の固定資産税評価額は毎年送られてくる納税通知書によっても確認可能です。固定資産税納税通知書がない場合は、市町村に申請して固定資産評価証明書を取り寄せることもできます。
基準地価(都道府県基準値標準価格)
公示地価と似ていますが、こちらは都道府県知事が毎年7月1日時点での標準地の価格を9月頃に発表するものです。公示地価は都市計画区域内のみですが、基準地価は都市計画区域外も含まれるという違いがあります。
公示地価と基準地価は評価方法もほぼ同じですが、基準となる時期が半年ずれているため、半年ごとの地価動向を調べるのにも役立ちます。
基準地価は「不動産情報ライブラリ」、「全国地価マップ」のほか各都道府県のホームぺージでも公表されています。
土地の価格はどうやって決まる?
定価が存在しない土地の価格。土地の価格はどのようにして決まるのでしょうか。主なものに次の要因があります。
法規制の影響
土地は「土地計画法」や「建築基準法」といった法律によって用途が制限されています。土地を手に入れても、そこに建てられる建物の種類や面積、高さ、規模などが決められているため、法規に沿った利用しかできません。つまり、法規制の制限が強い土地は活用の幅が狭くなってしまうため、土地の価格が安い傾向にあります。
過去の取引件数
エリアの地価相場には、売買の取引件数が影響します。例えば、周辺で盛んに売買取引がされている土地は需要の高いエリアとみなされるため、価格が上がる傾向にあります。
周辺エリアの利便性・環境
土地の利便性は土地価格を決める大きな要素です。駅やバス停から近い、学校や会社、大型商業施設が近いなど、便利な場所ほど土地の需要は高まり、価格が高くなります。
さらに、宅地であれば治安が良く閑静、商業地であれば人の往来が盛んであるなど、土地の用途に適した環境であれば価格が上がることはいうまでもありません。
逆に、廃棄物処理場や騒音・臭いの出る工場など、嫌悪施設と呼ばれる施設が近くにあると地価が下がる傾向にあります。
土地の面積
一般的には面積が大きいほど土地の価格は高くなりますが、あまりに広すぎると活用が難しくなるため、㎡当たりの単価は低くなることがあります。
住宅地の場合は一戸建てを建てるのにちょうど良い面積の土地、マンションや商業施設を建てられるエリアであれば広い土地の需要が高くなるため、㎡当たりの単価も上がります。
土地の形状
土地の形状は土地の使いやすさに大きく影響します。正方形や長方形の整形地は価格が高くなる一方で、旗竿地と呼ばれる間口の狭い土地や三角の土地、傾斜地やがけ地などは、広さや環境が同じであっても価格が低くなる傾向があります。
接面道路の状況
建築基準法で「建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」と定められています。この条件を満たさないと新たに建物を建てることができないため、土地の価値は大きく下がります。
道路に接していたとしても、それが公道でなく私道である場合はライフラインの引き込みが難しい可能性があることなどから、価格が下がる傾向に。逆に、道路と大きく接していたり、接する道路の幅員が広かったりする土地の価格は高くなります。
方角‧日当たり
日当たりが良い家は明るく環境が良いとして土地の価値が高くなります。また、一般に西日よりも朝日が当たる方が好まれる傾向にあります。そのため特に住宅地の場合は「南向き>東向き>西向き>北向き」の順で価格が高くなります。
調べた土地価格の活用方法と注意点
活用方法①購入や売却の判断材料として活用する
土地の価格を調べることで、売買いずれの立場でも交渉の可能性が広がります。土地の売却を検討中であれば、どれくらいの相場で売れるのかを把握しておけば、相場よりも安い金額で土地を売却してしまうリスクが防げるでしょう。購入の場合も売値が妥当であるかを判断できます。
活用方法②土地を含めた遺産を公平に相続する
相続人が複数いて相続財産に土地が含まれているとき、「土地を売却して売却益を相続人全員で分ける」、「ある人は土地をそのまま相続し、ある人はその差額を現金でもらう」などの方法を協議して決めます。どの場合も土地の価格がわかってこそ、公平な遺産分配が可能になります。
活用方法③資産価値の評価と今後の地価動向の予測
所有している土地の価格を調べることで、その資産価値をはかることができます。その土地が担保としてどれくらいの価値があるのか、土地売却で見込める利益はどれくらいなのかを把握することは、今後の経営方針を見通す材料になるでしょう。
また、過去の地価の変動から今度の動向を予測することができます。もちろん予測の通りになるとは限りませんが、流れを読むことでより戦略的に動けるようになります。
土地の価格を調べるときの注意点
土地の価格を調べることはとても有効ですが、いくつか注意点があります。例えば、実勢価格はあくまで過去の取引がその価格だったということに過ぎません。公示地価や路線価もあわせてチェックするようにしましょう。
さらに、路線価は公示価格の8割程度であることや、公示地価と基準地価には算定時期のズレがあることなどを加味し、適正価格に調整する必要があります。価格を調べたとしても、その金額で売却(購入)できるとは限らないこと、売却には諸経費がかかるため土地の価格=売却益とはならないことにも注意しましょう。
まとめ
土地の価格の調べ方とともに、1つの土地には5つの価格が存在する「一物五価」であること、土地の価格を決める要素は複数あり、それによって価格も常に変動していることをお伝えしました。
売却時と購入時で価格が変わるという点が“土地”という資産の最大の特長です。近隣に駅や商業施設が建築されて価値が上昇する場合や、逆に嫌悪施設ができて地価が下がる可能性も。可能な限り情報収集をしておくことをおすすめします。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年11月12日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。