修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説

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公開日:2024年11月25日
更新日:2024年11月25日
修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説1

賃貸経営において定期的に発生するのが、建物や設備を修理したり交換したりするための費用です。これらは通常「修繕費」として経費計上しますが、修繕の内容によっては「資本的支出」とするべき場合があります。もし分け方を間違えると、税務署からの指導対象になってしまうことも。確定申告のときに迷わないよう、「修繕費」「資本的支出」それぞれに該当する場合を解説します。

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定

まずは実際に、修理や修繕にかかった支出について、フローチャートで見てみましょう。業者に依頼した場合は支払った代金、DIYで自ら修繕した場合は材料費が対象となります。領収書などで確認してみましょう。

修繕費と資本的支出の判定フローチャート























修理・改良のための支出金額

















修理・改良のための支出額が
20万円未満かどうか
YES⇨
⇩NO
修理、改良の周期が
おおむね3年以内か
YES⇨
⇩NO
⇦YES 明らかに価値や耐久性を
高めるための支出か
⇩NO
通常の維持管理や
原状回復のための支出か
YES⇨
⇩NO
災害などでき損したものを
現状に戻すための支出か
YES⇨
⇩NO
60万円未満の支出または
前年未取得価額が10%以下か※
YES⇨
⇩NO
継続的に修理・改良のための支出額30%と、取得価額10%のいずれかが少ない額を修繕費に
   
修理・改良のための支出額から、上記の修繕費を除いた残額を資本的支出に

※「前年未取得価額」とは、原則として前年12月31日に有する固定資産の最初の取得価額に既往のその固定資産につき支出された資本的支出を加算したものです

修繕費とは

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

国税庁では、修繕費を「固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額」と定めています。

賃貸経営の場合は、通常の外壁塗装やクロス・フローリングの貼り替えや設備のメンテナンス、交換などが該当します。修繕の内容が「老朽化したり、壊れたりしたものを直すこと、入れ替えること」にあたれば修繕費となります。退去後、新しい入居者を迎えるための原状回復工事の費用なども修繕費となります。

修繕費にあたる場合は、かかった費用をその年に一括計上できるため、その年の課税対象所得額を減らすことができます。

資本的支出とは

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

同様に、資本的支出は「固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額」とされています。

例えば、「外壁のモルタル塗装をタイル張りに変更する」「ブロックキッチンをシステムキッチンに替える」「3DK→2LDKへと間取り変更を行う」「トイレを和式から洋式に変更する」などのケースが該当します。家賃の値上げが望めるような、物件そのものの価値を上げる工事は修繕費とならず、資本的支出となることがわかります。

資本的支出に該当した場合、かかった費用はその年に一括計上できず、定められた年数をかけて毎年減価償却する必要があります。

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修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

修繕費か資本的支出かを判断するポイント

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修繕費か・資本的支出かを判別するには、いくつかのポイントがあります。フローチャートのチェック項目とも重なりますが、もう少し詳しく解説します。

支出額が20万円未満かどうか

国税庁では「少額又は周期の短い費用の損金算入」は修繕費にあたるとして、具体的にその費用が20万円に満たない場合を判断基準のひとつに定めています。

修理、改良の周期がおおむね3年以内か

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同様に、「少額又は周期の短い費用の損金算入」の基準のひとつに、「その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合」と定められています。

おおよそ3年の周期で修理・改良等を行っている、もしくは行われることが一般的である場合は、たとえ20万円以上であったとしても修繕費として計上することができます。該当するかについて、もし迷ったら工事業者に問い合わせてみましょう。

明らかに価値や耐久性を高めるための支出か

「修理、改良等が固定資産の使用可能期間を延長させ、または価値を増加させるものである場合」は資本的支出となります。

つまり、使う材料のグレードアップ、修繕によって家賃の値上げが期待できる物件の収益性を高めるような工事や、建物の寿命を延ばすような工事にかかった費用は修繕費とすることができません。

通常の維持管理や原状回復のための支出か

建物が通常通りの機能で使用できるようにするための工事や、壊れたり汚れたりした部分を元の状態に戻すための支出は修繕費となります。

賃貸経営をしていると、退去者が出たときに次の入居者募集をするために部屋をクリーニングしたり、クロスを張り替えたり、場合によっては設備を交換する必要が出てきます。交換したクロスや設備が、それまで使用していたものと同グレードのであれば修繕費の範ちゅうに収まります。

災害などでき損したものを現状に戻すための支出か

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自然災害などで被害を受けた固定資産の原状回復のための支出は、修繕費に該当します。壊れたものをもとに戻すというだけでなく、被災前の機能を維持するための補強工事や土砂崩れ防止のための工事なども同様です。

また、もし被災したことによる支出が修繕費か資本的支出かがはっきりしない場合は、支出金額の30%相当を修繕費とすることが認められています。

60万円未満の支出または前年未取得価額が10%以下か

修繕費であるか資本的支出であるかが明らかでない金額がある場合、次のいずれかに当てはまれば修繕費とすることができます。

・支出した金額が60万円未満
・支出した金額が、その固定資産の前年度終了時の取得価額の10%以下であるとき

「前年度終了時の取得価額」とは、固定資産の購入費に、前年度までに資本的支出を行っている場合はその額を足したものです。逆に、もし資産価値が下がる「減損」がある場合はその分をマイナスします。

ちなみに修繕費か資本的支出かの判断は、事業を開始してからの話となります。中古物件を購入してこれから賃貸経営を始めるときは、修繕のためのリフォームであっても資本的支出となることを頭に留めておきましょう。

修繕費か資本的支出か、賃貸経営で迷いやすい具体例

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

外壁補修、屋上防水(大規模修繕)

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賃貸経営では、物件の資産価値を保つために外壁補修や屋上防水などの修繕工事が10〜15年に一度は発生しますが、60万円未満で済むことはほぼないため、迷う方もいるかもしれません。

外壁補修や屋上防水は基本的に、建物の維持管理や修繕が目的である場合は修繕費となります。ただし、以下のような場合は資本的支出となります。

・外壁にこれまでよりグレードの高い塗料を使用する
・外観のデザインを変更する
・屋上防水の際に屋上緑化をする
・ペントハウスを建築して物件の資産価値を高める

クロスの貼り替え

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クロスについては国税庁のホームページに質疑応答事例が出ており、修繕費として処理しても差し支えない旨が明記されています。

ただし他の項目と同様に、高級な輸入クロスや珪藻土クロスなど、これまでより優れた機能を持ったものに変更すると、資本的支出として扱われることになります。

給湯器など設備の交換

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設備交換も同様です。壊れたり老朽化したりした設備を、同グレードのものに交換する場合は修繕費として計上します。たとえ型番が違っていたとしても、同グレードと認められればOKです。メーカーに確認しましょう。

「ブロックキッチンをシステムキッチンに替える」「普通のガス給湯器を追い焚き機能が付いたものにグレードアップする」などといった場合は資本的支出となります。

修繕費と資本的支出、分け方次第で節税にもつながる

修繕費と資本的支出、どちらに計上したとしても、トータルの経費は変わりません。しかし1年で経費計上することにより所得を圧縮できるため、その年の節税効果は高くなります。

実は、資本的支出にあたる工事についても、一部を修繕費として扱えることがあります。例えば次のような場合、修繕費と資本的支出を分けて計上し、節税効果を最大限に引き出すことが可能です。

例1:和室2間の2DKをフローリングの1LDKにリノベーション

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

「和室を洋室に変更する」「細かく分かれた間取りを大きくまとめる」といった、時代のニーズに合わせたリノベーション工事は物件の価値を高めるため、資本的支出にあたります。

しかし、原状復帰のための修繕にプラスしてこのような間取り変更の工事をした場合、職人の工賃は修繕費に、建材費用を資本的支出として扱うことがあります。通常の修繕にも必ず人件費はかかるため、その範囲までを修繕費として計上することができるのです。

例2:給湯器などの設備をグレードアップ

国税庁のホームページに掲載されている「修繕費になるかどうかの判定」には、判定は修繕費、改良費などの名目ではなく、その実質によって判定するとして、次のような場合は資本的支出になると明記されています。

1 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
2 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
3 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取り替えの金額のうち、通常の取り替えの金額を超える部分の金額

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

3の「通常の取り替えの金額を超える部分の金額」が資本的支出になるという点がポイントです。給湯器などの設備をグレードアップした場合も、新しくした給湯器1台分の費用をすべて資本的支出にするのではなく、同一グレードの価格までは修繕費、それより高くなった部分を資本的支出と分けることができるのです。

例3:洗面台やエアコンの設置

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

青色申告をしている個人事業主か中小企業であれば、「少額減価償却資産の特例」を利用することができます。これは、1セット30万円未満の資産は、総額で300万円まで一括償却できる制度で、2024(令和6)年3月31日までの適用期限が2026(令和8)年3月31日まで延長されました。

例えば、1台10万円のエアコンなら30台までが対象となります。この特例を適用すれば、30万円に満たない洗面台やエアコンの設置を経費にすることができます。宅配ボックスや防犯カメラなども同様です。

まとめ

修繕費?資本的支出?フローチャートでらくらく判定!迷いやすい具体例や節税ポイントも解説2

修繕費と資本的支出の区別をお伝えしてきました。大規模修繕では複数の工事が同時に行われるため、税法上のどのルールにどの費用を適用するかによって、その年の経費が変わってきます。見積もり書を丹念に読み込みつつ、工事業者にも細かく確認して経営状態に合った経費計上の方法を考えましょう。

ただし、節税効果を狙うあまり翌年以降に経費が大きく減少すれば、税額が増えて資金繰りが悪化するリスクにつながることもあります。また、「利益が高く設備投資ができている」=「経営が順調である証にもなる」ため、資本的支出による経費計上は銀行からの融資を受けやすくなるという一面もあります。

経営状態にふさわしい経費の扱いを知り、全体のバランスに配慮した会計処理を行うことが成功のカギといえます。プロの力を借りる場合は、賃貸経営に詳しく、維持管理や修繕工事の内容まで精通した税理士に相談することをおすすめします。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年11月25日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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