【2025年の賃貸市場を展望】ニーズへの対応が家賃アップに追いつくカギ。都心回帰と購入控えで堅調、多様な入居者像をとらえる

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公開日:2024年12月11日
更新日:2024年12月18日
【2025年の賃貸市場を展望】ニーズへの対応が家賃アップに追いつくカギ。都心回帰と購入控えで堅調、多様な入居者像をとらえる1

家賃の上昇は全国で続き、各地で過去最高を更新中。都心回帰の復活や購入から賃貸へシフトする入居者が、いま何を求めているのか?アットホームラボ株式会社 データマーケティング部の磐前 淳子氏がニーズの裏側を深堀り。人気設備が支持される理由の揺れ動きから、入居者に選ばれるプランのヒントをつかみましょう。

解説いただきました
【2025年の賃貸市場を展望】ニーズへの対応が家賃アップに追いつくカギ。都心回帰と購入控えで堅調、多様な入居者像をとらえる2

アットホームラボ株式会社 執行役員 磐前 淳子氏

2019年5月、アットホームのAI開発・データ分析部門の独立に伴い現職。不動産データ部門を統括し、各種市場動向レポートの不動産動向や業況の分析などを担当。大家さんフェスタでの講演をはじめ、執筆の実績多数。

この記事のPoint

●全国的に家賃上昇が続く。面積帯の広いタイプの上昇率が高い
需要増の要因は、都心回帰と購入から賃貸へのシフト
●広いLDK志向が復活。人気設備は防犯・タイパ重視に

都心回帰の復活、購入からの需要シフトが家賃を押し上げ

全国的に家賃が上がっています。

東京23区内では、コロナ禍に一時落ち込んでいましたが、2022年から急激に上昇しはじめました。2024年9月時点で、70㎡超の大型住戸を除く全タイプで過去最高を記録(図表①)。名古屋、大阪など、他のエリアでもここ数年、上昇率が高まっています。

図表①東京23区のアパート・マンションの面積帯別平均家賃(2024年9月時点)

アパート
面積帯 平均家賃 前年同月比(差額)
30㎡以下(シングル) 66,390 +1.4%(+900円)
30~50㎡(カップル) 107,709 +3.1%(+3,227円)
50~70㎡(ファミリー) 152,810 +7.0%(+9,942円)

 

シングル向きは供給過剰気味に対し、ファミリー向きは絶対量が不足しているため、面積大別では広いタイプほど上昇率が高い。

マンション
面積帯 平均家賃 前年同月比(差額)
30㎡以下(シングル) 94,279 +3.3%(+2,990円)
30~50㎡(カップル) 152,489 +7.0%(+9,933円)
50~70㎡(ファミリー) 226,200 +4.4%(+9,552円)

…2015年1月の同調査以降で過去最高を更新した値

対象データ:「不動産情報サイト アットホーム」で登録・公開された居住用賃貸アパート・マンション(重複物件は1つとしてカウント)

マンションは過去最高水準の家賃に。ファミリー向きは供給不足と、購入から賃貸へのシフトも重なり大幅に上昇。

家賃上昇の理由としては、供給と需要の両面があります。

供給面では、建築費に加えて物件の維持管理費が高騰してコストアップが大きいこと。収益が圧迫されて、家賃を値上げせざるをえない状況となっています。

需要面では、都心回帰の復活に加えて、マンション価格の高騰で予算オーバーの購入派が賃貸に流れていることが挙げられます。

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景気への反応に地域差。外国人・法人がポイントに

家賃が全国的に上がっている一方で、賃貸市場の動きに対する不動産会社の受け止め方は、地域によって温度差があります。

首都圏では1都3県とも全体的に良い状況です。近畿圏は、京都を除いて大阪、兵庫で伸び悩み、愛知をはじめ東海圏などではやや低調気味に。こうした違いは、地域ごとの借り手の特性を反映していると考えられます。

不動産会社にヒアリングすると、首都圏では「家賃が高くなっても、良い物件なら成約する」という前向きの反応が多いです。これに対して近畿圏では「予算とあわないと成約できない」という厳しい声が少なくありません。

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入居者層の違いも影響しています。首都圏では、流入人口が増加している外国人や、住宅費補助で高めの家賃設定が可能な法人の取引増加が、好調な業績につながるという声が多数ありました。

一方、近畿圏は、外国人や法人契約に関する反応が首都圏にくらべて少ない状況です。また、東海圏はもともと他の地方からの出入りが少ないことや、戸建ての需要が高く住み替えが活発でないという地域性も影響しています。

家賃上昇は続く見通し。入居者層による違いに注意

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家賃上昇の傾向は2025年も当面続くと考えられます。今のところ、家賃が下がる要素は見当たりません。

ただし、あくまでも募集家賃の平均水準のお話です。すべての物件が同じように家賃を値上げできているわけではありません。昨今の入居者は、今まで以上に物件を厳選する傾向が強まっています。

あらゆる物価が上昇しているため、固定費である家賃を抑えたいという意識が強かったり、家賃に見合う価値のある部屋か見定めたりする、シビアな目線の入居者が増えているのです。

同じシングルでも社会人と学生では考え方が異なります。昨今の若い社会人は「住まいとスマホにはお金を惜しまない」「家にいる時間はリッチに過ごしたい。そのために必要なお金はかける」という意識の強い人が多いです。自分で稼ぐ分だけ予算にも余裕があります。一方、親からの仕送りに頼る学生などは、高い家賃の支払いはできません。

このように、物件のターゲットによって予算感は異なりますので、それぞれの入居者層にあわせて、今後の改修の仕方も変わってくるでしょう。

広めのLDKニーズが増加。設備は防犯重視が再認識

以上のような賃貸市場をふまえ、これから賃貸住宅の建築やリフォームを検討する際に押さえておきたい入居者ニーズにも触れておきましょう。

最近のトレンドで注目しておきたいのは、間取りプランの中で「広めのLDK」のニーズが、以前にも増して高まっていることです。

一般にカップル向けとされる30~50㎡の1LDKの需要も増加しています。カップルの需要だけでなく、リッチに過ごしたい社会人シングルや、マイホーム購入資金を貯めるために節約したい子育てファミリー層など、多方面の需要を集めることができるからです。

設備面では、「インターネット無料・高速通信」「宅配ボックス」「テレビモニタ付きインターホン」など、おなじみの顔ぶれが根強い人気を誇っています。ただ、希望する理由の中身が少しずつ変化してきています。

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例えば、宅配ボックスはもともと不在時でも受け取れるのがメリット。コロナ禍では感染予防のための非接触に活用されました。今は、物騒な事件が多発する中で、見知らぬ人との遭遇を避けるという役割も加わっています。その他の防犯設備も、より重要度が増しているのです(図表②)。

図表②防犯のことを考えると欲しい住まいの条件・設備で、家賃に上乗せしても良いと思う金額(自由回答)

宅配ボックス モニタ付きインターホン 防犯カメラ
平均1,201 平均1,497 平均1,811
オートロック 24時間セキュリティ 2階以上
平均2,115 平均2,206 平均2,299

調査対象:一人暮らしをしている19~80歳の男女477名

在宅時間が増加したことに加え、昨今の社会情勢などを理由に、一人暮らしの学生を持つ親も防犯に対する意識が高まっている。

図表③タイムパフォーマンスや効率性は重要だと思う

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調査対象:一人暮らしをしているZ世代(17~26歳※調査時)の男女400名

若者世代は時間効率に対してシビア。高速インターネットでゲームも動画も安定して楽しめることは重要。

インターネット設備も、テレワークの普及、動画視聴時間の増加から通信の速度や安定性が重視されると指摘されていました。昨今、“タイパ(時間効率)”を重視する30歳未満のZ世代(図表③)にとっては、高速インターネットが必須条件に格上げされました。

今後はこうした間取りや設備を取り入れたり、ターゲットとなる入居者層に折り合いをつけ外国人の受け入れなども検討したりすることで、多様なニーズに対応していくことが大切です。家賃を上げても、入居者に選ばれる賃貸住宅を目指せるでしょう。

※この記事は2024年11月26日時点の情報をもとに制作しています。

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