2025年4月から東京都で太陽光発電設置が義務化! 賃貸への現在の設置状況、設置物件の平均家賃、オーナーが注意すべきポイントとは?

東京都では、2025年4月より新築戸建て住宅等への太陽光発電設備の設置が義務付けられます。これは、2030年までに都内の温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」の実現に向けた取り組みのひとつ。現時点では中古住宅は対象外ですが、賃貸物件にも影響を及ぼしつつあります。そこで、LIFULL HOME'Sの調査結果をもとに、現在の太陽光発電設置賃貸物件の傾向や、オーナーが気を付けるべきポイントを整理しました。
太陽光設置賃貸物件は2021年から増加。2024年には急増
LIFULL HOME’Sに掲載された「太陽光発電」のワードを含む賃貸物件の数を全国・東京都・東京23区の3エリアで調査したところ、2021年から2024年にかけて大幅に増加しています。
【賃貸】太陽光パネル設置済み物件掲載数
エリア | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
全国 | 27,672戸 | 53,772戸 | 128,412戸 | 325,488戸 |
東京都 | 4,548戸 | 4,980戸 | 18,912戸 | 39,684戸 |
東京23区 | 3,192戸 | 3,936戸 | 12,552戸 | 27,948戸 |
全国で賃貸の太陽光設置物件は2021年から増加傾向にあり、特に2023年→2024年は全国で昨年対比253%と急増。東京都・23区もそれぞれ倍増しており、今後の賃貸市場では「太陽光発電の有無」が差別化のポイントになる可能性が高まっています。
賃貸競争力の向上:今後、太陽光発電が標準化していくと、未設置の物件は競争力が低下する可能性があります。
コストと回収のバランス:初期投資がかかるため、どの程度の家賃上乗せが可能かを見極める必要があります。
東京都の戸建ては2022年の設置数が最も多く1万戸超え
戸建てについては、全国では賃貸と同じく増加し続けています。しかし、東京都では2022年をピークに2023年は減少、2024年は若干の増加という結果でした。
【戸建て】太陽光パネル設置済み物件掲載数
エリア | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
全国 | 11,200戸 | 59,101戸 | 64,325戸 | 110,112戸 |
東京都 | 722戸 | 12,041戸 | 2,741戸 | 3,052戸 |
東京23区 | 178戸 | 907戸 | 590戸 | 684戸 |
マンションでは太陽光設置が減少傾向

集合住宅(マンション)では、全国・東京都・23区すべてで太陽光パネル設置数が2024年まで減少傾向となっています。
【マンション】太陽光パネル設置済み物件掲載数
エリア | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
全国 | 8,040戸 | 7,259戸 | 5,773戸 | 5,556戸 |
東京都 | 1,074戸 | 1,504戸 | 1,143戸 | 478戸 |
東京23区 | 710戸 | 220戸 | 894戸 | 420戸 |
この結果について、LIFULL HOME’S総研チーフアナリスト・中山登志朗氏は、マンションでの太陽光パネル設置は維持管理コストがかさむことから、ZEH-M Orientedが増加したためと考察しています。
ZEH-M OrientedはZEH-M(ゼッチ・マンション)の一種ですが、太陽光パネルなどの創エネ設備がなくても集合住宅版ZEHの要件を満たしたマンションのことを指します。
しかし、2025年4月以降は太陽光パネルの設置が義務化されることで、再エネ率100%以上の「ZEH-M」仕様のマンションが増加する、としています。
維持管理の負担:集合住宅では、屋上メンテナンスや修繕費用を考慮する必要があります。
ZEH補助金の活用:太陽光発電以外のエネルギー効率向上策も検討すべきです。
都内の太陽光パネル設置物件の平均賃料は16万5,886円

住宅 設備 ソーラーコントローラと蓄電システムコントローラー パネル
太陽光パネル設置物件の平均賃料(50㎡換算)は16万5,886円。これは、全物件の平均賃料(15万6,844円)より約1万円高く、太陽光発電のメリットが賃料に反映されていることが分かります。
一方で、光熱費込みの賃料設定を採用する物件も増えており、オーナーとしては賃料設定の戦略を練る必要があります。
売買に関しても、戸建て(100㎡換算)は全物件平均が5,545万円に対して太陽光パネル設置物件が7,991万円で2,000万円以上の差、マンション(70㎡)は全物件平均6,520万円に対して、太陽光パネル設置物件が1億1,488万円。なんと5,000万円近くの差額が生まれています。
賃料設定の工夫:「光熱費込み」にすることで付加価値を生み、競争力を強化できる可能性があります。
ターゲット層の選定:環境意識の高い入居者を狙ったマーケティング戦略が有効です。
まとめ
LIFULL HOME’S総研チーフアナリスト・中山登志朗氏は、現状の補助金制度や太陽光発電の普及状況から、今後は太陽光パネル設置の賃貸物件がさらに増加し、再エネ率100%以上の「ZEH-M」仕様物件が注目されると考えています。
一方で、賃貸オーナーとしては、以下の点を特に留意する必要があります。
・初期投資やメンテナンスコスト、長期的な修繕費用の計画
・建物の外観や安全性、環境面での適正な管理体制の整備
・賃料設定と市場競争力のバランス
・契約条件や保証内容の十分な確認
これらを踏まえ、賃貸物件への太陽光発電設備の導入は、環境対策と資産価値向上の両面から魅力的な選択肢となる一方、事前の十分な検討と計画が成功の鍵となるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年3月17日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
年4回無料で賃貸経営情報誌「オーナーズ・スタイル」をお届け!
