不動産取得税はいつ払う?支払うタイミングや税額の計算方法、軽減措置などを解説

土地や建物を手に入れたときにかかる税金に「不動産取得税」があります。「不動産取得税」は、土地や建物を買ったとき、贈与を受けたときなどに課税される税金で、不動産を取得した人が、不動産が所在する都道府県に納税します。不動産取得税を払うのは不動産取得時の1回だけですが、それなりに金額が大きくなるケースもあるため、払うタイミングや課税額は把握しておきたいものです。不動産取得税はいつ払えばいいのか、払い方や軽減措置などについて詳しく解説します。
不動産取得税はいつ支払う?

土地を購入したときや賃貸物件を建てたときには様々な諸費用が発生します。煩雑な手続きもあり、忙しい時期なので、不動産取得税を払うタイミングはおさえておきたいポイントです。
まず、不動産を取得したら期限内に不動産の所在地が管轄する都道府県税事務所で申告を行います。期限は都道府県によって違いますが、例えば千葉県は60日以内、東京都は30日以内とかなり幅があります。ただし、申告期限内に登記申請をした場合は、原則として申告は不要となります。
納税通知書が届くタイミング
不動産の所有移転登記や不動産取得税の申告後、都道府県から「納税通知書」が届きます。納税通知書は不動産の取得後おおよそ4カ月から半年ほどで届くことが多いですが、賃貸アパートなどを新築した場合は価格決定手続きが必要なため、納税通知書が届くまでに1年以上かかることもあります。
課税対象となる不動産の種類
不動産取得税は不動産の取得に課税されるもので、不動産とは土地と家屋を総称したものを指します。土地は田んぼ、畑、住宅地、塩田、鉱泉地(温泉など)、池沼、山林、牧場、原野などのことを指し、家屋は住宅、お店、工場、倉庫などの建物のことで、賃貸住宅ももちろん対象です。
「取得」とは「所有権を持つこと」を指しており、お金を払ったか(有償)、払っていないか(無償)は問いません。ただし、相続で得た不動産については課税対象から外れます。他にも不動産取得税が非課税となるケースがありますので、後の項で詳しく解説します。
支払い期限と支払いが遅れた場合
不動産取得税は納税通知書に記載されている支払い期限(納期限)までに納付します。支払期限は納税通知書の発送から1カ月前後や、発送月の月末までと定められていることが多いようです。
納付方法は都税事務所、金融機関、郵便局の窓口の他、スマートフォン決済アプリやペイジー(Pay-easy)などがあります。自治体によってはクレジットカードでの支払いもできますが、税額に応じて手数料がかかります。1枚あたりの金額が30万円までのバーコード付き納付書であれば、コンビニ支払いも可能です。

もし納付期限を過ぎて納税しなかった場合、滞納確定後20日以内に督促状が届き、延滞税が課されます。延滞税は納付期限からの経過日数によって加算され、納期限の翌日から2カ月以内は原則として1年あたり7.3%、2カ月を過ぎてしまうと14.6%となります。
2025(令和7)年12月31日までの期間は、2カ月以内で年2.4パーセント、2カ月超過で年8.7%の延滞税特例基準割合がありますが、例えば税額30万円の場合、2カ月超過で2万6,100円の延滞税が発生します。決して安くはありません。
さらに、滞納をそのままにしていると、最終的に財産が差し押さえられてしまいます。
固定資産税との違い

不動産の所有にかかる税金には、不動産取得税の他に「固定資産税」があります。不動産取得税と固定資産税はともに地方税であるため混同されやすいのですが、まず納税先が異なります。
不動産取得税は都道府県から課税されるのに対し、固定資産税は市町村(東京23区は東京都)に納税します。その他にも、次のような違いがあります。
適用対象の違い
不動産取得税の適用対象はその名の通り「不動産」で、土地と建物の取得に課税されます。取得とは売買・新築・増改築・贈与・交換などで、前述の通り、相続による取得は含みません。
固定資産税の対象は「固定資産」であるため、不動産の他に機械や設備、備品などの償却資産まで含みます。また、不動産取得税と違い、相続によって取得した不動産も課税対象となります。
納付時期の違い
不動産取得税の納付は取得時の1回だけですが、固定資産税は毎年課税されます。固定資産税の納税通知書は不動産の所在地のある市町村から、おおよそ4~5月頃に発送されます。納期は市町村によって異なりますが、1年分を一括で払うか、4期に分けて払うかを選ぶことができます。
不動産取得税はいくら支払えばいい?

不動産取得税の税額は、土地と建物それぞれの固定資産税評価額に税率を掛けた金額を合計して求めることができます。
固定資産税評価額は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて固定資産(土地、家屋、償却資産)を評価し、自治体の長が決定した価格のことです。路線地価や実際の売買価格とは異なることに注意しましょう。
不動産取得税の税率
不動産取得税の税率は4%ですが、土地と住宅については、2027(令和9)年3月31日まで軽減税率として3%が適用されます。
納税額の計算方法
不動産取得税は土地と建物の固定資産税評価額に税率をかけて算出できます。単純な計算式は以下となります。
固定資産税評価額 × 0.03 = 不動産取得税額 |
ただし、一定の条件を満たすことで非課税になったり軽減措置が適用されたりするため、この通りの課税額になるとは限りません。軽減措置がない場合と適用された場合の計算例を以下にまとめましたので、参考にしてみてください。
計算例|固定資産税評価額 2,000万円の土地を取得した場合
土地の不動産取得税は、原則として 固定資産税評価額 × 3% で計算します。
2,000万円×3%=60万円 |
→不動産取得税額:60万円
土地の不動産取得税には「2分の1の特例」が適用されるケースがあります。(※2027年3月31日まで延長)
この場合、固定資産税評価額を1/2にして計算できます。
(2,000万円÷2)×3%=30万円 |
また、土地には最大4万5,000円の控除が適用されることがあります。(条件:住宅用の土地など)
30万円−4万5,000円=25万5,000円 |
→軽減措置後の不動産取得税額:25万5,000円
住宅用土地の場合、さらに住宅の床面積の2倍までの面積を基準に追加控除が受けられます。例として、80㎡の住宅を建てる場合、その2倍(160㎡)を基準に控除額を計算します。
(固定資産税評価額÷総面積)×(住宅の床面積の2倍)×3% |
土地の価格が 2,000万円 で、土地の広さが 200㎡ の場合: (2,000万円÷200㎡)×160㎡×3%=48万円 |
この金額と、最低控除額(4万5,000円) のどちらか高い方が適用されます。
30万円−48万円=0円 |
→軽減措置適用で不動産取得税が「0円」に
不動産取得税が非課税になる条件と軽減措置
不動産取得税には、課税が免除(非課税)になるケースや軽減措置が適用されるケースが存在します。
不動産取得税が非課税になる条件

「固定資産税との違い」の項でも触れた通り、相続によって取得した不動産は非課税となります。ただし、法定相続人以外が遺言書によって不動産を相続する場合は非課税の対象から外れます。法定相続人とは、亡くなった人の配偶者や子・孫などです。
10万円未満の土地の場合や、23万円未満の新築、増築、改築した家屋、12万円未満で取得した建物は非課税です。
ただし、土地や建物を取得した日から1年以内にその土地に隣接する土地を取得したり、その家屋と一構となる家屋を取得したりした場合は、改めて一つの土地、一戸の建物として価格評価がされます。その結果、新たに課税対象となる可能性もあります。
学校法人が教育施設を建てるための不動産や、宗教法人の境内地、社会福祉法人が老人ホームや児童養護施設などを建てるために取得した不動産は非課税です。非課税なのはあくまで本来の事業用のものに限られ、事業以外の目的で取得した不動産は課税対象となります。
もともと所有している土地が区画整理されて、換地によって取得した土地には不動産取得税は課税されません。また、不特定多数の人が利用できる私道も「公共の用に供する道路」とみなされ、非課税となります。
他にも、法人が合併または分割して不動産を取得した場合なども、要件を満たせば非課税となります。
軽減措置が受けられるケースと条件
不動産取得税の税額は、土地と建物それぞれで計算してから合算して求めます。そのため、軽減措置も土地と建物それぞれに設定されています。
土地の不動産取得税は、「土地の固定資産税評価額の1/2 × 税額3%-減税額」で求められます。固定資産税評価額を半分にする「2分の1の特例」は適用期間が2024(令和6)年3月31日までから2027(令和9)年3月31日まで延長されました。
「不動産取得税の税率」の項で触れた通り、「税額3%」も本来4%であるところを2027(令和9)年3月31日まで軽減されています。
土地の減税額は「(土地1㎡あたりの固定資産税評価額の1/2)×(住宅の床面積の2倍※)×3%」もしくは4万5,000円のどちらか高い方となります。※1戸当たり200㎡を限度

土地の軽減措置の適用条件は、土地取得から3年以内に新築住宅を建てることや、住宅新築後1年以内に同じ人がその住宅の建っている土地を取得すること、軽減要件を満たす中古住宅購入から1年以内に土地も取得していることなどが挙げられます。
少し複雑に思えますが、「土地」と「新築住宅もしくは軽減要件を満たす中古住宅」の両方を所有していることがポイントとなります。
新築住宅に対しての軽減措置で、建物の固定資産税評価額から1,200万円が控除されます。条件は居住用の建物であること、賃貸集合住宅の場合は1戸あたりの床面積が40㎡以上240㎡以下であることです。
そのため、税額の計算は「(固定資産税評価額-1,200万円×戸数) ×3%」となります。
さらに、認定長期優良住宅を建てた場合は、控除額の1,200万円が1,300万円に増額されます。こちらは2026(令和8)年3月31日までの特例です。
中古物件(既存住宅)については、賃貸物件には軽減措置は適用されません。控除額は築年次ごとに定められており、新耐震基準を満たす建物であることが条件となります。
例えば、土地を取得して賃貸アパートを建てた場合の申請の流れは以下のように進みます。
◇土地取得後、所管の都税事務所・支庁へ申告
(提出書類) |
・不動産取得税申告書 ・建築確認済証と確認申請書第三面・建築工事請負契約書 ・平面図 ・長期優良住宅認定通知書(認定長期優良住宅の場合) ・分合筆の経過が確認できる書類(土地を分合筆する場合) |
◇アパート完成後、以下の書類を提出
・賃貸借契約書 ・検査済証 ・登記事項証明書(全部事項証明書)、建物引渡証明書と請負業者の印鑑証明書(原本)のいずれか |
申請書の提出期限は都道府県によって異なりますが、東京都の場合は30日以内です。軽減措置が適用された結果、課税額が0円になった場合は、納税通知書は送られてきません。
特例控除など現行の税制度を反映した不動産取得税の概算税額は、東京都主税局による「不動産取得税シミュレーションツール」」で求めることができます。
まとめ
不動産取得税は決して安くない税金ですが、非課税枠や軽減措置制度が設けられており、建てる建物の種別によっては税金がかからないケースもあります。
賃貸物件を建てるにあたっては、周辺エリアのニーズや物件情報などといったマーケティングデータに加えて、節税という視点もぜひ取り入れて、減らせるコストは減らしていきたいもの。不動産取得税がかからない建物という可能性も探ってみましょう。
また、不動産取得税の納税通知書は不動産取得から何カ月以上も経ってから届くため、その間に住所が変わった等の理由で受け取りそびれることもあるかもしれません。知らない間に延滞してしまっていた…ということのないように注意しましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年3月18日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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