売って終わりにしない!不動産オーナーが築くべき信頼関係と資産運用を成功させるヒント
とても大きな金額が動く「不動産取引」。人生においても大きなイベントと言えますが、取引終了と同時に営業担当との関係性が途絶えてしまうケースが少なくありません。人生100年時代を迎え、不動産取引が数回にわたる人も珍しくない昨今、できれば長期的に良好なパートナーシップを築きたいところ。不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」が実施した「不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025」の結果を読み解き、上手くいくヒントを探っていきたいと思います。
「可もなく不可もない」で終わらせない。満足度3割の壁
グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
全国の不動産取引経験者、および検討者の男女500名を対象に実施された今回の調査。まずは直近の不動産取引についてたずねたところ、ボリュームゾーンは74.4%で、約4人に3人が「5年以上前」と回答。以降、「1年以内(11.4%)」、「1~3年前(9.4%)」、「3~5年前(4.8%)」という結果になりました。
では、直近の不動産取引における満足度を見ていきましょう。
グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
「とても満足している」「やや満足」と回答した人は、全体の30.8%に留まる一方、「やや不満がある」「とても不満がある」と答えた人は16.4%という結果が出ました。特筆すべきなのは、52.8%とじつに半数以上の割合で「どちらとも言えない」と答えた方がいること。
推察するに、「担当営業の説明や対応が印象に残るレベルではなかった」「可もなく不可もない取引が大半」といった状況のもと、営業担当に対してあいまいな評価しかできないレベルの関係性しか構築できなかったことを示唆されているものと思われます。
取引中に「説明が不十分だ」「対応が事務的だ」と感じたら、それはパートナーを見直すべきサインかもしれません。不動産取引は人生の大きなイベントであり、本来は明確な満足感を得られるべきものです。納得感のないまま進めず、要望をはっきりと伝えるか、介在価値をしっかり示してくれる担当者を探しましょう。
「次も同じ人に」依頼する人は2割
次に、「機会があれば同じ営業担当に依頼したいか」を聞いています。
グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
「ぜひ依頼したい」「できれば依頼したい」と回答した割合は20.0%で、先述した「満足感がある」との回答の割合(30.8%)よりも低い数値となりました。
一方で、「別の担当者を探したい」と明確にNOと告げた人も16.0%と、大差のない結果となっています。
そして、ここでも鮮明な意思表示のない、「分からない」との回答が64.0%で最多の結果になりました。“満足度”と同様の傾向を示しており、「強い満足も不満も残らなかった=印象が薄い」ということが浮き彫りとなった形です。
優れた担当者は、売買が完了した後も、市場動向の共有や税制相談、次なる資産活用の提案など、オーナーに寄り添う「伴走者」としての価値を提供してくれます。契約が終わった瞬間に連絡が途絶える担当者ではなく、将来の資産管理まで見据えて相談できる相手を選ぶことが、長期的な利益につながります。
良好な関係を築けている人は13.4%
グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
取引後も営業担当との関係が続いていると回答した人は13.4%に留まっており、一度きりの取引で関係性が終了するケースが大半であることが、ここでも明らかになりました。
その理由を見てみると、「取引が終われば特に用件がないから(67.9%)」が1位となっています。
その一方で、関係性を継続していると回答した人の理由として最多だったのは、「担当営業の人間性や専門性を信頼しているから(31.5%)」で、担当者の人柄や信頼性が継続的な関係構築の核心であることが示されました。

グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
これらの結果は、オーナー側が営業担当に対し、「相談し続ける意味」を見出せていないとも読み取れる結果であり、裏を返せば、不動産営業側がクライアントに対し、「長期にわたって伴走する価値」を提供できていないとも言えるでしょう。
優れた担当者は、売買が完了した後も、市場動向の共有や税制相談、次なる資産活用の提案など、オーナーに寄り添う「伴走者」としての価値を提供してくれます。契約が終わった瞬間に連絡が途絶える担当者ではなく、将来の資産管理まで見据えて相談できる相手を選ぶことが、長期的な利益につながります。
年代によって異なる「不動産営業との出会い」
不動産営業との出会い方は、世代によって劇的に変化しています。20〜30代の約2割はSNSやインフルエンサーを通じて出会っており、40代以降は「知人・家族の紹介」や「店舗訪問」が主流となっています。
自分に合った担当者を探す際、従来の検索サイトだけでなく、SNSやエージェント紹介プラットフォームを活用するのも一つの手です。特に若年層のオーナーは、スピード感と細やかなアフターサポート(伴走支援)を重視する傾向にあり、上の世代のオーナーは、経験に裏打ちされた「人柄」や「専門性」を求める傾向があります。自分の価値観に合う担当者を、従来の方法に縛られず探してみましょう。
不動産営業に求めるのは全年代共通で「人柄」
次に、不動産営業の担当者に何を求めているかをたずねてみました。

グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
全年代で共通のトップとなったのが、「誠実さ・信頼できる人柄」で、35.7%に達しました。次いで、「取引後の長期的なサポート(20.8%)」、「専門知識と提案力(19.4%)」と続きます。

グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
高額かつ高い専門性が必要となる不動産取引では、「誰に任せるか」が最も重要だと考えられているのは明白であり、さらに言えば、ここでも「取引後の満足度」や「関係性の継続具合」と乖離があることが浮き彫りになっています。
専門性への理解不足が満足度低迷の原因に?
また、驚くべきことに、アンケート回答者の50%以上が、担当者の保有資格を「意識していなかった」と答えています。

グラフ引用元:不動産業者とのお付き合いに関するアンケート調査2025|不動産エージェント情報サイト「Agent Connect(エージェントコネクト)」
しかし、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナーなどの資格は、契約リスクの回避や精度の高い提案を支える重要な指標です。
「人柄が良いから」という理由だけで選ぶのではなく、「その担当者がどんな専門性を持っているか」を必ず確認してください。資格の有無やその知識を活かした具体的な提案があるかどうかをチェックすることで、トラブルを未然に防ぎ、より有利な条件で取引を進めることができます。
まとめ
不動産取引の構造的課題として「売って終わり・買って終わり」の関係になりやすい点が挙げられますが、不動産取引は一度きりで終わるものではありません。これからの時代は「物件」よりも「人」で選ぶことが、オーナー自身の安心に直結します。
資産価値を守り、将来の選択肢を広げるためには、信頼できるパートナーとの長期的な関係構築が不可欠です。オーナー自身も、定期的な情報交換や相談の場を設けることで、より有利な資産運用につなげることができます。今こそ「伴走する関係」へシフトしていきましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年12月22日時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















