入居者の93.6%が防犯重視、それでも“未導入”が半数超。空室を生まないために賃貸オーナーが埋めるべきギャップ
住まい選びにおいて「防犯」は、もはや特定の層だけが重視する要素ではありません。(株)いえらぶGROUPの調査によると、エンドユーザーの9割以上が防犯設備や安全面を重視していることが明らかになりました。一方で、不動産会社側の設備導入は半数程度にとどまり、意識と実態の間にはギャップがあるようです。今回は防犯設備に対する入居者ニーズの実態を整理し、不動産投資・賃貸経営において防犯対策がどのような意味を持つのかを読み解きます。
「重視93.6%」は常識に。防犯は“選ばれる前提条件”
(株)いえらぶGROUPの調査によると、エンドユーザーに「住まい選びで防犯設備や安全面をどの程度重視するか」と質問したところ、「非常に重視する」「ある程度重視する」と回答した人は合計で93.6%に達しました。

画像データ引用元:「防犯に関するアンケート調査」|(株)いえらぶGROUP
この数字からわかるのは、防犯が一部の慎重な層だけの判断軸ではなく、ほぼすべての入居検討者にとっての共通した条件になっているという点です。
不動産投資の視点で見れば、これは募集活動の前提条件が変わったことを意味します。防犯設備が整っていない物件は、比較検討の初期段階で候補から外される可能性が高まり、内見にすら至らないケースも増えています。
特に単身者向けや女性入居者を想定する物件では、防犯対策の有無が賃料以前の評価基準になっており、防犯は選ばれるための前提条件として捉える必要があります。
不安の実像:空き巣67.4%×近隣トラブル67.1%×夜間の暗さ59.0%
次に、エンドユーザーに「防犯面で不安に感じることは何ですか?」と質問してみました。

画像データ引用元:「防犯に関するアンケート調査」|(株)いえらぶGROUP
防犯面で不安に感じることとして最も多かったのは「空き巣や侵入被害」でしたが、それとほぼ同水準で「近隣住民とのトラブル」が挙げられています。また、「夜間の通路や建物周辺の暗さ」に不安を感じる回答も多く、入居者の不安は犯罪リスクだけに限定されていないことがわかります。
これは単体の防犯設備ではなく、物件全体の管理状態や住環境が評価の対象になっていることを示しています。投資家にとって重要なのは、共用部の照明、清掃状況、入居者層の安定といった要素を含めた「安心感」を設計する視点であり、設備+共用部の明るさ・清掃・入居者構成まで含めた“安心の設計”が鍵となります。
こうした環境面の整備は、トラブルの未然防止にもつながり、長期的かつ安定的な賃貸経営に寄与します。
入居者に求められる防犯設備の具体像

画像データ引用元:「防犯に関するアンケート調査」|(株)いえらぶGROUP
入居時に重視される防犯設備としては、「防犯カメラ(64.1%)」「オートロック(59.7%)」「窓やドアの二重ロック(49.0%)」などが高い割合を占めました。
この結果からも特定の設備だけが突出しているわけではなく、複数の防犯対策が組み合わされていることが安心感につながっていることは明らかです。
さらにこの結果は、不動産投資においてもヒントになります。最低限の設備だけを導入するのではなく、物件の規模や住環境、ターゲット層に応じて、複数の防犯要素をバランスよく整えることが重要です。
防犯設備への投資は少なくないイニシャルコストが発生しますが、空室期間の短縮や賃料下落の抑制といった形で回収できる可能性は高く、空室短縮・賃料下落抑制で回収余地のある投資として検討する価値があります。
不動産会社側の導入は半数止まりと、ギャップ大
次に、不動産会社に対して「防犯設備の導入状況について教えてください」と聞いてみました。

画像データ引用元:「防犯に関するアンケート調査」|(株)いえらぶGROUP
防犯設備の導入状況については、「全物件に導入済み」が5.7%にとどまり、「導入予定なし」が51.1%と半数を超える結果に。9割以上のエンドユーザーが防犯に対して高い意識を持っているにもかかわらず、供給側の対応はとても十分とは言えない現状が明らかになっています。
このギャップは、投資家にとってはリスクであると同時にチャンスでもあります。市場全体で導入が進んでいないからこそ、一定水準の防犯対策を講じるだけでも物件の相対的な競争力を高めることが可能です。特に築年数が経過した物件では、防犯設備の追加がリノベーションの一環として機能し、物件イメージの改善にもつながります。
設備だけでなく「説明」「情報提供」も評価対象
エンドユーザーに「防犯対策のために不動産会社や管理会社に期待することは何ですか?」と聞いてみました。

画像データ引用元:「防犯に関するアンケート調査」|(株)いえらぶGROUP
最多の回答となった「防犯設備の充実」に次いで、「内見時の安全面の説明」や「防犯に関する情報提供や相談対応」などを求める声が数多くありました。
これは、入居者が設備の有無だけでなく、「どのように安全が確保されているのか」を理解したいと考えていることを示しています。
不動産投資においても、防犯設備を設置しただけでは十分とは言えません。管理会社や仲介会社を通じて、設備の役割や周辺環境の安全性を適切に伝えることで、入居者の不安を解消し、成約率を高めることができます。
説明の質は数値化しにくい要素ですが、結果として空室対策や入居後の満足度向上につながります。
防犯設備への投資は利回りの安定化につながる
防犯設備は、表面的には賃料を大きく引き上げる要素ではないかもしれません。しかし、空室リスクの低減、入居期間の長期化、トラブル発生率の抑制といった形で、利回りの安定に大きく貢献します。
特に現在は、9割以上の入居検討者において防犯意識が標準化しており、防犯対策が不十分な物件は選ばれにくくなっています。防犯は短期的な収益アップの策ではなく、安定経営を支えるインフラ投資と位置付けるべき要素です。中長期で保有する投資家ほど、防犯対策の重要性は高まっていると言えます。
まとめ
今回の(株)いえらぶGROUPの調査結果からわかるように、入居者の防犯重視は93.6%と“当たり前の条件”になっている一方で、物件側の対応は追いついていません。
このギャップこそ、オーナーにとって最も取り組む価値のあるポイントです。まずは 防犯カメラ・オートロック・二重ロック など、複数の基本対策をそろえ、物件の安心感を底上げしましょう。
次に、夜間の明るさや共用部の清掃など“見える安心” を整え、物件の印象を改善。そして、内見時の安全説明を標準化 することで、入居者の不安を確実に解消できます。
防犯対策はコストではなく、空室を減らし利回りを安定させる投資です。需要が高く、供給が追いついていない今こそ、最も成果を出せるタイミングだと言えるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年1月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















