空室対策、どうしてる?事業承継の取り組みは?聞かせて!自主管理大家さん
入居者満足を第一に、満室経営を続けているオーナーズ・スタイルの読者の石坂さん。現場に立ち続ける中で培ってきた賃貸経営の考え方や工夫、次世代につないでいくための向き合い方を伺いました。
自主管理歴21年超
石坂 豊(いしざか・ゆたか)さん
50 歳で商社を退職し、両親から賃貸業を本格的に受け継ぐ。新築や購入で資産を拡大し、11 棟・約100 戸を自主管理。現在は息子さんと二代体制で承継を見据えた経営を実践。
相続した不動産を維持しながら等価交換や購入で物件規模を拡大
両親から「家業を継いでほしい」と頼まれたことが、会社勤めをやめて専業大家となるきっかけでした。親の代から大切にしてきたのは、「なるべく自分たちでやる、人任せにしない」という姿勢です。物件状態や入居者の声を自分の目と耳で把握したいという思いから、今もこの方針を変えていません。
親から相続した不動産を守りつつ、借地権者との等価交換により取得した土地に賃貸住宅を建築、また新たな物件を購入して、資産規模を段階的に拡大。エリア特性やニーズを見極めたうえで、物件ごとに入居者ターゲットを変えながら運営しています。


また、戸建て賃貸のリノベーションにも取り組まれており、購入した中古戸建てを息子さんが中心となってDIY でフルリノベ中。地域の空き家活用にも貢献しています。
入居者満足を第一に、できることは自分で
所有している物件は、満室経営が続いています。秘訣は、空室対策以前に「退去を出さないこと」だと考えています。そのために欠かせないのが、日常の管理と入居者満足度の向上です。私は週に2回、必ず物件を巡回し、共用部の清掃や設備の状態を確認。さらに3カ月に1回は専門会社による定期清掃を入れ、清潔で整った共用環境を保つようにしています。共用部に私物が置かれている場合も、頭ごなしに注意せず、理由を伝えたうえで撤去をお願いしています。
トラブル対応で重視しているのはスピード感です。入居者のみなさんとはメールやSNSでつながり、困りごとは写真やメッセージで伝えてもらいます。そして、まずは状況を把握し、夜間や休日でもできるだけ早く返答する。不安な時間を長引かせないことが大切だからです。水回りや鍵、建具調整など自分でできる修繕はその場で処理。専門的な対応が必要な場合は速やかに修繕会社へ手配し、対応期限もその場で確認します。
入居者の安心と満足度を高めるためトラブルには自ら素早く向き合う
入居者から連絡が入ったら、まず自分が現場へ向かいます。状況を確認して、できることはその場で対応。専門工事が必要なら、入居者の前で修繕会社へ電話して「いつ対応するか」を確認し、共有します。

巡回清掃で使用する道具(左)と修繕で使用する各種シート、塗料、部材、工具類(右)。知識もノウハウも実践で身に付けている
初動を早めて見通しを示すことが、不安解消とトラブル拡大防止になるとの考えからです。こうした対応力を高めるために各種資格も取得。物件管理だけでなく、交渉や資産運用の判断にも役立てています。
石坂さんが50代から取った資格●宅地建物取引士(宅建士)、賃貸不動産経営管理士、2 級ファイナンシャル・プランニング技能士、家族信託コーディネーター、相続支援コンサルタント、相続診断士、土地活用プランナー、第二種電気工事士、火災保険業の代理店資格(損保関連資格)
設備更新についても、「壊れてから」ではなく「古くなる前」を基本に実施します。実際の使い勝手を知ることも大切。そこで物件ごとに入居者アンケートを行い、日常の不満や要望を確認しています。
例えば在宅ワークが増えた時期にはWi-Fiの使用状況を聞き、高速回線に替えました。
高齢者の入居についても、見守りサービスの導入を条件に柔軟に受け入れています。また、日頃から入居者と顔を合わせて挨拶を交わすことも忘れません。「きちんと見てくれている」と感じてもらうことが信頼を生み、長期入居につながると実感しているからです。
退去を出さない! 早期に埋める! 石坂さんの自主管理の心得
共用部の清掃や巡回、軽微な修繕はできる限り自分で対応するのが基本です。外注を適宜に使い分け、日常管理で無駄な経費を抑える一方、設備更新など物件の資産価値を高める部分には、時代に合った投資を惜しみません。
水道、電気、内装など施工分野ごとに2~3社の協力会社と信頼関係を築いています。委託先の選択肢を持つことで緊急時にも柔軟な対応が可能になり、費用や施工内容の比較もしやすく、結果として品質の安定もかなえています。
設備の利用状況は入居ターゲットで異なるため、物件ごとに入居者アンケートを取ってリアルな声を把握しています。Wi‑Fiや防犯カメラなど、物件のニーズに合う設備を選ぶことが、無駄のない効果的な投資にも活きていると感じます。
仲介会社とは日常的に情報を交換し、物件の特徴や方針を共有するとともに、自分の専門知識も提供。「この大家さんの物件を優先して紹介してあげたい」と思ってもらえる信頼関係を築くことが、スピーディーな募集につながっています。
次世代へ資産と想いも引き継ぐ準備を
自主管理のメリットは、賃貸経営の全体像を把握できることです。入居者対応から修繕、委託先選定、収支管理までを自分で経験することで、必要な知識が自然と身につきました。結果として、入居者や協力会社とも対等に話ができるようになったと感じています。
また、DIYで対応できる範囲が広がって、経費削減だけでなく、物件力の向上も図れました。努力の積み重ねですが、長く続けるほど差が出る部分だと思います。
現在は息子と二人体制で賃貸経営に取り組んでいます。日々の巡回や修繕の判断、収支の考え方までを共有し、現場で起きたことを一つひとつ確認。数字や結果だけでなく、判断に至った過程など経営姿勢も伝えるようにしています。
石坂さんに聞きました!次の世代に事業を引き継ぐ取り組み
●親子で経営を共有
息子は管理法人の役員として経営に参画、管理業務や実務を担っています。宅地建物取引士などの専門知識を活かしながら入居者からの問い合わせやトラブルにも対応。現場経験を重ねて判断力を養っています。
●資産承継の仕組みづくり
親子で事業承継について学び、収支管理や修繕計画、将来を見据えた投資方針までを共有しています。法人化により資産管理の仕組みを整備し、段階的な承継準備も進行中です。
これからも入居者の暮らしを第一に、楽しく賃貸経営を続けたい
賃貸経営は決して不労所得ではなく、手間も責任も伴う仕事です。
ただ、その分、現場に立ち続ける中で判断力が磨かれ、信頼できる協力会社との関係づくりや資産価値の維持に役立っていると感じています。入居者からの感謝の言葉や、物件が少しずつ良くなっていく手応えを励みに、これからもご入居者の暮らしを第一に、楽しく賃貸経営を続けたいと思っています。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2026年3月1日時点の情報です。
取材・文/藤谷 スミカ
ライタープロフィール
藤谷 スミカ(ふじたに・すみか)
同志社大学文学部英文学科卒。広告制作プロダクション、情報誌出版社を経て、フリーランスのコピーライターとして30余年。ハウスメーカーの実例取材記事、注文住宅、リフォーム、土地活用に関する情報誌の記事、企業PR誌の著名人インタビュー記事、対談記事、企業単行本の執筆等を手がける。














