お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説

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公開日:2026年8月4日
更新日:2026年8月4日
お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説1

不動産投資家にとって、相続・事業承継は「所有する資産を次世代へ渡すこと」だけではありません。物件管理や借入、収支管理など、賃貸経営そのものを引き継ぐ準備が求められます。健美家株式会社が実施した調査では、8割以上の投資家が相続・事業承継を想定し、その対策として最も多かったのは、「資産のスリム化」であることが分かりました。今回は、その調査結果をもとに、円滑な承継に必要な準備と、今から取り組むべきポイントを解説します。

8割以上が相続・事業承継を想定。最多の対策は「資産のスリム化」

お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2

相続・事業承継に関する調査 健美家株式会社

不動産投資家にとって、所有する収益物件は重要な資産である一方、次世代へ引き継ぐ際には「経営を伴う資産」であることを意識する必要があります。

健美家株式会社が不動産投資家135名を対象に実施した「相続・事業承継に関する調査」では、8割以上が将来的な相続・事業承継を想定していることが分かりました。

お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2 お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2

相続・事業承継に関する調査 健美家株式会社

また、相続・事業承継に向けて「対策をしている/考えている」と回答した投資家も約8割に上っています。

そして、「実際に行っている」または「直近で予定している」準備として最多だったのが、「収益性の低い物件の売却など、資産の組み換え(スリム化)」で63.2%でした。

相続対策というと、税負担の軽減や資産評価の調整などに注目が集まりがちです。しかし今回の調査からは、「残された家族が無理なく賃貸経営を続けられる状態に整える」という意識を持つ投資家が多いことがうかがえます。

 

なぜ「資産のスリム化」が必要なのか。賃貸経営ならではの引き継ぎの難しさ

お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2

不動産投資用物件は、現金や金融資産とは異なり、所有した後も継続的な管理や判断が必要です。相続によって物件を引き継いだ場合、後継者には以下のような対応が求められます。

◆空室発生時の募集条件の判断
◆設備故障や修繕への対応
◆管理会社との連携
◆金融機関への返済管理
◆毎月の収支確認

特に、複数の物件を所有している場合や、収益性が低下した物件を保有している場合、承継後の負担は大きくなります。そのため、現在の投資家は「より多くの資産を残すこと」ではなく、「引き継ぐ側が管理しやすい資産構成へ整えること」を重視していると考えられます。

また、相続人が必ずしも不動産投資や賃貸経営に関心を持っているとは限りません。会社員として働いているケースや、遠方に住んでいるケースでは、複数物件を管理すること自体が大きな負担になります。

その結果、十分な判断ができないまま空室対策や修繕が後回しになったり、管理会社との連携がうまく取れなかったりすることで、物件の収益力が低下してしまう可能性もあります。承継後も安定した経営を続けるためには、「管理しやすい状態」をあらかじめ整えておくことが重要といえるでしょう。

保有状況は伝えているが、経営情報の共有には課題

お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2

相続・事業承継に関する調査 健美家株式会社

今回の調査では、不動産投資用物件を引き継ぐ予定の家族などへ、物件状況を「伝えている」「一部伝えている」と回答した投資家は9割を超えました。しかし、共有している内容を見ると、項目によって差があります。

「物件の保有状況(保有数や所在地など)」は97.1%と、ほぼ全員が共有しています。

一方で、

◆物件の管理・運営方法 60.0%
◆資金の借入状況 58.1%
◆物件の収支状況 54.3%

にとどまりました。

つまり、物件の存在や概要は伝えていても、賃貸経営を継続するために必要な情報までは十分共有できていないケースがあります。賃貸経営では、物件そのものだけでなく、管理方法や判断基準といった「目に見えない資産」も重要です。

とくに借入状況や収支内容は、金融機関との返済計画や将来の修繕計画にも関わる重要な情報です。これらが共有されていないと、相続後に契約書や通帳、管理資料などを一つひとつ確認しなければならず、引き継ぎに多くの時間と労力がかかる可能性があります。

「どの物件を所有しているか」だけではなく、「どのように経営しているのか」まで共有しておくことが、円滑な承継には欠かせません。

引き継ぎやすい資産構成を作る。「スリム化」という選択肢

今回最多となった「資産のスリム化」は、単純に所有物件を減らすことではなく、将来の承継を見据えて資産構成を整える取り組みです。重要なのは、次世代が無理なく管理できる状態へ資産を整理することです。

たとえば、

◆収益性が低下した物件を見直す
◆将来的な修繕負担が大きい物件を整理する
◆優良物件を中心とした保有構成へ変更する

といった判断が考えられます。

また、「一部の優良物件のみを残し、手間がかかる物件は売却して現金等と分けて引き継ぐ」という対策も44.8%の投資家が挙げています。

大切なのは、資産の量ではなく、引き継いだ後も安定して経営できる状態を作ることです。

スリム化だけでは不十分。情報整理とノウハウ共有も重要

お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2

円滑な事業承継には、資産整理だけでなく情報共有も欠かせません。

調査では、

◆物件情報や借入・管理会社などをまとめた一覧表・エンディングノートの作成:54.0%
◆家族への賃貸経営ノウハウの共有:50.6%

となっています。

承継時に必要になるのは、

◆管理会社の連絡先
◆修繕履歴
◆借入状況
◆収支内容
◆入居状況

など、日々の賃貸経営に関する情報です。また、管理会社との面談に家族を同席させるなど、少しずつ経営への理解を深めてもらうことも有効です。

情報整理は、一度作成して終わりではありません。借入残高や管理会社の担当者、家賃収入、修繕履歴などは時間の経過とともに変化します。そのため、定期的に内容を更新し、家族がいつでも確認できる状態を維持することが大切です。

デジタルデータと紙の資料を併用して保管しておけば、万が一の際にも必要な情報へアクセスしやすくなります。

お盆は家族と賃貸経営について話す機会に

お盆に話したい相続ーー「資産のスリム化」について解説2

お盆は、普段離れて暮らす家族が集まりやすい時期です。相続や事業承継について話し合うには、良いタイミングといえるでしょう。

まずは、

◆どのような物件を所有しているのか
◆管理を誰に任せているのか
◆現在の経営状況はどうなっているのか
◆将来的にどのように残したいのか

を共有することから始めてもよいでしょう。

賃貸経営は、所有者一人だけで完結するものではありません。次世代が安心して引き継げる環境を整えることも、オーナーに求められる重要な準備です。

まとめ:スリム化は「終わり」ではなく「未来へつなぐ準備」

今回の調査では、多くの不動産投資家が相続・事業承継を意識し、具体的な準備を進めていることが明らかになりました。

その中でも注目されるのが、「資産のスリム化」という考え方です。これは、単に資産を減らすための取り組みではありません。次世代が無理なく賃貸経営を続けられるよう、資産構成を整理し、必要な情報やノウハウを残していくための準備です。

相続や事業承継は、いつ発生するか分かりません。だからこそ、家族が集まる機会を活用し、将来の引き継ぎについて話し合うことが、円滑な賃貸経営承継への第一歩になるのではないでしょうか。

賃貸経営は、物件を所有しているだけでは成り立ちません。入居者対応や建物管理、資金計画など、多くの判断を積み重ねることで収益が維持されています。そのため、承継で本当に残すべきものは、不動産という「資産」だけではなく、それを運営するための「仕組み」と「知識」でもあります。

将来の家族の負担を軽減し、安定した賃貸経営を次世代へつないでいくためにも、資産だけでなく、経営に必要な情報や知識も含めて、今から少しずつ準備を進めていくことが重要です。

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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