事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略

相続/節税/保険
この記事が気になる

【この記事が気になるとは】
会員様限定のサービスです。 会員の方は、「ログインする」そうでない方は、
会員登録して再度アクセスしてください。

ログインする ⁄  会員登録する
閉じる
公開日:2026年9月1日
更新日:2026年9月8日
事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略1

入居者が退去するたびに、否応なく取り組む原状回復。「管理会社の対応が遅い」「コストが高い」と不満をもらすオーナーは少なくありません。その原因は、オーナーの対応の仕方にあるかもしれません。原状回復は思っている以上に奥が深いものです。コストと空室期間を最小限に抑え、収益を高める攻略法を身に着けましょう。

取材・監修
事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略2

株式会社市萬 

代表取締役
西島昭 さん(左)
賃貸事業部 係長
山之内玲子 さん(右)

押さえるべきポイントは大きく2つ!

「原状回復の考え方はズバリ2つ」と西島さんはおっしゃいます。
第1に、前入居者の退去から次に部屋が埋まるまでの空室期間、つまり家賃収入のロスとなる空白を最小化し稼働率を高めることです。

第2に、今の時代の入居者ニーズに合わせ競争力を維持・回復すること。可能なら家賃もアップし収益最大化を狙います。「“原状回復=元の状態に戻す”という言葉を鵜呑みにしないことが大切です。築30年の建物で新築時の状態を復元すると、今現在から見れば30年前に立ち戻ったデザインになってしまいます」(西島さん)。

POINT①家賃の空白期間を短く。稼働率を最大化
事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略2
POINT②今のトレンドに追いつく。収益を最大化
事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略2

本来、法的な意味での原状回復とは、借り手側が部屋を利用している間に発生した損傷を修復して、入居前に戻して返還する義務を指します。オーナーが行うべき“原状回復”は、物理的に「元に戻す」のではなく、最新のトレンドに追いつき、新築当時に持っていた「稼ぐ力を取り戻す」と考えたほうがいいかもしれません。

そのためにオーナーとして何をするべきか、ポイントをさらに詳しく解説していきます。

POINT①家賃の空白期間を短く。稼働率を最大化

退去連絡・事前準備

居住期間と施工履歴から工事内容を予測

いかに時間のロスを抑えるかという点では、何か起きてから事後的に対処するのではなく、一歩先を予測して早めに行動を始めることと、事前のダンドリが大切です。

「退去連絡がきたら、居住期間と入居前の施工履歴を確認して、今の部屋の状況と必要な工事内容を想定します。前の原状回復でしっかり内装を変えたうえで3年しか住んでいないなら、クリーニングと簡単な工事で済みます。逆に、前入居者が10年以上住んでいてかつ改修をほとんどしていない部屋だと、間取り変更も含めた大きな工事が必要になるかもしれません。その時点で、費用の概算と工事期間を予測します。そして、信頼できる協力会社を予め選んで声をかけておき、管理会社などの適切な会社に工事計画を伝えて即動ける体制をつくっておけば、無駄な動きがありません。募集までの準備も同時に始めます」

実際に入居者が退去する前にここまでの作業が終わっていれば、このあともスムーズに進みます。

 

立ち合い~見積もり

見積もりまでを立ち合い同日に完了させる

退去立ち合いから工事会社の見積もりをいかに早くできるかが重要です。
立ち合いを管理会社が行い、複数の工事会社に相見積もりを依頼して選定に何日もかけるとロスが大きくなります。例えば、家賃10万円の部屋なら、1カ月を30日換算とすると3日で1万円、1日当たり約3300円の損失です。5000円の価格交渉をするより、2日間早く動かしたほうが得になるという考え方です。
こうしたコスト意識を経営感覚として持つことが重要になります。

「原状回復ガイドラインをよく理解して、室内の改修工事に慣れた工事会社に立ち合いに同行してもらい、その場で簡単な見積もりを行えば時間短縮になりトラブルも少ないです。当社では賃貸契約の基本を理解している会社に現地確認をお願いすることもあります。様々な情報を持った入居者も多いため、その場で現状確認書にサインをもらえるよう、入居者ときちんと話ができてソフトに対応できる担当者のいる工事会社だとより望ましいでしょう。」(西島さん)

 

オーナー承認~発注

基準単価を事前に決め即決や事後承認で進行

見積もりが出てオーナーに連絡したとき、なかなか返答がなかったり、「この部分は少し高いな。2〜3日考えさせて」などと迷ったりしていると前に進みません。目先の金額を節約するために空室や工事の期間が延びてしまえば、結果的に高くつきます。オーナー自身が必要な工事の種類や費用の目安を把握し、あらかじめ「一定の金額の範囲に収まれば確認不要」と決めて、管理会社に権限を委譲しておけばスムーズに進みます。

「予め工事内容ごとに基準単価表を示し、承認をもらうという方法です。例えば、20平方メートル以下の部屋の室内クリーニングなら3万円、壁クロスは1平方メートル当たり1200円、総額30万円など、オーナー様のチェックを待たずに工事を発注できるようにすり合わせをしています」と山之内さんは話します。

冒頭にある原状回復の主な項目の一覧表を参考に、管理会社や工事会社に任せる単価の水準を定め、事後承認にするか、迷わず即決できるように心構えをしておきましょう。

施工~募集

工事内容と完了日を仲介会社に共有する

仲介会社との連携も重要です。工事を実施する内容と施工のスケジュールを共有して、スピーディな募集に活かせるようにしましょう。

また、工事期間を短くするためのポイントは、作業に入る前の工事計画段階にもあります。「商品選定の際、こだわった特殊な商品を指示するとコストが高く、入荷に時間もかかりがちです。今のニーズを踏まえつつオーソドックスな商品はコストを抑えられ、調達もしやすいです。特定の工事会社に依頼している場合は、多用するクロスを取り決め、在庫で準備しておいてもらうと、さらにスピーディな施工ができるでしょう。」

 

事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略2

アスベストの事前調査義務化!工事期間への影響に注意

アスベストの事前調査は原則すべての工事が対象です。請負金額100万円以上の改修工事は2022年4月から自治体や監督官庁に対する調査結果報告も義務化されています。工事期間やコストに影響するため、関係する場合は必要な措置に注意しておきましょう。

POINT②今のトレンドに追いつく。収益を最大化

内装デザイン

「明るさ」「清潔感」と白いキャンバスを意識

現在の入居者ニーズやトレンドに合わせるポイントは何でしょうか。「白を基調にしたデザインに揃えるのが今風です。明るく開放的な雰囲気で全体の一体感を出すと、部屋が広く見える効果もあります。最近はインテリアにこだわりたい入居者が増えているため、自分色に染められる白いキャンバスをイメージするといいでしょう」とアドバイスしています。

一方で、あまりコストをかけすぎると採算が合いません。「古くてもまだ使える部分は大切に直し、クリーニングで済むところはそれを選択するというメリハリが大切です。ワンポイントでも集客効果が上がるリペアを積み重ね、なるべくローコストで見栄えが良くなる工夫をしましょう」

例えば、スイッチプレートを交換するだけでもイメージ改善の効果が高まります。玄関のタタキも明るめのフロアタイルにすると、見違えるように部屋の印象が良くなります。壁紙の交換に合わせて、こげ茶色の木部や黄ばんだコーキングを白く塗装すれば、全体がより明るくなります。

設備仕様

必須設備やターゲットに合わせた仕様に変更

新築時にはなかった設備を入れるプラスアルファのリフォームも、人件費を考えると多くの場合は原状回復とあわせて行うことが望ましいといえます。「ないと入居が決まらない」と言われる人気設備は優先的に検討しましょう。ただし、ターゲット層によってもアイテムは異なります。

「単身者向けの場合、入居後すぐに生活できる部屋が選ばれやすいので、ガスコンロと照明器具、エアコンの3つの設置はオススメです。ファミリー向け物件の場合は照明器具や家具とのバランスにこだわる方が多いので、むしろ照明の設置は控えます。当社ではオーナー様に必須設備は導入するという方針をお伝えしています。事前承認があれば、見積もりの度に説明する必要がありません」と説明しています。

ちなみに、2027年問題も無視できません。蛍光灯の生産が終了し、エアコンの省エネ基準の規制強化で低価格帯がなくなるといった問題です。照明のLED化や新基準適応のエアコンの導入・交換なども早めに視野に入れておきましょう。

事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略2

リノベーション

プラスアルファの工事は投資利回りで判断

内装設備の見直しだけでは、どうしてもニーズに対応できない築古物件も多くあります。古い間取りの典型であるDKタイプ、若者層から避けられる畳敷きの和室や3点ユニットなどは、耐用年数が近づいたタイミングで改修を検討したいところです。2DKは1LDKに、和室は洋室に、3点ユニットは独立したトイレ・洗面台・ユニットバスに、など思い切った変更が挙げられます。

ここまでくると原状回復のレベルを超えるリノベーション工事になってくるため、かかる費用も格段に高く、実施に踏み切れず迷ってしまうオーナーは少なくありません。これに対して、西島さんは投資利回りという明確な指標による判断を提案しています。

「金額が高い低いという感覚的な印象ではなく、投資効果を数値に置き換えて客観的に判断できるようにしましょう。つまり、単なる出費ではなく投資と捉えて、投資額に対して、いくら家賃が上がるのかを投資利回りとして割り出すわけです」(西島さん)。

事前のすり合わせと即断即決で差がつく!原状回復 徹底攻略2
目安は上に示した通りです。市萬が手掛けた過去の事例では、元の家賃が15万円、リノベーションに800万円という見積もりを見て、当初オーナーが「こんなに資金をかけて大丈夫なのか?」と不安になったといいます。しかし、他の事例をもとに家賃増加額予想の根拠を示しながら投資利回りの計算結果を見せると、オーナーも納得し工事を実施しました。
「複雑な工事や金額が大きくなる場合は、より詳細なキャッシュフロー・シミュレーションを実施します。先行投資の効果を客観的な数字で判断していただけます」と述べています。

家賃上昇期をチャンスに変える原状回復

次の入居までの空室期間を短縮するためには、事前準備とオーナーの迅速な判断が欠かせません。そして、室内の設備や内装を今の時代に合わせて改良していかなければ適正な賃料は取れないのです。
地域によっては家賃が上昇傾向にある現在、古いイメージに捉われずやるべき原状回復工事を実施することは、家賃アップのチャンスでもあります。信頼できる協力会社とともに、1日でも早い入居付けを目指してオーナー自身が主導し、原状回復を攻略してほしいと思います。

この記事をシェアする

関連する企業レポート

関連するセミナー・イベント

関連する記事