「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営

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公開日:2026年9月17日
更新日:2026年9月17日
「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営1

外国人の在留者数が増加するなか、賃貸住宅でも外国籍の入居希望者をどう受け入れるかが、新たなテーマになっています。リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社(LMC)が首都圏の賃貸仲介担当者333人を対象に実施した調査では、外国籍からの問い合わせが「増加した」と回答した割合は55.9%に上りました。この需要を取り込むことは空室対策の一つになり得ます。外国人入居者を受け入れるには、どのような準備が必要なのでしょうか。

外国人からの問い合わせが増加。無視できない賃貸需要

「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営2

「【賃貸住宅市場調査】2026年上半期、賃貸市場で何が変わったのか ― 6年間の定点調査が示す変化と定着 ―」

外国人入居者の受け入れを考えるうえで、まず押さえておきたいのが需要そのものの拡大です。LMCが2026年6月から7月にかけて、首都圏(1都3県)の賃貸不動産仲介担当者333人を対象に実施した調査では、外国人からの問い合わせについて、前年と比較して「増加した」と回答した割合が55.9%となりました。

「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営2

「【賃貸住宅市場調査】2026年上半期、賃貸市場で何が変わったのか ― 6年間の定点調査が示す変化と定着 ―」

さらに、留学生からの反響については「全体の3~4割程度」と回答した店舗が33.3%で最多となっています。外国人からの問い合わせが一部の特殊な需要ではなく、賃貸仲介の現場で一定の割合を占めていることが分かります。

背景にあるのが、日本で暮らす外国人そのものの増加です。出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人となり、初めて400万人を突破しました。前年末から35万6,418人、9.5%増加しており、過去最高を更新しています。

もちろん、在留外国人のすべてが賃貸住宅に住んでいるわけではありません。しかし、国内で生活する外国人の母数が拡大すれば、住宅需要にも影響します。外国人入居者を受け入れるかどうかは、これまでのように「特殊なケースへの対応」としてではなく、賃貸経営における一つの市場として考える必要がありそうです。

国籍別では「中国」が最多。外国人需要はさらに多様化

「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営2

「【賃貸住宅市場調査】2026年上半期、賃貸市場で何が変わったのか ― 6年間の定点調査が示す変化と定着 ―」

では、実際にはどの国籍からの問い合わせが多いのでしょうか。LMCの調査では、中国からの問い合わせが突出して多く、続いてベトナム、韓国、ネパールなどが挙げられています。東アジアや東南アジアを中心に、さまざまな国籍から賃貸住宅への需要が生まれていることが分かります。

ここで注意したいのは、「外国人」という一括りでは対応できなくなっていることです。留学生なのか、就労目的なのか、家族と暮らすのか、単身なのかによって、希望する立地や間取り、契約期間などは変わります。たとえば留学生であれば学校への通いやすさが重要になる一方、就労者であれば職場へのアクセスや生活利便性が重視されるのは想像に難くありません。

外国人入居者を新たなターゲットとして考えるのであれば、「外国人向け物件」とひとまとめにするのではなく、どのような入居者を想定するのかを明確にすることも重要です。

「借りたいのに借りられない」。外国人側にも住宅探しの壁

外国人受け入れについて考えるとき、オーナー側の不安ばかりに目が向きがちです。言葉が通じないのではないか。契約内容を十分に理解してもらえるのか。家賃を滞納した場合はどうするのか。緊急時に連絡が取れるのか―。こうした懸念は、受け入れをためらう理由になり得ます。

一方で、外国人の側も日本で住まいを探す際にさまざまな壁を感じています。株式会社サーベイリサーチセンターが2022年に実施した「在留外国人の居住環境(住まい・自動車保有)や近隣関係について」の調査では、住居探しで困ったこととして「保証人がいなかった」が42.8%、「外国人という理由で入居を断られた」が34.4%、「家賃が高かった」が32.4%となっています

「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営2

株式会社サーベイリサーチセンター「在留外国人の居住環境(住まい・自動車保有)や近隣関係について」の調査

つまり、外国人入居者の受け入れには、オーナー側だけでなく、借主側にも課題があるということです。この点は、賃貸経営を考えるうえで重要です。「外国人だからトラブルが心配」と考えるだけではなく、外国人が日本の賃貸住宅を借りる際にどこでつまずいているのかを理解すれば、必要な対策も見えてきます。

たとえば、保証会社を利用できる仕組みを整える、契約内容を多言語で説明できる仲介会社を利用する、緊急連絡先を確保するなど、双方の不安を減らす仕組みを用意することが受け入れの第一歩になります。

外国人入居者は「安さを求める」と一括りにはできない

「外国人お断り」では需要を逃す? 増加する外国人入居者を取り込む賃貸経営2

「【賃貸住宅市場調査】2026年上半期、賃貸市場で何が変わったのか ― 6年間の定点調査が示す変化と定着 ―」

それでは外国人はどんな条件を優先して住まい探しをしているのでしょうか。外国人のうち留学生に限定して見ると、住まいを探す際の優先順位は「初期費用」が55.9%、「賃料」が51.4%と、費用面の条件が上位に挙げられ、次いで「通学所要時間」が43.8%となっています。これだけ見ると、外国人入居者を受け入れる際には「家賃を抑えれば選ばれる」と考えがちです。しかし、外国人側から見た住まい選びでは、費用だけが判断材料になるわけではないようです。

株式会社サーベイリサーチセンターが2020年に実施した「在留外国人総合調査 (住まいと近隣環境について)」では、住居探しで重視した条件として「公共交通のアクセス」が54.3%で最も多く、「会社・学校への近接性」が50.2%、「適切な間取り・家賃」が43.8%、「生活環境の利便性」が42.2%となっています。

この結果からは、外国人入居者も「どこに住むか」「いくら払うか」「どのような暮らしができるか」を総合的に見て物件を選んでいることがうかがえます。

そのため、外国人向けの空室対策を考える場合も、単純に家賃を下げる必要はありません。駅や学校、職場へのアクセスが良い、生活に必要な施設が近い、初期費用が分かりやすいなど、その物件が持つ強みを整理し、ターゲットを明確にした訴求をすることが大切になってきます。

「外国人受け入れの仕組み」をオーナー一人で抱え込まない

外国人入居者の受け入れを考えるうえで、最大のポイントは「すべてをオーナー自身で対応しようとしないこと」です。

国土交通省では、外国人の民間賃貸住宅への入居を円滑にするため、オーナーや仲介・管理会社向けのガイドラインを整備しています。契約時に役立つチェックシートや入居申込書、重要事項説明書、賃貸住宅標準契約書などの見本が、日本語を含む14カ国語で用意されています。また、外国人向けの「部屋探しのガイドブック」も14言語に対応しています

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「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」

こうした公的なツールを活用しながら、実際の入居者対応については、外国人の仲介実績が豊富な不動産会社や管理会社と連携する方法も検討すべきです。

とくに自主管理のオーナーの場合、言語対応や審査、契約、入居後の問い合わせまで一人で担うのは負担が大きくなります。外国人対応の経験がある管理会社や仲介会社をパートナーにすることで、受け入れに伴う負担を抑えやすくなります。

また、保証会社を利用できる物件にすることも重要です。保証人の確保が外国人にとって大きな壁となっている以上、保証会社を活用できれば、借主側の選択肢を広げられます。同時に、オーナーにとっても家賃滞納などへの備えを整えやすくなります。

「外国人を受け入れる」というと、大がかりな設備投資や特別な制度が必要に思えるかもしれません。しかし実際には、保証、言語、緊急連絡先、契約説明など、一つずつ対応策を整えていくことが重要です。

まとめ:値上げだけではない。定期借家を経営の選択肢に

外国人入居者は、もはや賃貸経営におけるニッチな需要とは言い切れません。在留外国人が400万人を超え、賃貸仲介の現場でも外国籍からの問い合わせが増加していることを考えれば、今後さらにその存在感が高くなることは明らかです。

もちろん、すべての物件が外国人向けになる必要はありません。物件の立地や間取り、周辺環境、管理体制などを踏まえ、どの入居者層をターゲットにするのが適切なのかを判断することが大切です。

そのうえで、外国人入居者を受け入れるのであれば、保証会社の活用や緊急連絡先の確保、多言語対応など、オーナーが感じる不安を具体的な仕組みで減らしていくことがポイントになります。

外国人側にも「保証人がいない」「外国人という理由で断られる」といった住宅探しの壁があります。だからこそ、受け入れ態勢を整えた物件には、競合物件との差別化につながる可能性があります。

「外国人だから難しい」と一律に考えるのではなく、「どのような仕組みなら受け入れられるか」と発想を変える。増加する外国人需要を空室対策の一つとして取り込むために、今後の賃貸経営ではそんな視点が求められそうです。

※この記事内のデータ、数値などに関する2026年9月時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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