空き家法の改正で所有者の意識は変わった?相続事情や最も多い活用方法など気になる最新状況を解説
2023年6月に「空家等対策の推進に関する特別措置法(=空き家法)」の改正案が可決・公布され、固定資産税の減額措置の対象外となる空き家の範囲が広がりました。空き家について国や自治体が様々な施策を行う一方で、空き家所有者の意識はどのように変わったのでしょうか。中古住宅の買い取りなどを行っている(株)カチタスが実施した意識調査を抜粋してご紹介します。
※文中では通例(送り仮名の付け方 昭和48年内閣告示第2号)に従い「空き家」と表記しますが、法規名や法規内で説明されている名称等では抜粋として「空家」としています。
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空き家の固定資産税が6倍になる?!法改正のポイント
住む人のいない空き家は、この20年で1.9倍に増え、2030年には470万戸に達する見込みだといわれています。特に、管理がされておらず、周囲に悪影響を及ぼす空き家(特定空家)への対応は急務であることから、特定空家の除去促進と、管理強化を目的として、「空家対策特措法」が改正されることになりました。
放置すれば「特定空家」となる可能性の「管理不全空家」を指定し、行政による改善の指導・勧告が行えるように。勧告を受けた「管理不全空家」は、固定生産税が1/6に減額される住宅用地特例が解除されます。つまり、固定資産税が6倍になる空き家が増える可能性があるということです。
これまでは、相続した土地に建てたままにしておくことで固定資産税が減額されていた空き家も、適切に管理する必要が出てきたということになります。
他にも、空き家に対する市区町村長の権限を強めるなど、「空家等対策の推進に関する特別措置法」は放置された空き家の除去や適切な管理を推進するための改正となっています。
空き家所有者のうち、法改正を知っている人は38.4%
意識調査は日本全国の空き家所有者を対象に行っており、所有する空き家は70.2%が一戸建て、20.1%が居住地の県外に所在しています。空き家の取得経緯で最も多いのは「相続」で57.8%、次いで「自ら取得した」が31.0%でした。
空き家所有者のうち、空き家法を知っている人は40.2%で、改正されることを知っていると答えた人は38.4%。どちらも約4割の認知度合いであることが分かりました。
取得経緯で最も多い「相続」ですが、2024年4月から相続による不動産登記申請が義務化されます。そのことを知っている人は44.2%。2021年に行われた調査では23.2%だったことから、認知が約2倍に広がっています。
空き家の相続について家族との対話は進んでいる?
対策の検討が進んでいるとしましたが、実際に家族と話し合っている人はどれくらいいるのでしょうか?「空き家の相続について、家族と対話したことがありますか?」という質問には「ある」と答えた人が60.8%。
2021年調査時の33.3%からほぼ倍増していることから、空き家所有者の空き家の相続に対する意識は高まってきていることが分かります。
さらに、家族と対話している人は、空き家の所在地が県外で67.7%、県内が59.1%という結果から、遠方の空き家所有者の方が空き家の相続に対する意識は高いようです。
また、相続登記義務化が施行された際に取るべき空き家対策は「まだわからない」が32.5%で最多でしたが、2021年調査時の44.8%よりは減少しました。対策の検討は進んでいることが見られます。
空き家対策は「わからない」が最多。特に多い層が60代
空き家法が改正されたらとるべき対策については「まだわからない(46.6%)」が最も多く、具体的な対策法は以下のようになっています。
まだわからない | 46.6% |
売却する | 28.4% |
賃貸として貸し出す | 17.7% |
解体する | 6.3% |
その他 | 1.0% |
検討する空き家対策で最も多いのは「売却(28.4%)」で、4人に1人が空き家の売却を検討しています。
年代別比較では、60代以上のシニア層で「まだわからない」と回答した割合が最も多く54.5%という結果に。一方で20~30代は約6割が具体的な検討を進めており、空き家対策として最も多いのは「賃貸として貸し出す(28.4%)」でした。
対策が進まない理由としては、以下のようなコメントが挙がっていました。
・「妻や兄弟と話し合いができていないため」
・「自分は売却したいが、兄弟と意見の相違があり、どうするか決まっていない」
・「賃貸として貸し出したいが修繕費を負担できない」
・「解体したいが解体費を負担できない上、解体したら固定資産税が高くなるから」
家族や親族との意見の相違や金銭的理由が空き家対策の進まない主な理由のようです。
空き家管理で最も負担に感じることは「荷物の処分」
身体的負担・心理的負担・金銭的負担に分けて、空き家管理で最も負担に感じることを聞いた結果、上位は以下のような内容になりました。
1位 | 残された荷物処分 |
2位 | 草木の選定 |
3位 | 破損個所のリフォーム |
1位 | 残された荷物処分 |
2位 | 破損個所のリフォーム |
3位 | 管理に伴う移動 |
1位 | 残された荷物処分 |
2位 | 破損個所のリフォーム |
3位 | 管理に伴う移動 |
全項目で「残された荷物処分」が1位となり、それぞれ3人に1人が選んでいます。やはり空き家管理における荷物の処分は大きな負担になるようです。故人の想い出が残る品も多く、処分の判断がしづらいことや、単純に量が多いこともあって、荷物の処分は大きなハードルとなっています。
調査を実施した(株)カチタスでは残された荷物ごと空き家を買い取ることが可能で、同社に空き家の売却相談をする人の約6割が荷物を残したままだといいます。今後も、同様のサービスを利用する人は増加するでしょう。
まとめ
空き家利用のために、官民両方からの取り組みが盛んになっています。それに伴い、空き家所有者の意識も向上しつつあることが調査から分かりました。
空き家の利用促進には様々な試みが生まれていますが、賃貸住宅としての利用、賃貸物件への建て替えはやはりメジャーな方法のひとつ。大家さんにも無関係な話ではないため、法令をはじめ空き家に関するニュースはチェックしておくようにしましょう。
※この記事内の情報は2023年9月13日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
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