土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説

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公開日:2024年10月2日
更新日:2024年10月2日
土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説1

土地などの不動産を相続した場合、相続したところから毎年、固定資産税を支払う義務が生じます。しかし土地が遠方で活用できなかったり、売却できるほどの資産価値がなかったりする場合は相続を放棄したいと考えるのも無理はありません。土地の相続放棄は可能なのでしょうか。相続放棄の手続きの流れや土地を手放す方法について解説します。

土地の相続を放棄することはできる?

相続放棄とは、亡くなった方からの遺産をすべて相続しないことを指します。例えば、被相続人(亡くなった方)に借金などの負債があったり、相続することで負担が大きくなったりする場合に相続放棄を選ぶことがあります。

冒頭で述べたような「土地を相続しても活用できない」「資産価値がなく、売却できない」などの状況もそれに当てはまるでしょう。相続したとしても固定資産税の負担が増えるだけでメリットがないため、相続を放棄するという選択肢です。

土地だけを相続放棄することはできない

相続放棄をすると、財産に関する一切の権利や義務を手放すことになります。そのため、財産の中から不要なものだけを選んで相続放棄する、などといったことはできません。「現金の財産は相続するが、土地は放棄する」というようなことはできないのです。

土地も含んだすべての財産を相続するか、一切相続しないか。どちらかしか選べず、一度認められた相続放棄を取り消すことはできません。しっかり財産調査をしたうえで決めましょう。

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土地の相続を放棄するメリット‧デメリット

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2

土地の相続を放棄すると、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。次のようなものが考えられます。

土地の相続を放棄するメリット

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2
相続税がかからない

土地に限らずですが、基礎控除3,600万円以上の財産を相続したときには相続税が課税されます。しかし当然、相続を放棄すれば、相続税の課税義務はなくなります。

土地の名義変更の費用と手間がかからない

土地などの不動産を相続した場合、相続登記の費用と手間がかかります。登録免許税に加えて司法書士に登記を依頼した場合の報酬など5〜10万円程度が不要になります。

固定資産税がかからない

土地を相続することで、「土地の課税標準額×税率1.4%」の固定資産税が毎年課税されますが、これらがかからなくなります。

相続に関するトラブルなどに巻き込まれない

相続人同士で遺産分割協議などが紛糾するトラブルに巻き込まれずに済みます。特に土地など分割しづらいものはもめやすいため、放棄をすることで相続争いのストレスを抱えずにいられることはメリットと言えるでしょう。

土地の相続を放棄するデメリット

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2
他の遺産も相続できない

前項のとおり、土地の相続だけを放棄することはできないため、他に財産がある場合も相続できなくなります。負債がある場合などは相続放棄のメリットは大きいですが、後から高額な資産が見つかった場合も撤回できないため、注意しましょう。

他の相続人に迷惑をかける可能性がある

自分が相続放棄をすることで、次の相続順位の相続人に権利が移ることになります。そのため、次の相続人に何も伝えずに相続放棄をしてしまうと、状況によっては迷惑をかけたり、トラブルになったりするおそれがあります。相続を放棄する場合は他の相続人全員にその旨を連絡するようにしましょう。

相続放棄の手続きの流れ

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2

相続放棄は家庭裁判所に書類を提出し、受理してもらうことで成立します。自分で手続きする場合は次のような流れになります。

必要な書類と準備方法

相続放棄は、申述人(相続放棄を申し込む人)と被相続人(亡くなった方)の関係によって必要書類が異なります。すべての場合に共通して必要なのが次の書類です。

□相続放棄の申述書
□被相続人の住民票除票または戸籍附票
□申述人(放棄する方)の戸籍謄本

 

申述人が被相続人の配偶者の場合や子の場合、孫・ひ孫の場合などで、必要書類が増えていきます。詳しくは裁判所のホームページに記載されています。

戸籍謄本などの取得にはそれぞれ300〜750円の費用がかかります。それに加えて、収入印紙800円と、裁判所との連絡用の郵便切手代が必要です。郵便切手代は管轄の裁判所によって異なりますが、400〜500円程度です。

書類が揃ったら、亡くなった方の最後の住民票の場所を管轄する家庭裁判所に申述します。後日、裁判所から照会書が届き、必要事項を記入して返送します。

照会書の内容は、相続放棄の意思と、財産をすでに処分したことがないか等を確認するものです。照会書を返送し、受理されたら裁判所から「相続申述受理書」が届き、相続放棄が認められたことになります。

相続放棄の申請期限と注意点

相続放棄の申述は、民法で「相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならない」と定められています。

「土地の他にどれくらい遺産があるか分からないから、相続も放棄もせず放置しておこう」というわけにはいかず、期限内に相続放棄の手続きをしなければ単純承認(全ての資産を相続する)とみなされます。

また、脅迫などによって相続放棄をしたと認められた場合を除き、相続放棄の撤回はできません。不要な土地しかないと思って相続放棄したものの、後から多額の財産が見つかったとしても、放棄は覆らないため慎重に進めましょう。

さらに、相続人が受け取る死亡保険金と、死亡退職金に適用される「500万円×法定相続人の数」という相続税の非課税枠が相続放棄によって使えなくなります。死亡保険金と死亡退職金自体は受け取ることができますが、相続放棄によってこれらに相続税が課せられる可能性があることを頭に留めておきましょう。

相続を放棄した土地はどうなる?

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2

「土地の相続を放棄するデメリット」の項でも触れましたが、もし自分が相続放棄しても、他に相続人がいれば次の順位の相続人に相続権は引き継がれます。

それではもし、すべての相続人が相続放棄をした場合はどうなるのでしょうか?相続財産が法人化され、相続人の代表者による申し立てによって家庭裁判所が「相続財産清算人」を選ぶことになります。

「相続財産清算人」の選任方法

相続財産清算人の役割は、相続財産を管理し、清算して債権者に弁済したり、最終的には国庫に帰属させたりすることです。相続財産清算人選任の申し立ては、相続人の代表者の他、被相続人の債権者や特別縁故者といった「利害関係人」や検察官が行います。

申し立てに必要な費用は収入印紙代800円と連絡用の郵便切手、官法広告料5,075円(家庭裁判所の指示があってから納める)と、戸籍謄本などの取得に必要な費用で以下のような書類が必要となります。

□申立書
□被相続人の死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
□被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
□被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
□被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
□被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
□代襲者としてのおい・めいで死亡している人がいる場合、そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
□被相続人の住民票除票又は戸籍附票
□財産を証する資料(不動産登記事項証明書|未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
□利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(戸籍謄本|全部事項証明書、金銭消費貸借契約書写し等)
□相続財産清算人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票

 

相続財産清算人の申し立てには多くの書類が必要です。また、相続財産清算人には弁護士や司法書士が選任される場合が多く、彼らへの予納金や報酬としてトータルで20〜100万円程度の費用がかかります。

そのため、相続放棄をするかどうかも含めてよく検討し、他の相続人とも話し合っておきましょう。

相続放棄後も土地の保存義務は残る

相続財産清算人が選定されるまでは、相続人全員に土地の保存義務が残ります。相続放棄をしたからといって一切関係ない、と放置することはできないのです。更地や農地、山林などの土地が荒れて近隣の迷惑にならないよう、草刈りや片付けなど、適切なメンテナンスを行う必要があります。

保存義務を怠った場合

もし保存義務を怠って土地を放置し、不衛生な環境や害虫の発生によって近隣住民が被害を被った場合は、損害賠償を請求されてしまうケースも考えられます。

また、放置した土地に犯罪者や密入国者が住み着くなど、犯罪に巻き込まれるリスクもあります。何か事件が起きてしまったときに、保存義務者も取り調べの対象になったり、共犯を疑われたりする可能性があるため、注意しましょう。

保存義務が発生する期間

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産清算人が選定されて財産を引き渡すまで保存義務があります。家庭裁判所に相続財産清算人の選任申立てを行ってから選任されるまで、だいたい1~2カ月程度かかります。

土地を手放すことができる「相続土地国庫帰属制度」が2023年より創設

土地の相続を放棄したとしても責任がゼロになるわけではなく、相続財産清算人の選定には多いケースで100万円もの費用がかかることがわかりました。また、そもそも「土地は不要だが相続放棄まではしたくない」というケースもあるでしょう。

管理の難しい土地を相続することになった場合の選択肢のひとつに「相続土地国庫帰属制度」という制度があります。2023年4月施行の新しい制度で、正式名称を「相続などにより取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といいます。

「相続土地国庫帰属制度」とは

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2

法務省ホームページより引用

「相続土地国庫帰属制度」は、宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる新しい制度です。

この制度がスタートした2023年4月27日より前に相続した土地でも申請可能で、兄弟など複数人で相続した共同所有の土地でも共有者全員で申請することができます。ただし生前贈与を受けた相続人、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは対象外となります。

引き渡せる土地の要件

相続した土地であっても、すべての土地でこの制度が使えるわけではありません。引き渡せる土地には要件があり、以下のような土地は申請の段階で却下となります。

申請の段階で却下となる土地

・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

また、審査の結果、該当すると判断された場合に不承認となる土地もあります。

該当すると判断された場合に不承認となる土地

・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

申請にかかる費用

申請する際にはまず、1筆の土地当たり1万4,000円の審査手数料を納付しなければいけません。「筆」とは、登記上の土地の個数を表す単位です。

法務局による審査で承認されると、土地の10年分の管理費相当額の負担金を納付します。負担金は、宅地、田、畑などは1筆あたり20万円で、同じ種目の土地が隣接していれば、合算して2筆以上でも20万円とすることでできます。

一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金を算定するものもあります。算定式などは法務省のホームページで確認しましょう。

手続きの流れ

手続きはまず、法務局への相談からスタートします。相談は事前予約制で、法務局・地方法務局(本局)の窓口での対面相談、電話相談、WEB相談(2024年10/15〜)のいずれかの方法で受け付けています。

相談には、相続土地国庫帰属相談票、相談したい土地の状況についてのチェックシート、土地の状況等が分かる資料や写真を準備して臨みます。だいたい30分程度で、所有している土地を国に引き渡せそうか、作成した申請書類や添付書類に不備がないかなどの相談に対応してくれます。

次に、申請書類の作成と提出を行います。必要書類は以下の通りです。

新たに自分で作成する書類

・承認申請書
・承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
・承認申請に係る土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
・承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真

用意する書類

・申請者の印鑑証明書
・固定資産税評価額証明書(任意)
・承認申請土地の境界等に関する資料(あれば)
・申請土地に辿り着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
・その他相談時に提出を求められた資料

申請先は土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局で、支局・出張所には提出できません。窓口に直接持参するか、郵送も可能です。

申請書には審査手数料の額に相当する収入印紙を貼り、提出します。申請を取り下げたり、審査の結果、土地を引き取れないと判断されたりしたとしても審査手数料は返ってきません。

申請された土地を国が引き取れると判断した場合、帰属の承認の通知と負担金の納付通知が届きます。申請者は負担金額を通知到着から30日以内に納付します。期限を過ぎると国庫帰属の承認の効力が失われ、最初から申請し直さなければいけません。

負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転します。土地の所有者移転の登記は国が行うため、申請者が登記移転手続きをする必要はありません。

まとめ

2024年4月1日より相続登記の申請が義務化されました。土地や建物を相続したら法務局で相続登記をする必要があり、正当な理由なく3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が課されます。

相続を放棄するとしても3カ月以内に手続きする必要があり、どんな財産がどれくらいあるのか、他の相続人が存在するのかなどを、急いで調査しなければいけません。財産のこと以外にも、葬儀や片付けなど、親族が亡くなったときはとにかく忙しいもの。相続放棄する前に、その判断も含めて専門家に相談した方が無難でしょう。

土地の相続は放棄できる?放棄する場合の流れや注意点、活用したい制度について解説2

まだ依頼するかも分からないのに法律事務所に問い合わせるのは気が引ける…という方は、市町村役場などの自治体が開いている無料の法律相談を予約してみましょう。「何も分からないので、とりあえず相談したい」という方にもおすすめです。

最初は無料相談などを活用しつつ、相続トラブルが発生しそうなときや複雑な手続きになりそうなとき、調査や節税対策が必要なときは、専門家に正式に依頼すると力になってもらえるはずです。弁護士や税理士、司法書士にも得意分野があるため、不動産相続の実績が豊富なプロを探すと良いでしょう。

※この記事は2024年9月30日時点の情報をもとに作成しています

記事・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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