空き家の解体に補助金が出る!補助金額や対象、申請方法を解説

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公開日:2024年10月17日
更新日:2024年10月18日
空き家の解体に補助金が出る!補助金額や対象、申請方法を解説1

相続した実家や親族の家が空き家となっていて「今後も住む予定はないのでなんとかしたい」という方は多いのではないでしょうか。考えられる方法のひとつが更地にしての売却や土地活用です。しかし、空き家の解体費用は木造でも80〜150万円ほどかかり、鉄骨造やRC造であれば200万円を超えることも。少しでも負担を減らすために活用したい、空き家の解体に関する補助金と申請の際のポイントなどをまとめました。

空き家の解体に出る補助金とは

空き家の解体に補助金が出る!補助金額や対象、申請方法を解説2

空き家解体補助金の目的と背景

近年、空き家の増加が深刻な社会問題になっています。2023年度の「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万戸と過去最多に。、1993年から2023年までの30年間で約2倍にもなりました。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率も5.9%にものぼります。

空き家の解体に補助金が出る!補助金額や対象、申請方法を解説2

空き家が増えた原因は少子高齢化や人口の減少、都市への人口集中などと言われていますが、一般的には自宅を所有する高齢者が老人ホームに転居したり、亡くなったりしたあとに住む人がいなくなったというケースが多くみられます。

空き家は放置すると、庭に雑草が生い茂ったり害獣が住み着いて近隣住民に迷惑をかけたりするだけでなく、不法侵入や放火の原因になったり、老朽化が進むと倒壊の危険が生まれます。そこで2023(令和5)年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正され、空き家に対する行政の指導権限が強化されました。

さらに、空き家をより利活用しやすくするために、ネックとなる解体費用に助成が付けられています。これが「空き家解体補助金」です。空き家の解体によって地域の景観を守るという一面もあります。

補助金はどこから支給される?

空き家の解体・撤去については、国土交通省の「空き家再生等推進事業」により自治体に対して支援が行われています。空き家の所有者は、国交省から財源を確保し助成制度を設けた自治体に申請し、補助金を受ける形となります。そのため、財源は国と自治体ですが、支給は自治体からとなります。

一般的な補助金の種類

空き家の解体に活用できる補助金制度は自治体によって名称や補助金額が異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。

老朽危険家屋解体撤去補助金

老朽危険家屋解体撤去補助金は、老朽化によって倒壊の恐れがある空き家の解体を助成するもので、自治体の現地調査によって解体が必要と判断された空き家に支給されます。上限は100万円を目安として解体費用の1/5〜1/2程度。申請者の所得制限を設けている自治体もあります。

都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金

都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金はおもに街の景観を守る目的で交付される補助金で、空き家の解体後に景観形成基準を満たす土地利用をすること、という決まりがあります。

空き家解体撤去助成金

空き家解体撤去助成金は老朽化空き家などに当てはまらない、一般的な空き家の解体や撤去でもらえる助成金で、条件や補助金額は自治体によって異なります。

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空き家解体に使える補助金額の上限は?

空き家の解体に補助金が出る!補助金額や対象、申請方法を解説2

空き家解体の補助金上限額は100万円

空き家解体の補助金額は自治体によって異なりますが、上限は100万円が目安となります。しかし、それ以下の自治体も、補助金制度自体がない自治体もあります。

また、必ず上限まで支給されるわけではなく、かかった費用の何割か、もしくは上限額の安い方を支給、などとされるのが一般的です。自治体が決めた坪単価×空き家の延床面積を支給、というパターンもあります。

補助金の支給条件

補助金の支給条件も自治体によって異なりますが、一般的な条件には次のようなものがあります。

1年以上住んでいない

「空き家等対策特別措置法」で定められている空き家の定義に合わせた条件です。具体的には「1年以上利用実績のない家」で、人が住んでおらず、電気やガス、水道などのライフラインが使用されていない家ということになります。

新耐震基準を満たしていない

耐震基準は1981(昭和56)年6月1日に改正されており、それ以前に建てられた家のほとんどは現行の耐震基準を満たしていません。旧耐震基準で建てられた建物は倒壊の危険性も高いということで、解体の対象として設定されていることが多いのです。

老朽化していて倒壊リスクが高い

倒壊の危険性が高い、老朽化している建物も多くが補助金の対象となります。実際の老朽化の判定は自治体の現地調査によって行われます。

条件や工事内容は自治体によって異なるので要注意

ここまでで共通することが多い条件をお伝えしましたが、実際の運用ルールは自治体によって定められており、条件や工事内容も異なります。空き家の所在地である自治体のホームページ等で必ず確認するようにしましょう。

自治体ごとの空き家解体の補助金事例

それでは実際の空き家解体の補助金事例を見てみましょう。解体費補助金に限った話ではありませんが、いずれも助成の条件として「住民税など自治体に納める税金を滞納していないこと」が入っています。

埼玉県秩父市「秩父市空き家解体補助金」

埼玉県秩父市の「秩父市空き家解体補助金」は、市内の個人所有の住宅で、特定空家の勧告を受けていない空き家が対象です。1年以上空き家であり、1981(昭和56)年5月31日以前の建築などの条件があります。

対象となる工事費の最大1/3、市内業者が施工した場合上限30万円、市外業者が施工した場合上限20万円が助成されます。希望者多数の場合は公開抽選が行われ、外れた人は次年度優先されます。

東京都墨田区「老朽危険家屋除却費等助成制度」

東京都墨田区の「老朽危険家屋除却費等助成制度」は2016年に始まった助成制度で、住宅地区改良法に規定する「不良住宅」に該当する場合に、建物所有者に除却費が助成されます。助成金額は工事費の2分の1で、上限50万円まで、ただし無接道敷地に建てられた再建築不可住宅については上限100万円となります。

他に、管理不全のため危険な状態になっている建築物については、撤去後の土地を原則10年間区へ無償貸与することを条件にした助成金もあります。貸与した土地は消火器置き場やポケットパークなどに公共利用されます。こちらは上限200万円です。

静岡県浜松市「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」

静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」では、旧耐震などの条件は多くの自治体と同じですが、「申請日から過去3年間」と空き家である期間が長く設定されています。補助金額は解体費用の1/3で、最大50万円です。

鹿児島県鹿児島市「危険空き家の解体費に関する補助」

鹿児島県鹿児島市の「危険空き家の解体費に関する補助」は、危険空き家や1年以上使われていない空き家が対象で、塀や門扉、樹木の撤去は補助の対象外です。申請には事前協議が必要で、市役所の建築指導課に現況写真を持参します。補助金額は解体費用の1/3で、最大30万円です。

空き家解体補助金の申請方法と支給までの流れ

空き家の解体に補助金が出る!補助金額や対象、申請方法を解説2

空き家解体補助金を申請するためには、解体したい空き家が自治体の定める条件に合うかどうかを確認する必要があります。事前相談を受け付けている自治体もありますが、ホームページで確認してもよくわからない場合は電話で問い合わせてみましょう。

補助金申請に必要な書類一覧

申請に必要な書類は自治体によって異なりますが、基本は「土地や建物の詳細を証明する書類」「不動産の相続や所有を証明する書類」「解体工事の費用や内容を証明する書類」が必要となります。前項で紹介した埼玉県秩父市「秩父市空き家解体補助金」の場合は以下のように明記されています。

全員が提出する書類
□補助対象工事の見積書の写し
□1年以上居住その他使用がなされていないことの証明
□建物登記事項証明書又は家屋評価証明書
※建物登記事項証明書の場合は、建築年が確認出来るものであること
□現況写真・案内図
□未納税額のないことの証明

 

該当する場合に提出する書類
・相続人が申請する場合
□所有者が亡くなっていることを証する書類
□申請者が相続権を有することを証する書類
・所有者等が複数いる場合(所有権が共有されている場合)
□全ての所有者の同意を得ていることを証する書類
・[相続人が申請するとき]相続権を有する者が複数いる場合
□全ての相続人について相続人であることを証する書類(相続関係図)
□全ての相続人の同意を得ていることを証する書類
・所有権以外の権利が設定されている場合
□全ての権利者について権利を有することを証する書類
□全ての権利者の同意を得ていることを証する書類

 

上記を申請時に、解体工事完了後に実績報告書と以下の書類を提出します。

□補助対象工事の請負契約書の写し
□補助対象工事に要した費用の内訳を示す書類
□補助対象工事の領収書の写し又はこれに代わるもの
□解体後の現場写真
□廃棄物の処分に関する証明
□特定粉じん排出等作業を伴う建設工事に該当するか否かについての事前調査結果の写し

 

申請から支給までの流れ

大まかには以下のような流れとなります。

  • ①事前相談書類提出

  • ②申請書類提出

  • ③現地調査で交付の可否を判断、申請者に通知

  • ④交付決定通知を受け取ったら解体工事契約

  • ⑤解体工事

  • ⑥実績報告書類提出

  • ⑦交付確定通知を受け取ったのち、請求書類提出

  • ⑧支払い

自治体によっては事前相談がなかったり、実績報告の際に自治体職員による現地確認が必要になったりする場合があります。

申請にあたっての注意点

まず補助金の申請受付期間は自治体によって異なり、すでに受付が終了しているところもあります。まずは受付期間を確認し、受付終了している場合は次年度の助成を待つかどうか判断します。ただし、来年以降も必ず助成制度が継続しているとは限らず、条件や補助金額も変わる可能性があります。

申請時と補助金請求時には自治体の審査があり、どちらも数週間から1カ月程度かかります。補助金を申請する場合は審査期間をふまえたスケジュールを組みましょう。

さらに、補助金がもらえるのは解体工事終了後となります。工事費用はいったん依頼主が全額支払うことになるため、ギリギリの資金計画では支払いが苦しくなることがあります。助成制度が使えるといっても、余裕をもって解体費用を用意しておく必要があります。

空き家解体時の注意点

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土地の固定資産税・都市計画税の減免措置が受けられなくなる

空き家の解体に際しては、税金について注意しましょう。不動産の所有に対して毎年かかる固定資産税と土地計画税は、空き家を含めた住宅用の建物が建っている場合、土地に対する固定資産税は最大1/6、都市計画税は最大1/3に軽減されるという「住宅用地特例」があります。

空き家を解体することにより、この「住宅用地特例」が適用されなくなってしまい、課税額が増えてしまいます。空き家であっても残していた方が節税になるため、空き家が増えた一因にもなっています。そのため、2023(令和5)年にはこの部分も少し改正されました。

これまでは「危険な空き家(特定空家)」と勧告されたものが「住宅用地特例」解除の対象でしたが、「特定空家になる恐れがある空き家(管理不全空家)」も対象に加わりました。倒壊の恐れのある空き家に加えて、その予備軍として勧告された場合も軽減措置が使えなくなる、という訳です。

管理不全空家になる前に手を入れるか、解体しなければならないものの、あまりに解体を急ぎ過ぎ、更地としての所有期間が長くなると税金が高くなってしまいます。効率良く節税するためには、空き家解体後の土地活用や売却の準備も進めつつ解体のタイミングをはかる必要がある、ということになります。

空き家を解体せずに放置した場合のリスク

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遠方だからといって空き家を放置してしまうと、様々なリスクがあります。前項のような「危険な空き家(特定空家)」や「特定空家になる恐れがある空き家(管理不全空家)」と勧告された場合に税金が上がることもそのひとつですが、それ以外にも以下のようなことが考えられます。

枝のはみだし 庭木の手入れを怠ることで林家や道路に枝がはみ出して、建物を傷つけたり歩行者の通行を妨げたりすることになります。
不法侵入 壊れた窓などから出入りされることで、犯罪の原因になるなど周辺の治安悪化につながります。
景観の悪化 ごみの散乱や壊れた外壁などが放置されることで街の景観を損ねてしまいます。
害獣や害虫の発生 ネズミやハクビシンなどの野生動物が住みついたり、害虫が発生したりすることで不衛生な状態になります。
外壁落下 外装材や屋根などの破損を放置することで落下する危険があります。
倒壊 あまりに建物が傷んでしまうと倒壊する危険があります。

 

特に⑤⑥は近隣住民や通行人にけがを負わせるおそれがあり、最悪の場合は命の危険にもつながるため、できる限り迅速な対処が求められます。

解体後の土地の再活用アイデア

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住宅や商業用地としての活用例

土地を解体したあとの再活用には、売却の他にも様々な方法があります。立地によっては固定資産税などを節税しつつ、土地活用によって収益を上げることも可能です。

自己資金があまりない場合は、需要の高い場所であれば土地を貸すことや、駐車場経営、トランクルーム経営などが考えられます。ある程度まとまった投資が可能であれば、コインランドリーの経営やアパート・マンションを建てて賃貸経営を始めることもできるでしょう。

商業地区であればコンビニエンスストアなどの店舗を、地域貢献を考えるのであれば保育園や医療施設の建設も候補として挙がってきます。信託会社や信託銀行に土地を託して運用してもらい、収益の一部から配当金を受け取る「土地信託」という活用方法もあります。

ある程度広い土地で、郊外などで宅地としての需要がなければ太陽光発電や資材置き場などとして使うこともできます。

土地活用は立地や広さによって実現可能かどうかが変わってきます。目的もそれぞれ違うため、ふさわしい方法を選びましょう。

公共施設としての再開発

所有している土地の売却や活用が難しく、手放したい場合は「相続土地国庫帰属制度」の利用も考えられます。これは相続などで取得した土地を、一定の負担金を納付して国に引き渡せる制度です。引き渡した土地は国有地として公共施設や防災施設などに利用されます。

負担金は原則として一筆20万円で、この制度が使える土地には、更地であることや土壌汚染されていないことなどの条件があります。

また、「相続土地国庫帰属制度」が使えなくても、自治体が独自に寄付を受け付けたり、買い取ったりしてくれるケースもあります。売却が難しい場合は相談してみても良いでしょう。

まとめ

空き家の解体に使える助成制度についてまとめました。繰り返しになりますが、助成制度は自治体によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。

空き家は解体して終わり、ではなく、その後どうするかも含めて長期的に考える必要があります。場合によっては空き家を残したままの方が活用できたり、収益を生んだりするケースもあるため、解体のタイミングもふさわしい時期を見極めましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年10月15日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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