「省エネ性能表示制度」が2024年4月からスタート!不動産情報サイト各社の対応など最新状況は?

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公開日:2023年10月11日
更新日:2024年5月15日
「省エネ性能表示制度」が2024年4月からスタート!不動産情報サイト各社の対応など最新状況は?1

2024年4月施行予定の「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」に先立って、2023年9月25日に国交省からガイドラインが発表されました。同時に主要な不動産ポータルサイトであるSUUMO、アットホーム、LIFULL HOME’Sも省エネ表示についてニュースリリースを発表。賃貸住宅に関する部分を中心に、表示制度の概要と各社の発表内容を見てみましょう。

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「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」とは?

「省エネ性能表示制度」が2024年4月からスタート!不動産情報サイト各社の対応など最新状況は?2

省エネ性能表示の前提となる目標は「2050年カーボンニュートラルの実現」

まず、前提となっているのが国の掲げる目標「2030年の温室効果ガス46%減(2013年度比)」と、さらにその先の「2050年カーボンニュートラル」です。なかでもCO2排出量全体の約3分の1を占める住宅・建築物のエネルギー消費・CO2排出の削減を目的に、2015年に「改正建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)」が施行されました。

その一環として2024年4月から建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度が強化されることとなり、その具体的な運用等の詳細を示すガイドラインが公表された、という経緯です。

省エネ表示は「努力義務」。その対象となる建築物は?

2024年4月から、建築物の販売・賃貸を行う事業者は、新築建築物の販売・賃貸の際に所定のラベルによって省エネ性能を表示することが必要となります。

これはあくまで「努力義務」とされていますが、販売・賃貸事業者が告示に従って表示していないと認められたときは、勧告・公表・命令などがなされます。

「省エネ表示」の対象は「2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物、及びその物件が、同時期以降に再販売・再賃貸される場合」で、賃貸住宅も対象に含まれています。

「省エネ性能表示制度」が2024年4月からスタート!不動産情報サイト各社の対応など最新状況は?2

対象外となる建築物は、販売・賃貸する用途ではない注文住宅やウィークリーマンション、民泊施設など。古いアパートで省エネ性能が分からない場合も努力義務の対象からは外れますが、窓や給湯機の改修など省エネ性能向上のための取組をおこなった場合の表示方法が、これから検討されるようですので、注視しておきましょう。

省エネ性能ラベルに表示する要素は?

省エネ表示のラベルは建物の種類(住宅(住戸/住棟)、非住宅、複合建築物)、評価方法(自己評価、第三者評価)、再エネ設備のあり/なしで種類が異なります。

例えば住宅(住棟)で第三者評価ありの場合、ラベルでは以下のような項目が表示されます。

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出典:新しい「建築物の省エネ性能表示制度」が始まります!|国土交通省

①再エネあり/なしーー再エネ設備(太陽光発電・太陽熱利用・バイオマス発電等)が設置されている場合
②エネルギー消費性能ーー省エネ指標(BEI)を、星の数で表示
③断熱性能ーー「建物からの熱の逃げにくさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」
④ZEH水準ーーエネルギー消費性能が★3つ、断熱性能5以上で達成のチェックマーク
⑤ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)ーー年間のエネルギー収支がゼロ以下で達成のチェックマーク
⑥自己評価・第三者評価 ⑦建物名称 ⑧評価日

不動産情報サイト各社の省エネ性能表示に対する取り組みは?

物件掲載数No.1のSUUMOの場合

(株)リクルートが運営する不動産情報サイト「SUUMO」では、2024年4月より新築住宅の省エネ性能表示を開始する、と発表しました。

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出典:リクルートの運営する物件掲載数No.1(※1)不動産情報サイト『SUUMO』2024年4月より新築住宅の省エネ性能表示を開始|リクルート

掲載物件数が最も多く※、編集長は国土交通省の検討会の委員も務めることから、省エネ表示制度の周知にも力を入れているSUUMO。発行する「SUUMOジャーナル」や情報誌での省エネ性能に関する情報発信や、事業者に向けた省エネ性能に関する勉強会等も実施しています。

※不動産・住宅ポータルが掲載する「賃貸」 、「新築/中古マンション」 、 「新築/中古戸建て」 「土地」の物件数日本全国総計 2022年7月時点 (株)東京商工リサーチ調べ

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ちなみに同社の調査によると、「ZEH」「省エネ」という文言がある賃貸物件の2019年度の掲載数を100とした場合、2022年度には360.8%にも増加。「ZEH」「省エネ」という文言がある賃貸物件は、文言がない物件よりも一物件あたり1.8倍も問合せが多いことが分かりました。

さらに、賃貸居住者の74.0%が断熱性・気密性に何らかの不満を感じており、「家賃が上がってもZEH賃貸住宅を検討したい」と答えた人が約2割いました。

アットホームも2024年4月から省エネ性能ラベルを表示

アットホーム(株)が運営する「不動産情報サイト アットホーム」も、2024年4月より省エネ性能ラベルの表示を開始することを発表しました。また、2024年秋頃には、物件詳細ページ内の物件概要欄で、省エネ性能に関する詳細表示を予定しています。

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出典:2024年4月「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」の開始に伴い、「不動産情報サイト アットホーム」にて表示を開始|アットホーム

同社は6月に検討層を含む住宅購入者への調査を実施。「省エネを意識して住まいを探しましたか?」という質問には購入経験者で49.5%、検討者では70%もの人が「はい」と回答。

省エネに関する理解度については、「理解していて、人に説明できる」と「理解はしているが、人に説明できない」の合計が「BELS※」 で約2割、「ZEH」で3割強、「HEMSもしくはスマートハウス」で約4割でした。しかし「聞いたことがあるが、理解はできていない」という回答も含めた認知度は、「ZEH」では約6割になります。

※BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物省エネルギー性能表示制度の略称。建築物省エネ法第7条に基づき建築物の省エネ性能を表示する第三者認証制度の1つで、建築物の一次エネルギー消費量に基づきBELS評価機関が5段階で評価し、省エネルギー性能を表示する

LIFULL HOME'Sは業界内での住宅における省エネの認知度や賛否を調査

(株) LIFULLが運営する「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」は、今回の省エネ性能表示の努力義務の対象である不動産事業者に「住宅における省エネの取り組み」に関する認知度調査を行いました。結果を以下に抜粋してご紹介します。

Q.2050年までにカーボンニュートラル実現を目指す取り組みについてどのようにお考えですか?
積極的に推進すべきだと思う 41%
どちらかと言えば推進すべきだと思う 47%
あまり推進する必要を感じない 8%
まったく推進する必要を感じない 4%

 

Q.過去1年以内に、貴社の現場の販売または賃貸担当者は、消費者(エンドユーザー)から、取り扱う物件の省エネ性能や断熱性能などについての質問をどの程度受けましたか?
頻繁に質問を受けている 5%
質問を受けることはあるが多くはない 26%
質問を受けることはほとんどない 69%

 

Q.今後、不動産広告において省エネ表記が義務化されるとした場合、どのように思われますか?
賛成 15%
どちらかというと賛成 51%
どちらかというと反対 25%
反対 9%

 

不動産会社の約9割がカーボンニュートラルの推進に対して前向きである一方で、消費者からの質問を受ける事はまだ少ないようです。省エネ表記の義務化に対しては約7割が肯定的ですが、賛否両論のようです。否定的な理由としては「現場の手間がかかるから」「社内の教育に時間を要すから」などがありました。

LIFULL HOME’Sでは、主に売買物件を取引する事業者に向けて省エネ基準義務化についての勉強会を行っています。同社サイトやアプリの物件広告も、省エネ、再エネの性能を表示する仕様に改修の予定だとのことです。

まとめ

各社の調査によると、省エネ性能に関する意識はユーザーレベルでも高まりつつあるものの、不動産仲介の現場にまではまだまだ浸透しきっていないようです。しかし、2024年4月からの省エネ性能のラベル表示により、認知への取り組みは今後加速していくでしょう。

「省エネ性能表示制度」が2024年4月からスタート!不動産情報サイト各社の対応など最新状況は?2

省エネ性能の基準はこれからも段階的に引き上げられる予定で、新築についてはスタンダードなものとなっていきます。中古物件についても、省エネ性能向上のためのリフォーム履歴等を表示する方法が検討されるようです。

将来を見通した賃貸経営を考えるうえで、所有物件の省エネ化は避けて通れないものになりそうです。現在、賃貸住宅を対象に含む補助金制度などもありますので、キャッシュフローも考えたうえで、リフォームや建て替えを検討してみてはいかがでしょうか。

※この記事内の情報は2023年10月10日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

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