首都圏エリアの問合せ増加率1位は「京急空港線」！空路へのアクセスに注目が？

首都圏（東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県）で、沿線賃貸物件への問合せが前年から増加した鉄道路線ランキングは、以下のような結果となりました。

千葉を走る「JR成田線」と東京都・神奈川県を走る「東急目黒線」以外はすべて東京都が路線エリアとなります。

1位は「京急空港線」で、駅別の前年比は「天空橋（前年比191.7%）」「穴守稲荷（前年比121.1%）」「大鳥居（前年比130.1%）」「糀谷（前年比119.3%）」「京急蒲田（前年比117.3%）」となりました。

航空会社の従業員や空港職員が多く住む「京急空港線」。コロナも収まり、航空需要が復調（2023年1～6月の羽田空港の旅客数は約3,671万人で前年同期比192.8％）。調査では、空港関係者の就業体制が戻りつつあることが問合せ増加の一因と推察しています。

2位「東京メトロ銀座線」は全19駅中16駅で問合せ数が前年より増加。都心回帰の動きを反映したものになっています。賃料相場が上昇している都心部のなかでも、「浅草（前年比138.3%）」「田原町（前年比133.8%）」「神田（前年比138.6%）」など、比較的家賃が安い城東エリアの駅で問合せ数が増えています。

近畿圏エリアは「JR奈良線」ほか大学付近を通る路線が上位に

近畿圏（大阪府、京都府、兵庫県）では、以下のような路線が沿線賃貸物件への問合せが増加しています。

首都圏の上位路線がほとんど都内だったのに比べ、近畿圏ではTOP10のうち7路線が京都府エリアを走る路線でした。京都府には大学のキャンパスが多く存在していることと関連がありそうです。

例えば、京都大学と京都工芸繊維大学の学生が多く住む駅のある2位の「叡山電鉄叡山本線」はじめ、沿線に同志社大学の今出川キャンパスや京都府立大学、京都工芸繊維大学がある「京都市営地下鉄烏丸線（6位）」、立命館大学衣笠キャンパス近くの「京福電気鉄道北野線（7位）」など。

大阪府でも同様の動きが見られ、リモート講義が通学に切り替えられつつあり、学生が大学の近くに住むようになってきたと考えられます。

1位の「JR奈良線」については2023年3月に一部を複線化したことで全線の所要時間が最大6分短縮した他、朝のラッシュ時の増発が行われました。JR奈良線と並行して走る「近鉄京都線（10位）」では27年ぶりの運賃値上がりもあり、JR奈良線と近接する駅で問合せ数がダウンしています。

中部圏エリアは単身世帯が増加中の大垣市を通る「養老鉄道」が1位

続いて中部圏で問合せが増えている鉄道路線を見てみましょう。上位10位は以下のような結果となりました。

1位が岐阜エリア、2位-10位が愛知エリアを走る路線がランクインした中部圏エリア。1位の「養老鉄道」は沿線への問合せのうち約52%を大垣市内の駅が占めており、大垣市内の駅に限ると前年比158.5%という伸びを見せました。大垣市の単身世帯数の増加が、沿線の賃貸需要に反映したようです。

2位の「名鉄瀬戸線」は金城学院大学、6位の「愛知高速東部丘陵線」は愛知学院大学、9位の「名古屋市営名城線」は名古屋大学や南山大学に近い駅がそれぞれ沿線にあることから、近畿圏同様にリモート講義縮小の影響が表れています。

まとめ

首都圏では通勤による就業体制への変化や単身者を中心にした都心回帰、近畿圏・中部圏ではリモート講義の縮小による大学付近の駅への注目度が表れた今回の調査。新型コロナウイルス流行下での生活が、徐々にコロナ前に戻りつつあることを反映しているようにも見えます。

賃貸ニーズの変化には様々な要因がありますが、路線という横軸と、前年からの増加という時間軸で見てみると、短期的な人の動きが分かります。大家さんにとっては今後も要注目の調査です。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年10月25日時点のものです。

文／石垣 光子

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