高まる「ペット可賃貸」へのニーズ。運営のポイントや差別化のコツ、トラブル防止のノウハウを解説
コロナ禍でペットを飼い始める人が増えたこともあり、ペット可賃貸物件のニーズに対して供給が追い付いていない状況が続いています。空室対策として、物件のペット可への変更を検討している賃貸オーナーもいるかもしれません。しかし、単にペット可とするだけでは根本的な解決にはなりません。賃貸住宅でペットを飼っている人のニーズや困っていること、ペット可物件で気をつけたいポイントなどをまとめました。
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賃貸住宅でペットを飼っている人が同意した条件は?
まず、賃貸住宅でペットを飼っている人はどのような条件で住まいを決めているのでしょうか。(株)AlbaLinkが2023年10月に行ったアンケートによると、飼っているペットの種類は犬、猫、ハムスター、鳥、うさぎがトップ5で、賃貸契約の条件については以下のような結果となりました。
ペットを飼うための賃貸契約における条件 | |
1位 | 初期費用の増額 |
2位 | 家賃の増額 |
3位 | 退去時の原状回復 |
4位 | 飼育数・種類の制限 |
5位 | ペットの写真・証明書を提出 |
契約条件で最も多かったのは「初期費用の増額」
契約条件の1位となった「初期費用の増額」についての具体的な内容は、「敷金を通常の2倍支払った」「礼金を増額」「敷金とは別に家賃1カ月分相当額の契約金」というもの。
敷金は退去時の修繕費に充てられるため、ペット可物件では高めに設定するケースがほとんど。飼育する場合は、しない場合の敷金にプラス家賃1カ月分が相場のようです。
2位は「家賃の増額」ですが、内容はペットの種類や数によっても幅があります。「家賃+5,000円」や「ペットを飼う場合は+3,000円」と数千円高いなか、「1匹までは賃料に含まれるが、2匹目以降は賃料に加算」というケースも。
ドッグスパ(足洗い場)が設置されているなど、もともとペットと暮らすことを想定してつくられている物件は、ペット不可物件より家賃が高く設定されています。ペット可物件であってもペットを飼っていない人が住んでいることもあるので、その場合には家賃はそのまま、飼うなら家賃増額という設定方法もありました。
賃貸住宅でペットを飼っている人が気にしていることは?
賃貸住宅でペットを飼う際には心配ごとも多く、具体的には次のようなことで悩んでいる人が多いようです。
賃貸でペットを飼う際に感じた悩み | |
1位 | 騒音トラブルが心配 |
2位 | 室内に傷や汚れをつけてしまう |
3位 | 臭いが気になる |
4位 | 他の飼い主・ペットが迷惑 |
5位 | 動物嫌いの住人がいる |
実際にクレームに発展したことも
1位はやはり騒音問題で、「犬に留守番させている間に吠えていないか気になる」「犬が走る音が周りに迷惑になってないか気になる」という声が挙がっていました。ハムスターが夜中に回し車で遊ぶ音に対し、隣人から静かにしてほしいと言われた人もいます。
5位の「動物嫌いの住人がいる」についても、同じマンションの住民から「一緒にエレベーターに乗らないでくれ」と言われたというコメントがありました。途中でペット可物件に変わったなどの理由で、ペット飼育者と動物嫌いの人が同じ建物に住むのは、双方にとって大きなストレスとなります。
建物に傷をつけてしまうという悩みが2位で、特に多いのは猫の爪とぎ。「うさぎが木製の扉をかじってしまった」「犬の排泄の失敗でフローリングの色が変わってしまった」という声もありました。
3位の臭いについては、「臭いが部屋に染みついて退去時に大変そう」と「臭いが周りの迷惑になっていないか」の2パターンに分けられます。
「ハリネズミの臭いが壁などに染みついてしまったので、退去時に苦労した」「亀はどうしても独特な臭いがするので、建物の構造によっては異臭騒ぎになることがある」というコメントもあります。
犬や猫などであれば、ある程度は賃貸オーナーも被害の想像ができますが、ハリネズミや亀の臭いはイメージしづらいですね。その他にも珍しいペットの場合は、判断が難しくなりそうです。
ペット可賃貸の運営で注意したいポイントは?
ペットを飼っている入居者の条件や困りごとをふまえて、賃貸オーナーはどのようにペット可物件を運営するべきでしょうか。
お金に関する決め事は契約時に
ペットを飼っている入居者とオーナーの両者が心配しているのが、退去するときの修繕費の問題。過去には実際に訴訟に発展した例もありました。
壁や床などの修繕は高額になることも多いため、あらかじめ敷金など初期費用を高めに設定することはよくあります。併せて、敷金償却や敷引きの特約なども結んでおくと良いでしょう。
さらに、契約段階で退去時に支払う清掃費をあらかじめ決めておくと安心です。「初期費用を高くすると入居者が集まらないかも」と心配に思う賃貸オーナーもいるかもしれません。しかし、あらかじめ伝えることで準備ができるのは、入居者にとってもメリットとなります。
ペットの種類や頭数、条件を契約時に決めておく
アンケートにもありましたが、珍しい動物の場合は臭いや傷などについて判断が付きづらく、ペットが原因の傷であっても修繕費の請求等が難しい可能性が考えられます。
また、蛇やサソリ、毒のある動物はもし逃げた場合、近隣全体を巻き込んだ騒ぎになる恐れも。犬や猫であっても、頭数が多くなりすぎると、傷や汚れが増えて修繕が広範囲になってしまいます。
「多頭飼い崩壊」といって猫が部屋の中だけで繁殖し、何十匹にも増えてしまう例も発生しています。そうならないための去勢・不妊手術は、持ち家・賃貸住宅にかかわらず飼い主の義務ですが、契約条件にも加えると良いでしょう。トラブルを避けるためには、ペットの種類や頭数、条件についてあらかじめ決めておく必要があります。
ペットを飼っている人に嬉しいプラスアルファで競合と差別化
ペットを飼っている人は、家探しの経験を重ねるうち、敷金や家賃が高くなることにはある程度納得しているといえます。
しかし「ペット可」というだけで、他に根拠のない、足元を見るような家賃設定では、周辺のペット可物件に負けてしまいます。今後は賃貸住宅でもペット可物件が増えることが予想されるので、どんどん賃貸市場で戦いづらくなっていくでしょう。
そのため、ペットを飼っている人に喜んでもらえるような仕様が差別化につながります。具体的には次のような工夫が挙げられます。
ペットを飼っている人の悩みで2位に入っている「傷や汚れ」は耐摩耗性、撥水性の高い床材に変えることで対応可能。さらにクッション性があればペットの足に優しく、足音が響くのもある程度は防いでくれます。床そのものを張り替えるのは高額になるため、上からリフォーム材の床材を貼る方法が有効です。退去時の取り替えもしやすく、費用が抑えられます。
壁はペット用の腰壁シートを貼る方法があります。部屋のデザイン性も上がるため、差別化しやすいというメリットも。床も壁も抗菌・防臭の効果がある商品が出ており、ニオイ対策にもオススメです。
傷やニオイ対策はいわば守りの工夫ですが、積極的にペットのための設備を設置することで、家賃アップが期待できます。例えば、犬であればエントランスのドッグスパや広めの洗面シンク、猫であればキャットステップ・キャットウォークを造作するなどです。
ペットと暮らすリッチな入居者層に響く間取り、内装などにも気を配るとさらに良いでしょう。
まとめ
賃貸物件でペットを飼っている人は、物件探しで苦労することが多いため、一度住み始めると長く住む傾向があります。安定した収益を得ていくためにも、ペットを飼う人をターゲットにした賃貸住宅づくりに取り組んでみるのもひとつの有効な方法です。
賃貸市場でこれからもニーズが拡大していくとみられるペット可物件。ペットと共生できる環境づくりから考えることで、賃貸経営にも大きな発展が望めるかもしれません。規約や条件づくりなど、一度不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。
※この記事内の情報は2023年11月21日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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