寄せられる相談は毎年1万件以上!「賃貸住宅の原状回復トラブル」最新事情
賃貸経営でしばしば起きるのが、退去時の原状回復についてのトラブル。(独)国民生活センターに寄せられた相談や、過去にトラブルを経験したことのある人へのアンケート調査から、最近の事例を中心にご紹介します。いざ発生しても落ち着いて対応できるように、大家さんもよくあるトラブル内容を把握しておきましょう。
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毎年1万件以上寄せられる「原状回復トラブル」相談
(独)国民生活センターには、毎年3万件以上も賃貸住宅のトラブルに関する相談が寄せられています。そのうち、原状回復に関するものが約4割を占めます。
「借り主が賃貸住宅を退去する際に敷金が返金されない」「敷金を上回る金額を請求された」などといった相談が、2022年で12,856件、2021年は14,111件、2020年は13,364件寄せられました。
最近の事例には以下のようなものが紹介されています(抜粋)。
●賃貸マンションの入居時にルームクリーニング代を支払った際、「退去時のルームクリーニング代は不要」と言われたにもかかわらず、退去時に請求され納得できない。
●賃貸アパートを退去後、原状回復費用の清算書が届いた。入居時から傷ついていた床等の原状回復も求められ納得いかない。
●10年以上住んだ賃貸アパートを退去したらクロスの張替えなど高額な原状回復費を請求された。
●6カ月居住した賃貸アパートを退去した。玄関の壁紙のわずかな傷で全面の張替え費用を請求され不満だ。
●管理会社の了解を得て賃貸マンションの光回線工事をしたが、退去時に、工事は許可していないと言われ、原状回復費用を請求された。
国民生活センターでは、「消費者へのアドバイス」として契約する前に契約内容の説明をよく聞き、契約書類の記載内容をよく確認することや、入居時は賃貸住宅の現在の状況をよく確認し、記録に残すことなどを推奨しています。
トラブルで最も多かったのが「室内の傷・汚れを指摘された」
続いて、(株)AlbaLinkによる「賃貸物件の退去時トラブルランキング」を見てみましょう。賃貸物件の退去時にトラブルを経験したことがある人304人にアンケート調査を行っています。
1位 | 室内の傷・汚れを指摘された |
2位 | 元々あった傷・汚れを指摘された |
3位 | 経年劣化の傷・汚れを指摘された |
4位 | 予想より修繕費が高かった |
5位 | 設備の破損・故障を指摘された |
6位 | 敷金が返ってこなかった |
7位 | 契約とは違う請求があった |
1位は「室内の傷・汚れを指摘された」で、具体的な内容には次のようなものがあります。
●子どもが襖に落書きしていたため、請求されることはわかっていました。「すべてが汚い」と言われました。
●壁にヒビが入っていたので修繕費を請求された。
●カーペットに凹んだ部分があったので、交換費用を請求された。
室内の傷については、入居者が自覚していることも多く、請求額が適切であればトラブルにはなりにくいようです。しかし、指摘が細かすぎたり伝え方が高圧的であったりした場合は、入居者の感情を害してしまい、トラブルに発展することも。中には「『こんなに汚く使う人は初めて』と嫌味を言われて落ち込んだ…」という人もいました。
元々あったものや経年劣化の傷や汚れについての指摘もトラブル上位に
2位は「元々あった傷・汚れを指摘された」、3位は「経年劣化の傷・汚れを指摘された」で、本来支払い義務がないものについて指摘されたという内容。フリーコメントを抜粋すると以下のようなものがありました。
●入居時に報告していたにもかかわらず、入居開始時から壊れていたキッチンの修繕費用を請求されました。
●壁紙が変色していたので修繕費を要求された。自分が住み始めたときにはすでに変色していたため、不満が残った。
●入居時からついていた床の傷に対して「修繕費が必要」と言われた。
●エアコンが経年劣化でかなりガタがきていて、退去時に「取り替え工事の費用と新品の購入価格を代わりに払ってくれないか」と言われた。
●壁紙の経年劣化による変色など、支払い義務がないものを請求されてしまった。後日不動産会社に勤めていた友人に話したところ「払わなくてもいいのに」と言われ、悔しい思いをしました。
●明らかに経年劣化なのに交換費用を請求された。
入居時に管理会社に報告していたのに手違いで請求されてしまうケースや、経年劣化や通常損耗の範囲内での傷や汚れに関して修繕費を請求され、揉めた人も。
経年劣化や通常損耗の範囲を判断するのはなかなか難しく、管理会社と入居者で認識にズレがある場合、トラブルに発展しがちです。
ちなみに北海道では、冬に退去した場合は敷金を返金しない(冬期解約条項)というローカルルールがあります。契約によっては冬季の退去に違約金が発生する場合もあり、このローカルルールを知らずに驚いた人もいました。雪が降る冬は新しい入居者を見つけるのが難しいために設けられたルールのようです。
退去時トラブルの対処法1位は「請求額通り払った」
実際に起きたトラブルにどのように対処したかを聞いたところ、次のような結果となりました。
1位 | 請求額通り払った |
2位 | 交渉・抗議して支払わなかった |
3位 | 第三者に相談した |
4位 | 交渉・抗議したが請求通り払った |
5位 | 交渉・抗議して減額してもらった |
1位は「請求額通り払った」で、3割を超えています。フリーコメントでは以下のような声が。
●大きな額ではなかったので支払いました。
●敷金では足りず、20~30万円ほど上乗せして請求された通りの金額を支払いました。言われるがまま支払ってしまい、10年以上経過した今思い出しても悔しいです。
●当日現金一括で支払った。時間がないのと知識がないのとで、言われた通りの金額を渡した。
時間や知識がなく払ってしまった、という人が多く、釈然としない気持ちを抱えているケースもあるようです。
「交渉・抗議して支払わなかった」「したが払った」という人も
2位以下のフリーコメントを抜粋すると、以下のようなものがありました。
●入居時点で跡に気づいていたので、スマホで写真を撮っていた写真を見せて、支払わずにすみました。
●担当者では話にならなかったので、「生活しているとつくもので、故意ではない」と本社に連絡し、請求を取り下げてもらった。
●弁護士に相談して、支払いなしで和解した。
●抗議したが聞き入れてもらえなかったので、泣き寝入りしました。
●各設備の耐用年数や原状回復のガイドラインについて話したら、請求額が大幅に減り、納得できる金額の支払いですみました。
自分で交渉して支払わなかった人、交渉はしたものの払った人、減額になった人など様々。3位「第三者に相談した」方々は、「家族や知り合い」「弁護士や行政書士」「国民生活センター」などに相談しているようです。
まとめ
「賃貸物件の退去時にトラブルが生じたこと」で受けた最も大きな影響について聞いてみたところ、TOP3は「金銭的損失」、「精神的ストレス」、「時間の浪費」でした。
原状回復トラブルは賃貸オーナーにとっても悩ましい問題。双方にとって損失やストレスにつながるため、貸す側も借りる側も、責任の所在についての共通認識を持つことが肝心です。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をしっかり把握し、理解を深めておくようにしましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年12月20日時点のものです。
文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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