大家が知りたい「家賃アップ」のキホン~適切な手順とタイミングを解説!
- 市況・マーケット
近年、家賃が上昇傾向にある賃貸市場。しかしながら、家賃アップに踏み切る勇気がないオーナーも多いのではないでしょうか? そこで家賃をスムーズに上げるタイミングや手順を、自身も大家さんであり、管理会社を営む渡辺よしゆきさんにうかがいました。
管理会社「みまもルーム」代表。8 棟を経営する大家さんでもある。著書に「新米大家VS おんぼろアパート赤鬼荘」。
インフレで経費増の今は、据え置き家賃の値上げどき
昨今のインフレで世の中のさまざまな物価が上がり続けています。それにともなって、新築はもちろん、既存の賃貸住宅の家賃も上昇しているようです。
家賃アップはオーナーにとって切実な問題。物件維持費の支出が増えているのに家賃が長年据え置きでは、経営を圧迫しかねません。内心では「そろそろ家賃を少し上げたいのだけれど」と思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、家賃アップに踏み切ったオーナーはまだ多いとは言えないようです。家賃の上げ方がよくわからなかったり、「値上げ交渉が引き金となって、退去されては元も子もない」という不安な気持ちが躊躇させたりするのでしょう。
実際、無謀な賃上げは空室期間が長引いてしまったり、入居者の退去や拒否につながりかねません。どうすれば、スムーズに家賃アップを実現できるのかみていきましょう。
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類似物件の家賃と比較し、適正な家賃を把握しよう
入居者に家賃アップの交渉をする場合は、単なる値上げではなく、増額にいたる根拠が必要になります。
「まずは周辺の家賃相場と比較して、現在の家賃が適正かどうかを知ることから始めましょう。同じエリア内で、自分の物件のスペックと類似している競合物件をいくつかピックアップして、家賃を比べてみてください」と渡辺よしゆきさんは語ります。
具体的には、駅からの距離や間取り・平米数・築年数・構造、必要なら日当たりやペット可か不可かなどのプラス・マイナスになる要素も加味すると良いでしょう。
「特に重要なのは駅からの近さと部屋の広さですね。そこから家賃相場を把握したら、自分の物件の現在の家賃が妥当であるかが検証できます。大切なのは自分の物件を贔屓目に見ないこと。たとえば新築ではいくらの家賃なのかなど、自分の物件よりも良い条件のところと比較して、増額できるかどうかを判断してもいいと思います」(渡辺よしゆきさん)
家賃はいくらが妥当? 周辺相場の調べ方
不動産情報ポータルサイトを活用して、近隣で家賃設定が似ている物件を検索。自分の物件スペックと同じ条件を入れ、10 件くらいになるまでピックアップしてみましょう。そうすれば自分の物件の家賃相場が見えてくるはず。
繁忙期後の物件は空室が埋まらずに家賃を下げている可能性があるので、できれば繁忙期の2~ 3 月の家賃相場を参考に適正な増額を検討しましょう。
ポイント
①「駅からの近さ」「平米数」「構造」が類似する近隣物件の家賃と比較する
②繁忙期の2~3月の家賃を目安にする
家賃相場をはじめ、空室率・公示地価・人口推移・入居検討者が希望する間取り・家賃などが、全国の市区群ごとに検索できる情報サイト。
https://toushi.homes.co.jp/owner/
正当な値上げであれば退去リスクは高くない!
家賃相場を調べるときは、「SUUMO」などのポータルサイトを利用すると便利です。所有物件の家賃が周辺の競合物件と比べて低く、増額が妥当だと判断できたら、新たな賃料を決めます。入居中の部屋であれば入居者との交渉に向けて準備を進めましょう。増額率は、現在の家賃が相場よりかなり安い場合を除き、家賃の5%~10%が妥当なところです。
ちなみによしゆきさんは、電気料金や修繕費用の値上がりなど、昨今の経費を根拠に、共益費に上乗せする方法を取っているそう。
「家賃アップによる退去リスクを心配する必要はそれほどありません。入居者にとっては退去して引っ越すとなると、けっこうな費用がかかります。私の経験からいうと、適切な値上げであれば、多少家賃が上がっても住み続けるほうが得だと判断し、受け入れてくれるケースがほとんどですね」
賃料改定は更新時がおすすめ! 早めに伝えて丁寧な説明を
入居中の家賃アップ交渉は、どのタイミングで行うといいのでしょうか。賃料改定の時期についての法的な規定はありませんが、よしゆきさんは契約更新と合わせた方が交渉を進めやすいといいます。
「ただし、急に家賃の値上げを通告しても、入居者は気持ちよく合意できません。入居者に家賃アップを受け入れるかどうかを判断してもらうための時間を設けることが大切です。契約更新の半年前から準備をし、4カ月前には更新のお知らせとともに、文書で家賃値上げの通告をしましょう」
家賃アップをスムーズに成功させるために、入居者から問い合わせがあれば、値上げする正当な理由を丁寧に説明しましょう。そして、遅くとも契約更新の1カ月前には承諾を得るようにしたいものです。
契約更新のタイミングで家賃を増額する流れとポイント
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START! 6カ月前
周辺相場と比較して増額を判断
周辺の家賃相場を調べて家賃が適正かどうかを判断。管理会社に相談しても良い。
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4か月前
入居者に増額を告知して、問われれば根拠を説明
契約更新のお知らせとともに、電気代・修繕費の高騰などを理由に家賃増額の案内をポスティング。入居者から問い合わせがあれば、周辺の家賃相場との乖離など根拠を丁寧に説明する。
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1カ月前
期限を決めて入居者から返答をもらう
返答をもらう期限を、更新後の家賃引き落とし日を目安に逆算して決めると良い。家賃保証会社への連絡は、たとえば5月末更新の場合、4月末までに返答をもらい5月10日頃までに連絡したい。
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GOAL! 0か月
家賃をアップして賃貸契約を更新!
①急な告知と無理のある増額は禁物!誠意を持って早めにお知らせし、自分の物件を過剰評価せず、適正な増額を心がけましょう。
②家賃の値上げ分は電気料金等の経費増を理由に共益費に乗せると納得してもらいやすいし、契約時の更新料は上がらないので良心的です。
家賃アップを円滑にすすめるために
また、管理会社に家賃アップの交渉と手続きを依頼する場合も、賃貸経営の主体はあくまでもオーナー自身であることを忘れないでください。
日頃から宅配ボックスや無料Wi–Fiなど付加価値を高める設備の積極的な導入や、入居者とコミュニケーションを取っていれば、値上げ交渉をより円滑に進めることができるでしょう。
物価上昇が進む今は、適正な家賃に引き上げるチャンスでもあります。この機会に自分の物件の家賃を見直して、可能であれば収益改善をはかってみてはいかがでしょうか。
※この記事は2024年6月12日時点の情報を元に制作しています
取材・文/菱沼 晶
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