【契約不適合責任の範囲など】不動産売買におけるトラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説
不動産価格の査定方法や契約不適合責任に関する対応など、不動産売買におけるトラブルについて、弁護士の久保原先生・伊藤先生がわかりやすく解説します。
Q1:不動産価格はどのように査定されるのですか?
A1:売買の局面においては需要と供給の一致点が基本的に適正価格と言えるでしょう。
不動産の査定方法は、路線価等の公表価格から算出する方法、近傍物件の取引事例を比較して計算する方法、賃貸物件ならば収益利回りから査定する方法など、様々あります。
宅建業者に意見を求める場合には、法律上、根拠の明示義務がありますので、算定手法を確認できます。裁判で不動産鑑定を行う場合には、各手法を合わせて検討したり、当該手法を選択した理由まで詳細に報告されます。
その一方、売買が成立するかは、結局その金額で購入したいと思う買主が見つかるか次第という側面があります。算定額と相当異なる価格で売買が成立することは全く珍しくありません。
また、競争入札で買主を決めるという方法により、市場原理を活かした価格決定を目指すこともよく行われます。
Q2:建物を売却するときに、契約不適合責任を負わない特約を入れることは可能ですか?
A2:基本的に可能ですが、特約を入れても免責されない場合があります。
契約締結時に明らかでなかった、給排水管の老朽化、違法な増築部分、事故物件などの事項があると、買主は代金減額請求、損害賠償請求、売買契約の解除を行えます(契約不適合責任)。
契約不適合責任は特約で排除できる民法の任意規定のため、買主と交渉して「売主は契約不適合責任を負わない」という特約を契約書に入れれば、基本的に売却後に責任を問われません。他方、売主が知りながら告げなかった事実、自ら設定・譲渡した権利は特約で免責されません。
また、売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合、売主が事業者で、買主が消費者である場合には免責の特約は無効です。さらに、品確法が適用される新築住宅では構造耐力上主要な部分等の瑕疵について免責する特約は無効です。
Q3:マンション購入後、しばらく経ってから漏水が発生。売主に補償を求められますか?
A3:請求の期間制限を正確に把握し、早急に対応するとともに原因調査を進める必要があります。
民法上の契約不適合責任には期間制限があります。買主は不適合を知った時から1年以内に通知し、権利行使できると知った時から5年以内、権利行使できる時から10年以内に請求する必要があります。
商人間の売買だと制限が厳しくなり、直ちに検査して通知しなければならず、直ちに発見できない契約不適合も引渡しから6カ月以内に通知しなければなりません。これらは任意規定で、契約で異なる定めが可能です。
売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合は、通知期間を2年以上に修正する場合のみ特約で期間変更できます。品確法の適用のある新築住宅の請求期間は引渡しから10年間です。法律・契約を確認しつつ、漏水原因を調査して適切な対応をする必要があります。
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Q4:行方不明になってしまった兄と共有している土地を、自分一人で売却することは可能ですか?
A4:近時の民法改正で、共有者の一人が土地全部を売却する制度が新設されました。
「共有」とは、複数人が財産を同時に所有している状態です。共有者は他の共有者の同意を得ずに、自らの共有持分を売却できますが、共有状態の不動産は、単独所有よりも権利が大きく制約されますので、通常は相当安い金額でしか売却できません。共有持分の現金化のためには、他の共有者との交渉・裁判により、持分の買い取り・共同売却を目指すことが有効です。
共有者が行方不明の場合、有効な手続が限られていました。近時、民法改正がなされ、①共有者が代価を供託して所在不明の共有者から不動産の持分を取得する制度や、②第三者が代価を供託して、所在不明の共有者を含めて共有者全員が第三者へ不動産の持分を一括譲渡する裁判制度が新設されました。土地の有効活用が期待されます。
Q5:認知症の親の名義の不動産を売却することはできますか?
A5:症状が進行していると売却できないことがあるため、適切な法制度の利用が必要です。
認知症が進行している場合、民法上の意思能力、すなわち自己の行為の結果を弁識し判断できる能力が欠けると判断され、売買契約を締結しても無効となるおそれがあります。そのため、意思能力の有無が怪しい場合には、成年後見開始の審判により成年後見人を立てて、成年後見人が代理して売却をするしかありません。
なお、親の自宅不動産を売却するためには、さらに家庭裁判所の許可が必要となります。しかし、成年後見人や裁判所の役割は、後見が必要な方の財産を減らさずに守ることですので、売買に消極的で進まないケースが少なくありません。
こうしたケースも想定し、早めに資産承継の方針を決めて実行する他、生前贈与や家族信託の制度を利用することも検討すべきです。
Q6:マンションを購入した場合、入居者との契約や管理契約は自動的に引き継がれますか?
A6:賃貸借契約は原則自動的に承継します。通常の管理契約は自動的には承継しません。
建物所有者が、賃貸借契約を締結済みの建物を売却した場合、原則は賃貸借契約上の貸主の地位が自動的に売主から買主へ移転します。借主の承諾は不要です。
大家さんが変わっても部屋を使い続けられれば悪影響はないと考えられるからです。その結果、売主のときと同額の賃料収入が期待できますが、相場より低い賃料や不利な覚書も引き継がざるを得ません。トラブルメーカーの入居者に対しても、所有者変更を理由に明渡しを求めることはできません。
他方、賃貸借以外の契約は自動承継されず、管理会社、清掃会社などの契約は一から締結し直すこととなります。ただし、管理会社がサブリースで賃貸借契約上の借主という立場の場合、管理会社の変更の可否に疑義が生じえます。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2024年7月24日時点の情報です。
イラスト/黒崎 玄
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