路線価とは?調べ方、計算方法、図の見方をわかりやすく解説
相続税や贈与税において土地の評価額の基準となる「路線価」。この路線価はいつ、どのように定められているのでしょうか。また、路線価を調べるにはどうすれば良いのでしょうか。路線価の基本や計算方法について解説します。
路線価とは
路線価とは、道路に面している土地の1㎡あたりの公的な評価額のことです。「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類がありますが、単に「路線価」という場合には「相続税路線価」を指すことが一般的です。
路線価はいつ決まる?
毎年、1月1日時点での路線価(相続税路線価)が7月に国税庁より発表されます。1月1日時点での地価を1〜6月の間に定めていることになりますが、1年間の地価変動なども考慮に入れた計算がされています。
2024年の路線価は7月1日に発表されました。2024年は全国の標準宅地の路線価平均が2.3%上昇。3年連続での上昇で、上昇率も現行の算定方法となった2010年以降で最大となります。
都道府県別平均では29の都道府県で去年を上回りました。上昇率のトップ3は福岡県5.8%、沖縄県5.6%、東京都5.3%。コロナ収束によるインバウンド需要の復活、全国で再開発が進んでいることなどが上昇の要因とみられています。
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路線価はどうやって決まる?
路線価は、地価公示価格や不動産鑑定士による鑑定評価、実際の売買価格などをもとに決められます。複数の専門家や公的機関、自治体などの意見を交えつつ、国税庁が公平性のある価格を定めています。
相続税路線価
相続税路線価とは、相続税や贈与税の評価額を算出するために用いられます。対象地が接している道路(路線)に割り振られている㎡単価(1,000円単位)に土地面積を掛け、土地に応じた様々な調整を行って求めます。
固定資産税路線価
固定資産税路線価とは、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税を算出するために用いられる土地価格です。対象地が接している道路(路線)に割り振られている㎡単価という点は相続税路線価と同じですが、固定資産税路線価は1円単位となります。
固定資産税路線価は3年に1回の評価で、各市町村(東京23区は都)が公表します。価額水準が公示価格の70%程度という点も相続税路線価と異なっています。
路線価以外の土地を評価する公的な価格
土地は「一物五価」といわれ、ひとつの土地に5種類の価格が存在します。前項で触れた相続税路線価と固定資産税評価額以外には、どのような価格があるのでしょうか。
時価
時価は、実勢価格とも言いますが、実際に市場で出回っている価格のことです。時価は需要と供給のバランスで決まるため、土地の周辺の状況や売買の際の交渉によっても刻一刻と変わっていきます。
地価公示価格
地価公示価格は、毎年3月下旬に国土交通省から公表される、1月1日時点での土地価格です。土地の売買価格や、公共用地の買収価格や補償額を決める際に参考にされます。
都道府県地価調査価格(基準地標準価格)
都道府県地価調査価格は毎年9月に都道府県より公表されます。公示価格と同程度で調査方法もほぼ同じですが、7月1日時点を基準としています。
地価公示価格・都道府県地価調査価格は国交省が提供している「不動産情報ライブラリ」内で検索することができます。
路線価の調べ方
所有している土地や自分の住んでいる土地、実家の土地はどれくらいの路線価なのだろう?と実際に調べた方や、調べてみたくなった方もいらっしゃるかもしれません。ここからは、路線価図の見方や計算方法を解説します。
路線価図は国税庁の「財産評価基準書」からチェック
路線価図は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページから閲覧できます。
日本地図上、もしくは一覧から該当する都道府県を選び、さらに「路線価図」を選択します。次に、土地のある市区町村を選択しますが、ない場合は路線価が設定されていない区域ということになります。
その場合の求め方は「倍率方式」と呼ばれるもので、詳しくは後述します。調べたい土地が入っている路線価図が表示されたら、地図内の数字を確認しましょう。
路線価図の見方
路線価図では、道路上に数字やアルファベットが表記されており、数字やアルファベットを囲む図形もあります。順番に見ていきましょう。
この数字が路線価で、1,000円単位で表示されています。「2,050B」とある道路の前の土地の路線価は1㎡あたり205万円ということになります。
「2,050B」の「B」は借地権割合を表しています。借地権割合は地図の上部に一覧表があります。もし土地が借地である場合、路線価に一定の割合を掛けて評価額を算出します。
③数字を囲む枠(記号)
数字やアルファベットを囲む枠は、道路のある地区の種類を表しています。枠がない場合は普通住宅地です。こちらも地図の上部に以下のような判例が表示されています。
路線価がない「倍率地域」エリアにある土地評価の計算方法
郊外などには路線価が定められていない区域、いわゆる「倍率地域」があります。この場合は路線価ではなく、固定資産税評価額と評価倍率表を使って土地の評価額を調べることができます。これを「倍率方式」といいます。
評価倍率表は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で都道府県を選択した後に「評価倍率表」を選択して表示します。
該当する土地の評価倍率が分かったら、固定資産税評価額に掛けて評価額を求めます。式にすると以下の通りです。
固定資産税評価額×評価倍率=土地の評価額
固定資産税評価額は、すでに所有している土地であれば毎年4月に納税通知書とともに送付されてくる「課税明細書」に記載されています。
その他には、土地の所有者や関係者であれば「固定資産評価証明書」を入手したり、市区町村の税務課窓口などで「固定資産課税台帳」を閲覧したりすることでも確認できます。
路線価をもとに土地評価額を出してみよう
路線価がわかったら、その道路に面している土地の評価額が算出できます。ここではいったんシンプルな形状の土地を例に、基本となる計算方法をご紹介します。
1つの道路に面している土地の場合
土地評価額は「路線価×奥行価格補正率×土地面積」の計算式で求められます。奥行価格補正率とは、接面道路からの距離によって定められた補正率で、1.00の場合は補正なしです。
地区区分
奥行距離(m) |
ビル街地区 | 高度商業地区 | 繁華街地区 | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 | 中小工場地区 | 大工場地区 |
4未満 | 0.80 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.85 | 0.85 |
4以上6未満 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.90 | 0.90 | |
6以上8未満 | 0.84 | 0.94 | 0.95 | 0.95 | 0.95 | 0.93 | 0.93 |
8以上10未満 | 0.88 | 0.96 | 0.97 | 0.97 | 0.97 | 0.95 | 0.95 |
10以上12未満 | 0.90 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.96 | 0.96 |
12以上14未満 | 0.91 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.97 | |
14以上16未満 | 0.92 | 1.00 | 0.98 | 0.98 | |||
16以上20未満 | 0.93 | 0.99 | 0.99 | ||||
20以上24未満 | 0.94 | 1.00 | 1.00 | ||||
24以上28未満 | 0.95 | 0.97 | |||||
28以上32未満 | 0.96 | 0.98 | 0.95 | ||||
32以上36未満 | 0.97 | 0.96 | 0.97 | 0.93 | |||
36以上40未満 | 0.98 | 0.94 | 0.95 | 0.92 |
普通商業・併用住宅地区で奥行き35m、700㎡の土地を例に、評価額を計算してみましょう。
路線価は図のとおり「300C」で、補正率票から奥行価格補正率は0.97であることがわかります。
路線価30万円/㎡×奥行価格補正率0.97=29万1,000円/㎡
29万1,000円/㎡×土地面積700㎡=2億370万円
2億370万円がこの土地の評価額です。借地の場合は、「300C」とありますので、Cの借地権割合70%を掛けて
2億370万円×70%=1憶4,259万円 となります。
2つの道路に面している角地の場合
普通商業・併用住宅地区で「300C」の道路から奥行き35m、「200C」の道路から奥行き20m、700㎡の角地の場合はどうでしょうか。
まず原則として、接する路線価に奥行価格補正率を掛けた金額が高い方の路線が正面路線となります。この場合は上の「300C」の道路ですね。
正面路線である「300C」から求めた路線価と、「200C」の道路の路線価に「側方路線影響加算率」を掛けた価格を足したものが、その土地の㎡あたりの路線価となります。
側方路線影響加算率は国税庁HPに一覧表が掲載されています。この場合は普通商業・併用住宅地区なので0.08です。表にある「準角地」とは十字路ではない一路線の内側に位置する土地を指しています。
地区区分 | 加算率 | |
角地の場合 | 準角地の場合 | |
ビル街地区 | 0.07 | 0.03 |
高度商業地区 繁華街地区 |
0.10 | 0.05 |
普通商業・ 併用住宅地区 |
0.08 | 0.04 |
普通住宅地区 中小工場地区 |
0.03 | 0.02 |
大工場地区 | 0.02 | 0.01 |
正面路線価30万円×奥行補正率0.97=29万1,000円/㎡
側面路線価20万円×奥行補正率1.00×側方路線影響加算率0.08=1万6,000円/㎡
(29万1,000円/㎡+1万6,000円/㎡)×700㎡=2憶1,490万円
【借地の場合】
2憶1,490万円×70%=1億5,043万円
3面が道路に面していて、それぞれに路線価が定められている土地の場合は、3本目の道路に奥行価格補正率と「二方路線影響加算率」を掛けて同じように加算していきます。
間口が極端に狭い土地やがけ地などの場合
奥行価格補正率表を見てみると、普通商業・併用住宅地区の場合奥行きが12〜32mまでは補正率が1.00で、そこから数値が離れるにつれて補正の度合いが大きく(=評価額が低く)なっていくのがわかります。
つまり、極端に奥行きが短い、もしくは奥行きが長すぎる土地は使い勝手が悪いので、評価額が下がるという考え方です。同様に使い勝手の良い角地は、一方のみを接道した土地より評価額が高くなります。
奥行きについては「奥行長大補正」というものもあり、こちらは間口に対して奥行距離が2倍以上長い土地に適用されます。他に、間口が狭い土地に適用される「間口狭小補正率」もあります。
地区区分
奥行距離(m) |
ビル街地区 |
高度商業地区 繫華街地区 普通商業・併用住宅地区 |
普通住宅地区 |
中小工場地区 |
大工場地区 |
間口距離 | |||||
2以上3未満 | 1.00 | 1.00 | 0.98 | 1.00 | 1.00 |
3以上4未満 | 0.99 | 0.96 | 0.99 | ||
4以上5未満 | 0.98 | 0.94 | 0.98 | ||
5以上6未満 | 0.96 | 0.92 | 0.96 | ||
6以上7未満 | 0.94 | 0.90 | 0.94 | ||
7以上8未満 | 0.92 | 0.92 | |||
8以上 | 0.90 | 0.90 |
地区区分
奥行距離(m) |
ビル街地区 |
高度商業地区 |
繫華街地区 |
普通商業・併用住宅地区 |
中小工場地区 | 大工場地区 |
間口距離 | ||||||
4未満 | – | 0.85 | 0.90 | 0.90 | 0.80 | 0.80 |
4以上6未満 | – | 0.94 | 1.00 | 0.94 | 0.85 | 0.85 |
6以上8未満 | – | 0.97 | 0.97 | 0.90 | 0.90 | |
8以上10未満 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 0.95 | 0.95 | |
10以上16未満 | 0.97 | 1.00 | 0.97 | |||
16以上22未満 | 0.98 | 0.98 | ||||
22以上28未満 | 0.99 | 0.99 | ||||
28以上 | 1.00 | 1.00 |
がけ地の方位
がけ地地積 |
南 | 東 | 西 | 北 |
総地積 | ||||
0.10以上 | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
0.20以上 | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
0.30以上 | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
0.40以上 | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
0.50以上 | 0.82 | 0.81 | 0.78 | 0.73 |
0.60以上 | 0.79 | 0.77 | 0.74 | 0.68 |
0.70以上 | 0.76 | 0.74 | 0.70 | 0.63 |
0.80以上 | 0.73 | 0.70 | 0.66 | 0.58 |
0.90以上 | 0.70 | 0.65 | 0.60 | 0.53 |
がけ地は斜面の向きごとに、がけ地にあたる面積ごとの補正率が定められています。表を見てわかる通り、北側より南側斜面の方が評価額は高くなります。南東斜面などの場合は、南と東のがけ地補正率を平均して求めても良いとしています。
この他にも、変形地や欠けている形状の土地などについても計算方法が定められています。
まとめ
路線価については毎年7月ごろに発表されて話題となっています。特に銀座中央通りの鳩居堂前は「日本一地価が高い場所」としてよくニュースに登場しているため、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
土地には様々な形状があり、面している道路も1つとは限りません。それぞれの条件に応じた様々な補正を併用して算出されるため、計算も複雑です。実際に相続や贈与などで土地評価額を確認する必要が生じた場合は、宅建士や不動産鑑定士といったプロに依頼することになるでしょう。
しかし、路線価図の見方や計算の基本を知っておくことで、説明を受けたときの理解がスムーズになります。また、路線価を確認し、公示価格や時価と照らし合わせることで土地の相場をつかむことができ、不動産取引の際に適正価格が把握しやすくなります。
まずは気になった土地の路線価を国税庁のホームページで調べ、計算してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
※この記事は2024年9月3日時点の情報をもとに作成しています
記事・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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