セットバックとは?必要な理由、費用など基礎知識をわかりやすくまとめて解説!

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公開日:2025年2月5日
更新日:2025年2月5日
セットバックとは?必要な理由、費用など基礎知識をわかりやすくまとめて解説!1

土地購入やアパート建築の際に目にすることがある「要セットバック」という言葉。このように書かれた土地を購入すると、思い通りの建築ができない可能性があります。セットバックの基本知識や必要な理由、費用、購入時の注意点をわかりやすく解説します。

セットバックとは

セットバックとは?必要な理由、費用など基礎知識をわかりやすくまとめて解説!2

セットバックとは

セットバック(Set back)とは、「後退」を意味する言葉で、建築や土地利用の場面では、前面道路を広げるために土地の境界を後退させることを指します。狭い道路を拡幅することで、安全性や街の景観を向上させる目的があります。

セットバックはなぜ必要?

セットバックが求められる背景には、建築基準法の「接道義務」があります。この規定では、建築物を建てる際、4m以上(地域によっては6m以上)の幅を持つ道路に、2m以上接していなければならないとされています。接道義務の目的は以下の通りです。

災害時の安全確保(消防車・救急車の通行を確保)
快適な住環境(日照・通風・景観の向上)

これを満たすため、幅4m未満の道路に面する土地ではセットバックが必要となります。

セットバックが必要な道路の種類

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セットバックは建築基準法で定められた「接道義務」と深い関係にあります。接道義務とは、住宅を建てるための土地は「4m幅以上(地域によっては6m幅以上)の道路に2m以上接していなければならない」という決まりです。

接道義務の目的は、災害の際に消防車や救急車などの緊急車両が通れる道路幅を確保することと、日照や通風が十分にある、快適で景観の良い街づくり。この接道義務を果たすために、土地を後退させて道を広げるセットバックが必要になるのです。

建築基準法42条2項道路(みなし道路)

幅4m未満の古い道路のうち、「次回の建て替え時にセットバックする」という条件で建築基準法上の道路とみなされるものを「42条2項道路(みなし道路)」と呼びます。

☑ セットバックにより、道路の中心線から2m以内に建築不可
☑ 売買時に「要セットバック」と表記される

 

42条3項道路(水平距離指定道路)

傾斜地や河川沿いなど、将来的に4m幅を確保できない道路は、セットバックの幅が緩和される場合があります(例:1.35m後退で2.7mの道路幅を確保)。この指定には自治体の承認が必要です。

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セットバックする幅の計算方法

セットバックをするにあたり、土地の境界線をどのくらい後退しなければならないかは気になるところ。必要なセットバックの幅は、前面道路を挟んで向かい側の土地の状況によって計算方法が変わります。

道路の向かい側に建物がある場合

道路の向かい側に建物がある場合は、道路の中心線から2mの位置までセットバックが必要です。向かい側の土地の持ち主も同じ分だけセットバックをして、道路の幅員を4mにする計算です。

例えば、もともとの前面道路の幅が1mの場合は、以下のような計算式になります。

計算例(現在の道路幅1m)
(4m − 1m) ÷ 2 = 1.5m後退(両側の土地所有者が1.5mずつセットバック)

 

向かい側が川・崖・線路の場合

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道路の向かい側が川や崖、線路という場合は計算方法が変わります。向かい側はセットバックができないため、こちらの土地のみで前面道路4mの幅員を確保しなければなりません。そのため、計算式は以下のようになります。

必要な幅員4m - 現在の道路幅1m = セットバック幅3m

 

接道が公道か私道かによって違いはある?

道路には、国や自治体が保有する「公道」と、個人が所有する「私道」があります。私道は個人の所有なので、法務局が管理する地図(公図)に地番が記載されています。

建築基準法で認められた道路であれば、公道でも私道でもセットバックの要件は同じです。しかし、私道の場合はセットバックをした部分の管理主体(国、都道府県、市区町村)や固定資産税などが変わることがあります。

セットバックが必要な宅地の評価方法

セットバック部分は自由に使えないため、土地評価額にも影響します。

評価方法

国税局では「通常通りに評価した価額から70%相当額を控除して評価する」としています。つまり、セットバックする部分の土地は通常の30%で評価されることになります。

評価額の計算例

●国税庁の評価基準:「通常の価額から70%控除」

計算例(評価額4,000万円・セットバック部分20㎡)
4,000万円 × (20㎡ ÷ 200㎡) × 70% = 280万円控除
4,000万円 − 280万円 = 3,720万円

セットバック物件購入時の注意点

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セットバックが必要な物件を購入する際は、以下の点に注意しましょう。

防災性や利便性が低い

セットバックが必要ということは、前面道路が4mの幅員を満たしていないことになります。そのため、火事が発生しても消防車が近くまで入れなかったり、救急車の到着が遅れたりするなど、防災面でのリスクがあります。

また、道路が狭く、車がすれ違うことができない場合や、車と自転車や歩行者の距離が近く危険である場合など、なにかと不便な点もデメリットとなります。

セットバック部分には塀や門が作れず、駐車スペースにもできない

セットバックした部分は自分の土地ではあるものの、建物はもちろん塀や門を作ったり、駐車スペースにしたりすることもできません。また、花壇や自動販売機などの設置も禁止されています。セットバックした部分を私的利用すると、建築基準法違反とみなされるのです。

売却しにくくなる

セットバックが必要な物件は将来の建て替えに制限があるため、売却するときに買い手が見つかりにくい可能性があります。

そのため、要セットバック物件を売却するときは、建物を解体しておいたり、セットバックにかかる費用相当分を値引いたりするなどの工夫が必要になります。

セットバックが必要な物件を購入してもOKなケース

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要セットバック物件のデメリットをお伝えしてきましたが、次のようなメリットも存在します。デメリットを上回るメリットが感じられる場合は、購入を検討しても良いでしょう。

購入金額が安くすむ

要セットバック物件は土地の後退が必要な分、通常の物件よりも価格が安く設定されています。そのため、建っている建物がリフォームなどで十分使えそうな場合は、お得に手に入れられるチャンスとも考えられます。

購入後の将来的な建て替えや売却の予定がない

セットバックは建て替え時に必要になるため、現状の建物をそのまま使い続けるのであれば、通常の土地と変わらず利用ができます。また、売却の予定がなければ「売却しづらい」というデメリットの影響もありません。

希望する建築面積が十分に確保できる

たとえセットバックを行ったとしても、土地の広さが十分にあり、建ぺい率、容積率ともに当初予定していた建物の規模が確保できるのであれば、購入候補になります。エリアの土地価格相場やセットバック費用を考えたうえで、割安だと判断できれば検討しても良いでしょう。

必要な費用

セットバックには、測量・登記・整備費用が必要になります。

費用項目 目安費用
測量費 10~80万円(境界確定の有無で変動)
分筆登記 5~7万円
整備費(舗装等) 1㎡あたり3,000~8,000円

 

測量費用

測量費用は土地の状況によって大きく変わります。隣地との境界が確定しており、現況測量だけで済む場合は大体10~30万円が測量費用の目安となります。

境界が確定していない土地であれば境界確定測量が必要で、その場合は費用も時間もかかります。費用の目安は30〜80万円程度で、土地が広く隣接する土地が多い場合、隣接所有者が市区町村の場合などは金額が高くなります。

分筆登記の費用

測量によって境界線が確定したら、土地分筆登記が必要です。セットバック部分を元の土地から引いて地番を付け直す登記のことで、一般的には土地家屋調査士に依頼します。その場合の費用相場は5〜7万円程度です。

整備費用

セットバック部分には、道路として問題なく使えるように仮整備が求められます。仮整備はアスファルト舗装が一般的で、1㎡あたり3,000~8,000円程度がかかります。重機が入りづらい場所などであれば人件費が大きくなるため、さらに高くなることも。事前に見積もりを取って確認しましょう。

セットバックの費用は誰が払う?

セットバックには、決して少なくない費用がかかることがわかりました。ここで気になるのが、その費用を誰が負担するのかという問題。セットバックは街づくりのための工事なので、行政が負担してくれるのでは、と感じる方も多いかもしれません。

実はセットバックは、基本的に土地の所有者が自費で行うことになっています。しかし、申請すれば自治体によってはセットバックに対して助成金が設けられているケースもあります。

例えば東京都杉並区では、区がセットバック部分にある門や塀等の撤去費用の一部を助成しています。世田谷区でも、道路の拡幅整備が完了し適正と認められた場合は、申請に基づいて奨励金・助成金が交付されます。

固定資産税や都市計画税への影響と欠かせない非課税申請

セットバック部分は非課税扱いになりますが、自治体への非課税申請が必要です。

✅ 申請先:市区町村の税務課
✅ 必要書類:申告書、土地謄本、測量図面など
✅ 申請期限:年内に申請すれば、翌年度から適用

セットバックして建築した事例

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狭い私道付け、近隣建物の倒壊リスク…様々な難局を独自の強みでクリア!

今回紹介する事例で活用した土地は、約35坪。計画中に地盤改良の必要性が明らかになるなど厳しい条件でした。3m弱の私道に面した準防火地域で、近隣建物は老朽化しており、倒壊リスクもありました。

この事例を手がけためぐる組では半地下を作りやすくなる特許を用いた工法や、高性能を保ちながらコストを抑えた地盤改良、建築コストや工期の効率化などによって様々な難局をクリアし、半地下と地上4階の5層建物を建築。

厳しい条件下にもかかわらず、めぐる組が蓄積してきた技術や知見を活かすことによって土地を最大限活用し、高収益賃貸物件を実現しました。

[物件データ]
所在地/東京都大田区
構造・規模/RC造 地下1階・地上4階建て 間取り/1LDK×10戸
敷地面積/114.90㎡(約34.7坪) 延床面積/293.99㎡(約89.0坪)

まとめ

要セットバックの土地購入する場合は、セットバックによって土地や建築予定の建物にどのような影響があるのかをよく検討する必要があります。

セットバックを行うことで利便性や景観など良くなり、結果的に土地の資産価値が大幅に上がることもあり得ます。また、住みよい街づくり、地域環境づくりに貢献することになります。

メリット・デメリットを比較しつつ、周辺環境や自治体の助成制度などを確認しながら慎重に進めるようにしましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年2月4日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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