【法律Q&A】もし貸主・借主が亡くなったらどうなる?賃貸不動産の相続前後に起こりうるトラブル

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久保原弁護士による法律相談、賃貸不動産の相続時に起こりうるトラブルのQ&Aです。
貸主・借主のどちらが亡くなった場合も、予想外のトラブルが発生する可能性があります。
突発的事態に際してあわてないよう、事前に知識を得ておきましょう。

九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也

2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。


2008 年、九帆堂法律事務所設立。


最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。


Q1:一人暮らしの借主が死亡した場合、部屋の残置物はどのように処分すればよいですか?

A1:賃借権も残置動産類も相続されますから、まずは相続人を探すことが必要です。

借主が死亡した場合、借主の財産は相続人に全て相続されます。そこで、部屋の残置物は所有者となった相続人に処分してもらうことになります。貸主が勝手に処分することはできません。

なお、部屋を借りる権利(賃借権)自体も死亡によって終了するわけではなく相続されるので、賃貸借契約を続けるか否かを決めるためにも相続人を探すことが必須となります。問題は相続人がわからないケースです。この場合は弁護士等の専門家に相談して相続人を探すことになり、問題解決までに時間を要することになります。

賃貸経営上は、万が一の時の相続人を把握し、連絡をとって、日頃から相続人になるべき方々とともに借主を見守るということが重要となります。

Q2:高齢の借主が死亡した場合、賃借権を相続人に相続させることなく、物件を返してもらいたいのですが?

A2:一代限りの使用貸借契約に変更する方法があります。

賃貸アパートを壊して再開発をしたいけれど、賃借人がご高齢なので生存中は見合わせ、亡くなられた後にしようと考えるケースは珍しくありません。しかし、賃借人の死亡では賃貸借契約は終了せず、賃借権は相続されるので、相続人が希望すれば賃貸借契約は相続人との間で継続されます。そして、正当事由がない限り更新拒絶や解約をすることができず、明け渡しは容易には実現しません。

このようなケースでは、賃借人の生存中に、賃貸借契約から使用貸借契約に切り替えることが一つの方法です。使用貸借契約(無償での貸借)は相続されることなく、借主の死亡により終了します。賃料収入はなくなりますが、相続人との交渉費用や立退料を考えると検討の余地が出てくるのです。

Q3:公正証書遺言をしたはずの母が死亡しましたが、遺言が見つからない場合、どうすればいい?

A3:公証役場の遺言検索システムで調査をする方法があります。

法律では数種類の遺言方法が規定されていますが、遺言を確実に実行したい場合、公正証書遺言により作成するのがおすすめです。元裁判官や元検察官などの公証人が、遺言者の意思や判断能力などを判断して作成しますので、後から遺言自体の有効性が争われる危

険性が低くなります。また、公正証書遺言は半永久的に公証役場に保存されるので、紛失や滅失、改ざんの心配もありません。

そして、公正証書遺言の有無は、遺言者の死後、相続人などの利害関係人が公証役場で検索調査をすることができます。全国どこの公証役場でも検索可能です。検索結果により、公正証書遺言があることが判明した場合、今度はその公証役場に対し、謄本の交付を申し込み、遺言内容が判明します。

Q4:相続物件の賃料滞納について裁判をしたいのですが、相続登記が未了でも大丈夫ですか?

A4:登記がなくとも構いませんが、相続によって権利者となった証明が必要となります。

賃貸物件を相続すると、その物件の貸主たる地位を承継することになり、賃貸人となります。そこで賃貸借契約に関し、賃借人との間の紛争の当事者として裁判を行うことができます。このことは、相続登記には関係がありませんので、相続登記が未了の場合でも変わりません。

もっとも、問題となっている物件を相続したという事実は、戸籍や遺産分割協議書などにより証明することが必要となります。賃借人との紛争を解決するためとはいえ、このような極めて重要な個人情報を開示するのには躊躇があると思います。その点で、相続登記は、相続をしたことを証明するためにも便利なものです。特別な理由がないのであれば、速やかに相続登記を行いましょう。

Q5:賃貸人が死亡し、遺産分割未了の間の賃料収入はどのように扱われますか?

A5:各相続人が持分に応じて取得することになります。

遺産分割が行われ、遺産の帰属が決まると、遺産分割の効果は相続開始の時に遡って生じることとされ、賃貸物件の「所有権」は賃貸人の死亡時からずっと、遺産分割により当該物件を取得した相続人に帰属していたことになります。

しかし、「賃料債権」の帰属については所有権とは別の考え方がされています。賃貸人の死亡から遺産分割までの間は、その時点では全相続人の共有状態にあり、その間に生じた賃料債権は所有権とは別個の財産として相続分によって分割取得され、遺産分割による影

響を受けないのです。賃料債権は法定相続分を相続人各自が賃借人に請求でき、賃借人は相続分の割合で賃料を支払います。もっとも、このような場合は通常、相続人合同の賃料支払口座を通知します。

Q6:父から賃貸マンションを相続しましたが、弟に格安の賃料で貸す場合の注意点は?

A6:将来のトラブルを避けるため、契約関係を明確にしておきましょう。

親が所有物件に子供を住まわせることはよくありますが、親が死亡した場合、相続によって物件の所有者が兄弟姉妹や親戚になり、契約関係が曖昧な状態で貸し借りが続くことがあります。しかし、その状態を放置すると、年月が経ってから大きな対立が生まれる可

能性があります。そこで、相続を機に、曖昧な契約関係は親族間ほど解消しておくのが望ましいです。

このようなケースでは格安の金銭授受を貸借条件とする場合が多く、例えば、借主側は格安でも「賃料」であって賃貸借契約だと主張し、貸主側は実質的に「無償」の使用貸借契約と評価すべきと考え、両者の主張が微妙ゆえに深刻な対立となることがあります。賃貸借か使用貸借かにより契約関係は大きく変わるので、注意が必要です。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2016年3月7日時点の情報です。

イラスト/すぎやまえみこ

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