旗竿地に連なる美しい切妻屋根。周囲から隔絶した市中の山居│素敵な賃貸住宅
- アパート
- マンション

敷地通路には、茶庭に使われる真砂土を使用。味わい深い外壁は焼き杉を採用しています
袋小路の突き当たりにある旗竿地にある、市中の山居と呼ぶにふさわしい賃貸物件「蓮山居」。連なる山々を思わせる、雁行する切妻屋根のシルエット。敷地内の通路は茶庭に、各住戸は茶室に見立てられており、外壁や天井の素材、照明、室内から見える枝垂れた雑木などのあらゆる要素によってその空間が創出されています。
■ 物件名/蓮山居 ■ 所在地/東京都品川区
■ 構造・規模/木造地上3階建て ■ 戸数/10戸
■ 間取り/ワンルーム5戸、1LDK5戸 ■ 竣工/2023年11月
■ 設計・監理/ラブアーキテクチャー一級建築士事務所
■プロデュース/シマダアセットパートナーズ
厳しい条件下でも計算し尽くして最大限のボリュームを実現
周囲の三方を配管が露出する民家の背面や側面に囲まれた厳しい立地条件や、法的な規制の下で、最大限のボリュームを実現する唯一の解として出来上がった「蓮山居」。

周りの風景を遮断するように建物を敷地境界に沿ってロの字型に配置。幅員50cmの避難経路や、幅員2mのアプローチなど、法令や都の条例に適合するよう計算されています。


物件の建つ土地は第一種低層住居専用地域に該当するため日影規制が厳しく、周囲を建物に囲まれています。採光とプライバシー確保、快適な居住性を実現するために導き出されたのが、複雑な切妻屋根の複合体です。
周囲の景観を建物で隠し、部屋同士のお見合いを避けつつ法的採光や実際の採光を確保するため、建築家は数学的なテクニックを駆使。入居者の暮らしには、各住戸の内部だけでなくアプローチや窓の外の景色も含まれているという考えから、植栽の場所や窓の位置、間取りまでもがミリ単位で計算されています。
すべて異なるタイプの住戸が見事に融合。至るところにこだわり


階段の足元で真砂土と植込みの境界を隠している踏み石は、他住戸から見れば茶庭の景石となっています。通路の随所に植えられた樹木は山間にある雑木。山間的情緒の中を木々が次々と見え隠れし、室内からは枝垂れて見えるように。
敷地通路に面した窓の外を見て、茶室から茶庭を眺めていると入居者が感じられるよう、竹方立がアルミサッシの召合せを隠して立てられています。竹方立を挟むことで、窓の外側が茶庭として演出されているのです。


あら板を塗装した天井や和紙照明、隠されたエアコンなど、細部に設計者のこだわりが宿っています。
この住戸は1階に水まわり、2階に吹き抜けの寝室、3階にLDKを設けた3層構造。家具の配置まで想定し、敷地を最大限に活用できるよう各戸の間取りをデザインしています。
住戸はすべてタイプが異なり個性的。住む人の暮らしまでもがデザインされています。細部まで妥協なく考え抜かれたデザインが、都心の住宅地でありながら周囲から隔絶した居心地の良い空間を作り出していました。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年3月1日時点のものです。
取材・文/本多 智裕 写真/西川 公朗
【登録無料】メルマガで週2回お役立ち情報を配信中!
