実録!賃貸管理のプロに訊く入居者トラブル対処の心得

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「自分の物件では発生してほしくない事件・事故。でも、起きてしまったらどうする?賃貸管理歴25 年のクマさんが遭遇した驚きのトラブルの数々と対処を一挙大公開しちゃいます。ノウハウを学んでいざというときの助けにしましょう。

読者オーナーの約半数が何らかの事件・事故に遭遇

どんなに慎重に管理をしていても、ときに思いがけないトラブルが発生して愕然とした経験をお持ちの方も多いのでは。本誌の読者1000名を対象に行ったアンケート結果でも、 約半数のオーナーが所有物件の敷地内で何らかの事件・事故に巻き込まれた経験していることがわかった。

一番多かったのは「入居者が家賃滞納で強制退去に」で、回答者の約5人に1人がこれを挙げている。続いて「入居者が夜逃げ、失踪」、「入居者の部屋の中がゴミ屋敷に」、「火事、ボヤ騒ぎが発生」、「入居者が空き巣に入られた」といった回答が多くなっている。孤独死や自殺、殺人事件など、大きな打撃を受けるトラブルを体験したオーナーも少なからずいた。

近年、高齢化が進む一方で、非正規雇用労働者の増加や、若年層の貧困化も問題に。こうした背景から、ひきこもりや孤独死といった現象がクローズアップされるようになった。社会環境の変化から経済面や精神面でストレスを抱える入居者が増え、賃貸経営における事件・事故の遭遇率が高まっている可能性もある。

自身の物件でも、いつ事件・事故が起こってもおかしくはないと心得ておくべきだろう。しかし、いずれにせよオーナー自身の努力だけでは避けられないことも多いので、実際に事件・事故が起こったときに慌てふためかないよう、前もって心の準備をしておきたいものだ。

そこで今回は、賃貸トラブルお助け人のクマさんこと熊切伸英さんに、管理物件で実際に遭遇したビックリ仰天のトラブル事例を伺った。どんな対処をしたのかも併せて紹介するので、そこから教訓を得ていただきたい。

 

お話を伺ったのはこの人

「クマさん」こと熊切 伸英氏(くまきり・のぶひで)

賃貸管理の現場担当者として25 年間、さまざまな案件に遭遇。TV の密着取材を多数受け、好評を博す。10 年以上続く自身のブログ「賃貸管理クレーム日記」ではリアルな賃貸管理の現状を伝えている。現在、ベルデホーム株式会社勤務。同社管理部長。賃貸トラブルに関するセミナー講師も務める。書籍『助けてクマさん!賃貸トラブル即応マニュアル』(週刊住宅新聞社)など。


クマさん直伝!トラブルに対する大家の心得

  • 何が起きてもうろたえないよう、前もってイメージトレーニングをしておくべし!
  • いざというとき適切に対処できるよう、いろんなノウハウを仕入れておくべし!

【CASE1:自殺】臭わず、滞納もなく、発見が遅れた!ワンルームで起きた練炭自殺 入居者の親に辛い費用の交渉を

【遭遇度】★☆☆☆☆【難易度】★★★★★【事件度】★★★★★

5月のゴールデンウィークに、都心のワンルームマンションに住むAさん(30代男性・無職)の父親から、「年末から息子と連絡が取れません。今、部屋の前に来ているのですが、嫌な予感がするのですぐに鍵を解錠してほしい」と管理会社に連絡がありました。

警察に連絡して警官に同行してもらい、駆けつけてドアを開けたとたん、きつい臭気に襲われました。部屋で亡くなってかなり経っていたのでしょう。腐敗が進み、蛆も湧いていました。警察に死因を聞くと練炭自殺でした。

鉄筋コンクリートの建物は気密性が高い上、窓に目張りがしてあったため、臭いが漏れず、長く気づかれなかったのです。また、家賃は毎月きちんと息子さんの名前でお母様が振り込んでいたため、滞納がなかったことも発見の遅れにつながりました。共用廊下に座り込み、泣き崩れているご両親の姿に思わず涙がこぼれました。

ご両親に荷物の始末を頼まれたので、処分費用と併せて、この状況の部屋を原状回復するための特殊清掃や壁・床等のリフォーム費用、オーナーさんに対する損害賠償も発生することを伝えました。そして「しばらくお辛いと思いますが、1週間後にご連絡いただけますでしょうか?」と依頼し、後日、見積書を保証人である父親宛に送付しておいたのです。

しかし、約束の1週間が過ぎても電話がかかってきません。仕方がないのでこちらから連絡すると、「今後の賃料がなぜそんなに下落するのか?」と抗議を受けました。自殺された部屋を次の人に貸す際には、事故物件であることを説明する告知義務があります。当然、そのままの賃料では借りる人がいないので、5年程度の賃料減額分を請求したことを伝えたのですが、なかなか納得してもらえません。

やむなく払っていただけない場合は裁判を起こすしかないと言うと、ようやく請求額の全額を振り込んでくれました。ただし、怒気のこもった声で、「これ以上の支払いは一切なしということで、二度と電話をしてこないでください」とガチャンと電話を切られ、後味の悪い思いをしました。こうした自殺事故は案外多く、私は2年に一度は経験しています。

※損害の請求、告知期間に関しては様々な裁判事例がありますが、現段階では法律やガイドラインが無いのが実情です。

事例は合意に至った一例ですので、ご遺族や保証人と平行線になった場合は、弁護士等の専門家へご相談下さい。

保証人への請求内容

合計請求額 約1,880,000 円

1) 募集賃料下落に伴う損害賠償 1,080,000 円

 現況賃料  60,000 円(月額)
 想定下落率  30%
 想定下落金額  1 万8000 円(月額)
 想定下落期間  5 年

よって1 万8000 円× 60 カ月= 1,080,000 円

2)残置物撤去・特殊清掃・消毒業者の費用 約35 万円

3)壁・床等の室内リフォーム費用 約45万円

(内容)床・壁・天井は全面、臭気がしみこんでいるため石膏ボードも張替え、照明器具、エアコン、備え付け冷蔵庫は買い替え(オーナーと折半での費用含)

「教えて!クマさん」早期発見が大切!安否確認依頼が来たら、躊躇せず駆けつけよう

少子高齢化・核家族化が進む中でオーナーさんを悩ませるのがご入居者の孤独死や自殺の問題です。損害を最小限に留めるには、少しでも早く発見することが大切。遺体の発見が遅れると、特殊清掃や壁・床の交換など、原状回復に費用がかかります。

また、遺族が相続放棄をした場合など、請求できずに全額がオーナーさん負担になることもあります。家賃の支払いが遅れたら、すぐに電話連絡をし、親族などから安否確認依頼が来た場合は、躊躇せずに駆けつけましょう。また、こうしたリスクに備えるための保険や特約も増えています。

【CASE2:ゴミ部屋】真面目でしっかりした印象の入居者さんが…安否確認からまさかの発覚!2DKを埋めつくすゴミの山

【遭遇度】★★☆☆☆ 【難易度】★★★★★ 【事件度】★★★★☆

某マンションに10年以上入居するBさん(50代男性)の勤務先から「転勤を拒否して出社しなくなり、電話連絡もつかない。部屋で自殺しているかもしれない」と電話があり、即、鍵を持って警官と物件に駆けつけました。部屋のインターホンを何度も鳴らし、ドアポストから大声で来訪を伝えましたが、全く無反応だったので、合い鍵でドアを開けると、唖然とする光景が広がっていました。

間取りは広めの2DKなのですが、天井までの隙間が80cmまで到達するほどの積載レベルでほぼ全域にゴミが詰まっています。ちょっと乗り上げると崩れるので、雪山よりも歩きにくい中を、洋室2部屋・ダイニング・廊下・脱衣所・トイレと全て確認しましたが、Bさんはいませんでした。

Bさんの入居履歴を見ると、3年に1度定期的に実施している排水管清掃を拒んだという記録がありました。「排水の詰まりが発生したら費用負担していただきます」の警告文も無視していますから、余程知られたくない秘密だったのでしょう。

その後、Bさんの転勤はなくなり、会社には出社しているとわかったので、ゴミの件を解決すべく「安否確認の際に室内の状況を確認しました。専門業者に撤去を依頼できますのでご連絡ください」と、手紙を入れたのに無視。でも、入居者が生きているとわかった以上、再度勝手に入室はできません。

Bさんの携帯電話の登録はなかったので、部屋の固定電話に連絡しましたが、いつも留守番電話です。それもそのはず、電話機はゴミに埋もれていたのですから。遅い時間に訪問しても反応がないので、意を決して「明日、会社に訪問させていただきます」と置手紙で警告したところ、ようやく連絡があり、ゴミを撤去する約束をしてくれました。

長く住んでくれていて丁寧で真面目な方なので、オーナー様とも話して様子を見ることにしましたが、片付けが進まないようなら専門業者を手配し、退去を勧告するつもりです。

「教えて!クマさん」夜逃げされないよう、契約解除の通告はゴミの撤去後に行うが吉

ゴミ部屋は発覚しにくいだけでかなり潜在していると思われます。かたくなに入室を拒む入居者は要注意です。専門業者によるゴミの撤去費用は、1Kでも10万円~100万円ほどと開きがありますが、金額の高い業者は引っ越しのようにゴミを梱包するなど近隣に配慮してくれるところも。

本人に資力がない場合は連帯保証人にことの重大さを伝えて費用を出してもらいます。通常は信頼関係が損なわれたとして契約解除するのが妥当ですが、発覚直後に勧告すると片付けないで夜逃げされる可能性もあるので、ゴミの撤去後に申し入れましょう。

【CASE3:騒音】ペット飼育可で鳴き声トラブル 犬の無駄吠えで睡眠妨害 苦情元と騒音元が一触即発!

【遭遇度】★★★★★【難易度】★★★★☆【事件度】★★★☆☆

ペット飼育可マンションに住むご夫婦から「上階の犬の鳴き声がうるさい」と苦情が入りました。騒音元と思われる入居者に確認すると「そんなに鳴かせていない」と言われ平行線の状態に。

そのうち苦情元の我慢が限界となったのか、騒音元のインターホンを早朝に鳴らしたり、玄関ドアに張り紙をするなどして警察官が出動する騒ぎにまで発展したので、「うるさく吠えていたらいつでも良いので連絡してください」と私の携帯電話の番号を伝えました。

ある日、朝4時に苦情元から着信があり、出動すると明らかに尋常じゃない鳴き声。これでは眠れたものではありません。騒音元を確実に確かめてからインターホンを鳴らし、厳重注意。即、警告書を発送すると共に、しつけの首輪を提供するなど改善指導も行いました。

犬をキャリーケースに入れ自分は別の部屋で寝ていたらしく、犬がストレスで大鳴きしていたようです。キャリーケースで寝かすのをやめてもらって以降、早朝の無駄吠えは止まりました。

「教えて!クマさん」お互い様ですから、となだめてもダメ。双方の話を聞いて真摯に対応する

騒音トラブルは真摯な対応が大事。「共同住宅なので、お互い様です」では納得してもらえません。苦情が出たら、まず「心当たりのある方は改善を」と文書を掲示します。それでも収まらなければ、一戸一戸訪問するなどして状況を確認し、生活音なのか騒音なのかを判断。騒音の場合は厳重警告と改善指導を行います。

そして正常化した後も気が緩まないように、騒音元のフォローを。

 

【CASE4:ゴミ未分別】入居者や近隣からも苦情が殺到 ゴミを分析し入居者を特定 分別表を渡して突き返す

【遭遇度】★★★★☆【難易度】★★★★☆【事件度】★★☆☆☆

未分別ゴミが回収されず、ゴミ置き場に置いていかれた場合は、徹底的にゴミを分析して出したご入居者を特定し、注意しています。そして分別表を手渡し、「次回、分別せずに出したら、出動費用を請求しますよ」と言って突き返します。これでたいていの人はゴミの出し方を改善してくれます。

また、誰が出したか不明な場合は、改善されるまで全世帯に注意文書を配布し「分別していない人を見かけた場合はご連絡ください」「管理費が値上げになるかもしれません」など、他の入居者からも監視してもらうようにしています。

以前、分別していなかった女性の入居者にゴミを突き返した際、プライバシーの侵害だと怒られたことがあります。心配になって弁護士に聞いてみたら、「ゴミ置き場に捨てられたゴミを、管理会社が未分別ゴミを突き返すために分析するのは問題ないでしょう」と言われました。万一、訴えられたときに困らないよう、念のためゴミ置き場に置いていかれた状態を写真に撮っておきました。

「教えて!クマさん」学生さんには引渡時に分別の仕方を指導 親ではなく本人に自覚してもらう

未分別ゴミのトラブルはワンルームの単身者が起こしがち。特に学生さんは分別ルールを知らない人が多いので、はじめにゴミの出し方を指導することが必須です。

分別表を実際に見せて具体的に説明します。ただ、親御さんと同席で説明すると、親御さんの方が熱心に聞いていて、学生さん本人は上の空でいることが多いので要注意。必ず本人に自覚してもらいましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2016年9月6日時点の情報です。

取材・文/菱沼 晶 イラスト/平井 きわ

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