為替や株、トランプ政権による不動産投資への影響は?投資家への意識調査からひも解く

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公開日:2025年8月21日
更新日:2025年8月21日
為替や株、トランプ政権による不動産投資への影響は?投資家への意識調査からひも解く1

野村不動産ソリューションズ(株)が投資用不動産専門サイトの会員向けに毎年行っている「不動産投資に関する意識調査」の2025年版が発表されました。投資家の投資状況やマーケット感、賃貸経営についての今後の見通しはどのように変化したのでしょうか。結果を抜粋してご紹介します。

投資家のプロフィールと収入状況。不動産収入の最多層は「年間1,000万~1,500万円」

為替や株、トランプ政権による不動産投資への影響は?投資家への意識調査からひも解く2

最初に、意識調査に回答した投資家の全体像を見てみましょう。保有している投資用不動産の総投資額で最も多かったのが「1億円以上~2億円未満」で19.4%を占めています。次いで「5,000万円以上~1億円未満」で18.0%、「1,000万円以上~5,000万円未満」15.7%、「2億円以上~3億円未満」14.3%が続きます。

年間の不動産収入は「1,000万円以上~1,500万円」14.3%が最も多く、次が「5,000万円以上」12.0%。不動産収入はかなりばらつきがあり、大まかに「500万円未満」「500万円以上~1,500万円未満」「1,500万円以上」で三分されています。

保有している投資用不動産数は「3物件」が最も多く24.0%、次いで「2物件」18.9%、「1物件」15.2%。3物件までの人が6割近くを占める一方で「8物件以上」も14.3%いました。

売買の動向とその背景。過去3年の投資用不動産、売却・購入理由に変化あり

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続いて直近3年間の売買状況です。「過去3年の間(2022年以降)に、投資用不動産を売却しましたか」という質問に対しては「売却していない」が68.2%で、「個人として売却した」が24.5%、「法人として売却した」が10.1%。2024年調査時と大きくは変わっていません。

しかし「売却した理由」については前年よりも「所有物件を組み替えるため」が減り、「修繕費がかかるから」「管理が大変だから」「資金が必要になったから」「キャッシュフローが少なくなったから」が増えました。

「過去3年の間(2022年以降)に、投資用不動産を購入しましたか」という質問に対しては「購入していない」が52.7%、「個人として購入」が32.5%、「法人として購入」が18.1%でした。

「購入した理由」は「良い条件で融資が受けられたため」「購入資金が潤沢であるため」「所有物件を組み替えるため」などが減り、「節税のため」「本業の収益を補填するため」が増えています。

経済情勢が不動産投資に与える影響。4人に1人が「為替による影響があった」

為替や株、トランプ政権による不動産投資への影響は?投資家への意識調査からひも解く2

「昨今の物価上昇による不動産投資への影響はありましたか?」という質問には「影響があった」が54.9%。2024年の58.7%と比べて3.8ポイント減少したものの、依然として半数以上が物価上昇による影響を感じていることがわかります。

具体的な影響については、目立って増えたのが「建物の維持管理費の高騰」56.6%(前年比+8.3ポイント)。「家賃を値上げした」23.7%も+2.7%と少し増えました。前年比マイナスとなったものが「不動産投資を控えることにした」(昨年比-2.1ポイント)、「空室が増えた」(昨年比-2.2ポイント)でした。

維持管理費など支出も上がっているものの、家賃の値上げや空き室数の減少によって収益も増加している可能性があることがわかります。

「昨今の情勢の変化による不動産投資への影響はありましたか?」という質問に対しては53.8%が「影響はなかった」と回答。

しかし「為替による影響があった」23.1%、「日経平均株価の変動による影響があった」20.2%、「トランプ政権発足による影響があった」17.0%と影響を受けている人も。具体的には、以下のようなフリーコメントが挙がっていました。(抜粋・一部修正)

・円安のため外国の投資家の日本の不動産への投資件数が多くなり、不動産の価額がつり上がった
・資材価格高騰による修繕費、人件費上昇
・投資効率の観点から不動産から株への組換えを検討し始めている
・米国債金利上昇(価格下落)に伴い、コベナンツの修正を求められた

今後の不動産価格の見通しと投資家の予測

そろそろ下がるのでは?とここ数年言われ続けている不動産価格については「横ばいで推移する」が1.7ポイント増加し47.7%に。「上がる」は3.1ポイント減少し33.2%。2021年から同様の傾向が続いており、不動産価格は天井圏であるとの認識が続いています。それぞれの理由に以下のようなフリーコメントが挙がっていました。(一部修正)

上がると思う理由
・株式等金融市場の混乱が続く限り不動産市場への投資は継続されると思われるから
・円安と海外マネーの流入
・建材価格や人件費が高騰しているため

 

横ばいで推移すると思う理由
・物件価額がほぼ上限まできているものと思われる
・国内の個人投資家は買い控えをするが、海外投資家の存在が価格の下落を抑えてしまう
・中国マネーや金利、為替等を鑑みると大幅な上昇も下落も想定しづらいため

 

下がると思う理由
・所得が増えないなかで買い控えが始まるため
・円高が進み円が強くなり、外国人が買い控えるようになる
・アメリカの景気後退、イスラエルと周辺諸国との地政学リスクに端を発するショックで景気後退に陥るリスクがある

 

投資用物件の買い時感とその理由

不動産投資に対する融資金利については「上がると思う」が81.9%と多数派でした。それも関連して「今、投資用物件は買い時だと思いますか」という質問には、「買い時だと思う」25.6%、「間もなく買い時がくると思う」20.2%に対して「買い時はしばらくこないと思う」が54.2%と半数を超えています。その理由については以下のようなコメントが挙がっていました。(一部修正)

買い時だと思う理由
・買いたい人が多く、下がれば買う人がいるため価格が下がらない
・分譲マンションや住宅が高値で買い辛いので、しばらく賃貸で我慢する人が少なくないと推測できるから
・結局は行動力の問題で、買うと決めた時が買い時

 

間もなく買い時がくると思う理由
・金利上昇、物価高等で不動産を手ばなさなければならない方が出てくる
・実需に沿った価格形成に移っていくと予測するから
・金利上昇に伴い、円高で外国人による投資の手控え、住宅ローン金利上昇によるパワーカップルの買入余力低下により、不動産価格も落ち着いてくる可能性がある

 

買い時はしばらくこないと思う理由
・物件の高止まり、利回り低下、借入金利の上昇
・金利上昇と物件価格高騰に家賃が追いついておらず運用利回りが低下している
・借入金利が高い状態はしばらく続き、本当の富裕層でキャッシュで購入できる人しか買えないから

 

中長期的な投資意向と人気物件の傾向

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不動産投資における今後の展望について、「投資用不動産の購入を積極的に検討したい」が31.0%で前年から4.3 ポイントマイナス、「買い替えを検討したい」は40.1%で3.4ポイント増えました。「売却を検討したい」6.1%は昨年から+2.5%と売却の意向がやや高まっています。

これから購入を検討したい投資用不動産の物件種別を複数回答で答えてもらったところ、「一棟アパート」が最も多く51.3%、「一棟マンション」46.2%、「ファミリー向け区分マンション」30.3%が続きます。

これから購入を検討したい投資用物件の予算は「1,000万円以上~5,000万円未満」が最も多く23.8%ですが、2024年より目立って増えた価格帯は「1億5,000万円以上~2億円未満」(2024年4.7%→2025年8.7%)でした。

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購入を検討したい投資用物件のエリアは、「東京その他23区」54.9%、「東京都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)」43.0%が上位を占めています。「購入を検討する上で重視するポイント」では「エリア・立地」が8割を超えており、東京23区を中心とした都市部に人気が集中している傾向がみられます。

融資環境の変化と投資行動への影響

最後に、金融機関の融資状況についてです。「直近6か月の金融機関の融資姿勢について、どのような変化を感じますか」と聞いたところ、「審査が厳しくなった」が30.3%で前年比+11.3ポイント。「変化なし」は51.3%で-14ポイントでした。

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厳しくなったと回答した方へその理由を聞いたところ、「金利が高くなった」が82.1%で前年比+34.7ポイントと大幅に増加。「フルローンでの融資が出づらくなった」「求められる自己資金の割合が上がった」が同率40.5%で続きます。また、「融資期間が短くなった」22.6%も2024年より6.8ポイント増加しました。

融資状況の厳しさを反映してか、実際に直近3年間で投資用不動産を購入した人は、35.9%が「借り入れはしていない(キャッシュ購入)」と回答(前年比+6.8ポイント)。借り入れした人は「メガバンク」10.7%、「信金・信組」15.3%、「ノンバンク」9.2%が減少し、「地方銀行」30.5%が増加しています。

自己資金の充当は「購入価格の1割未満」が最も多く36.9%でした。借り入れた際の金利については「1~2%」51.2%が最多で「2~3%」25.0%が続きます。全体では「2%以下」が減少、「2%以上」が増加しており、実際に融資金利が上昇していることがわかりました。

まとめ

物価上昇の影響を受け、修繕費や人件費の高騰といったコスト増が投資家の負担となる一方で、家賃の値上げや空室の減少によって収益改善の兆しも見られます。こうしたプラス・マイナス両面の変化が、不動産投資の難しさと可能性を同時に浮き彫りにしています。

また、金融機関の融資姿勢が厳しさを増す中で、「今は買い時ではない」と考える投資家が過半数を占める状況です。それでも、購入を検討するならば「都心部の物件」という傾向は根強く、都市部への関心は依然として高いことがわかります。

株価や為替などの相場変動は、不動産価格や投資家の動向にも大きく影響します。こうした不確実性の高い経済環境の中では、情報収集を怠らず、柔軟かつ長期的な視点で戦略を立てることが、今後の不動産投資において重要な鍵となるでしょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年8月20日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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