金利上昇や地価高騰…不動産市況の変化を売り手・買い手の意識から読み解く

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公開日:2025年9月3日
更新日:2025年9月3日
金利上昇や地価高騰…不動産市況の変化を売り手・買い手の意識から読み解く1

価格が相場で決まる不動産は、市況の把握が欠かせません。2025年は利上げやトランプ関税の影響で経済が揺れ動き、不動産市場にも不透明感が広がっています。そこで、(株)いえらぶGROUPが不動産会社とエンドユーザーに実施した「2025年の不動産市況への意識に関するアンケート調査」をもとに、両者の市況に対する見方を探ります。

「今が買い時」と答えた不動産会社は28%

金利上昇や地価高騰…不動産市況の変化を売り手・買い手の意識から読み解く2

売り手側である不動産会社に「現在、住宅購入は『買い時』だと思いますか?」という質問をしたところ、「買い時だと思う」という回答が11.5%、「やや買い時だと思う」が16.5%。
買い時と考えている不動産会社は、全体で28.0%にとどまる結果となりました。

一方で、「どちらとも言えない」が最多の31.3%で、さらに「あまり買い時ではないと思う」19.8%、「買い時とは言えない」13.2%と、買い時であるともないともいえない反応です。

この結果から、多くの不動産会社にとって市場の先行きは不透明であり、そのため明確な判断を下しきれていない現状が見えます。

買い手側の見解は「買い時29.1%」。エンドユーザーも購入には慎重な姿勢

エンドユーザーに同じ質問をしたところ、「買い時だと思う」はわずか5.7%にとどまりました。「条件次第では買いたい」23.4%とあわせても29.1%。

さらに「あまり買い時とは思わない」24.8%、「買い時とは思わない」24.1%と回答した割合がそれぞれ約4分の1を占めています。

ここから、多くのエンドユーザーにとっても、売り手側である不動産会社と同様に市場への不透明感に不安を感じている様子が伺えます。住宅購入に対して慎重な姿勢であることは明白です。

買い時と判断した理由。「今後も値上がりは続くだろう」との予測が背景に

金利上昇や地価高騰…不動産市況の変化を売り手・買い手の意識から読み解く2

28%の不動産会社が「今が買い時」と判断した理由を見ると、「今後の値上がりに備えて」が最も多く66.7%。全国的な地価の上昇トレンドは続くであろうという予測に基づき、多くの不動産会社は将来的な価格上昇を見越して顧客に購入を提案していることがわかります。

マクロ指標である日経平均株価は、トランプ関税における交渉が合意した7月には一時4万2,000円台まで上昇。この上昇傾向が続くようであれば、不動産価格はさらに上昇するとの予測も背景にありそうです。

また、建築費においても業界の人手不足は依然として解消する見込みはなく、しばらくの間は「高値安定」の状態が続くと予想されます。

「今後も値上がりは続くだろう」との予測から考えるのであれば、本気で購入を考えている人は検討を急いだ方が良いという意味で「買い時」と言えるのかもしれません。

慎重な姿勢の背景には「金利リスク」。今後の金利上昇は?

金利上昇や地価高騰…不動産市況の変化を売り手・買い手の意識から読み解く2

「今が買い時」と判断した不動産会社が、「値上がり」に次いで多く回答した理由が「まだ金利が低い」というもの。

固定金利は長期金利(10年)の上昇を受け、今後の上昇が見込まれており、変動金利も1月の利上げを受けじわりじわりと上昇を続けています。また、前述のとおり7月のトランプ関税の交渉合意を受け、年内にも追加利上げが行われる可能性も高まりました。

とはいえ日銀は今のところ、これまでの金融政策を堅持する方針を明確に示すとともに、様々な施策を実行することで、金利の上昇を防いでいます。

小幅な上昇はあっても、今すぐの大幅な金利上昇の懸念はないだろうとの予測と、現在の金利はあくまで「低い」との意識から、ローンの面でも「欲しいなら今」と不動産会社は判断しているのです。

賃貸市場は3割の不動産会社が「借り時」と回答

金利上昇や地価高騰…不動産市況の変化を売り手・買い手の意識から読み解く2

賃貸市場はどのように見られているのでしょうか。不動産会社に「賃貸に関して、今は『借り時』だと思いますか?」と質問したところ、「借り時だと思う」(12.6%)と「やや借り時だと思う」(18.1%)を合わせて30.7%と3割強の不動産会社が「借り時」だと回答しました。

しかし、住宅購入と同様に「どちらとも言えない」が35.2%と最多の回答となるなど、多くの不動産会社が賃貸市場においても明確な見解を持てない現状が伺えます。

「借り時」の理由は「不動産価格の急騰に比べ賃料の上昇は比較的おだやか」

賃貸は「今が借り時」とした不動産会社の64.3%が「賃料上昇がおだやか」であることをその理由に挙げています。

インフレが続く日本においては、賃料も当然その影響を受けますが「購入」に比べれば、その上昇度合いはまだおだやかであるとの見解が背景にあるようです。

その他には「敷金・礼金ゼロ物件が増加」(30.4%)、「築浅・リノベ物件が充実」(23.2%)と続く結果に。緩やかな賃料動向に次いで、契約時の初期費用を抑えられる物件が増えていることが、借り手にとってのメリットとなるのではと認識されているようです。

賃貸住宅でも「省エネ性能を重視する」が37.8%

アンケートでは、賃貸物件を選ぶ際にはどこを重視しているのかについても調査。その結果は「駅近・交通の利便性」(60.9%)、「セキュリティ面」(48.4%)など、納得感のある回答が上位を占めました。

その他の回答の中で特筆すべきものが「省エネ性能」(37.8%)。立地や設備面以外にもコストパフォーマンスや環境面に注目が集まる理由には、昨今の猛暑や光熱費の高騰などもある可能性があります。

購入、賃貸も相談件数にとくに変化は見られず。市況の不確実性に様子見の姿勢か

不動産会社に対し、顧客からの「買い時/借り時」に関する質問や相談の件数が増えているか」と尋ねたところ、「特に変化はない」が42.3%と最も多く、「増えている」という回答は6.6%にとどまりました。

不動産市況に対する不動産会社・エンドユーザー双方の意識からは、売買・賃貸ともに慎重な姿勢が浮き彫りになりました。金利や地価の変動、インフレの影響など不確実性が高まる中で、明確な「買い時」「借り時」と言い切れない空気が市場を覆っています。

こうした状況下で、賃貸経営オーナーに求められるのは、単なる様子見ではなく、変化に対応できる柔軟な戦略です。例えば、省エネ性能や初期費用の抑制など、借り手が重視するポイントを意識した物件づくりや情報発信は、選ばれる物件になるための重要な要素になります。常にアンテナを張っておくことが成功につながっていくのではないでしょうか。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年9月3日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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