アパートの相続準備はいつから? 何をする? どうやる?|賃貸経営の相続

その他
この記事が気になる

【この記事が気になるとは】
会員様限定のサービスです。 会員の方は、「ログインする」そうでない方は、
会員登録して再度アクセスしてください。

ログインする ⁄  会員登録する
閉じる
公開日:2020年2月17日
更新日:2020年2月12日
アパートの相続準備はいつから? 何をする? どうやる?|賃貸経営の相続1

現役大家さんも、いつかは子供に賃貸経営を継がせたいと思っているのではないでしょうか。でもまだ準備をするのは早いのかもと考えていたら要注意。アパートやマンションの相続準備は出来るだけ早く始めることがおすすめです。ここでは、早く準備をする理由や準備するもの、引き継ぐ手段について紹介します。

賃貸経営の相続はいつから準備をするのか

相続の準備はできるだけ早く始めましょう。賃貸経営の引き継ぎは、物件を相続して「はい、終わり」とはいきません。オーナーズ・スタイル読者の大家さんからも、準備不足の状態で賃貸経営を引き継いで苦労したというお話があります。 さらに、忘れてはいけないのが認知症のリスク。認知症になるといろいろなことができなくなってしまいます。

相続準備はできるだけ早く! 子世代大家さんの実体験

実際に親や祖父から賃貸経営を引き継いだ大家さんたちは、どのように相続をされたのでしょうか。いつかは自分が引き継ぐということを意識していた方は、事前に不動産会社で経験を積まれたりという準備をできていたようです。

一方で、賃貸経営の状況がどうなっているのかという情報を全く把握できていなかったり、もう引き継ぎを始めなければ危ないという切羽詰まった状況になってしまったというケースも。事前に準備をしていなければ、必要な情報がない、賃貸経営のノウハウがわからない、などという苦労があるようです。

後の世代の方がスムーズに賃貸経営をスタートできるためには、できるだけ早く賃貸経営を引き継ぐことを意識し、経営に必要な情報や賃貸経営の知識を共有していくことが重要です。

子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】
子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【後編】

5人に1人は認知症!? 認知症になると相続だけでなく賃貸経営にもリスクが

まだまだ自分は大丈夫。そう楽観視していられないのが認知症です。内閣府が発表している資料によれば、2012年時点での認知症患者は約462万人。65歳以上の高齢者の約7人に1人、15%が認知症になっています。2025年には約5人に1人、20%の人が認知症になるとされています。このデータだけでもかなりの割合で認知症になっている人がいることがわかるでしょう。(参照:高齢者の健康・福祉|平成29年版高齢社会白書(概要版) – 内閣府

さらに、認知症予備軍とも言える健常者と認知症の中間とされる人は、2012年時点で約400万人とされています。つまり、認知症の方とほぼ同数の認知症予備軍の人がいる可能性があるということです。(参照:認知症施策の現状について−厚生労働省

これだけ認知症のリスクが上がっている現状を考えると、早めに相続準備をしておく必要があるのではないでしょうか。もし、相続準備をしないまま認知症になってしまった場合、以下のようなことができなくなります。

 

  • ・預金口座の引出し・解約
  • ・不動産の建築・売却契約
  • ・賃貸管理委託契約
  • ・大規模修繕の発注・契約
  • ・入居者との賃貸借契約
  • ・家賃滞納の督促
  • ・生命保険への加入
  • ・生前贈与
  • ・遺言書の作成
  • ・遺産分割協議への参加
  • ・株主は議決権の行使

 

相続の準備はもちろん、所有している賃貸物件に関する管理がほぼできなくなってしまいます。認知症のために必要な修繕を実施できず、物件の資産価値を下げてしまう可能性も。円滑な相続をして賃貸経営を引き継ぐのはもちろん、相続するまで資産価値を維持し続けるためにも事前の対策が必要です。

認知症になる前に打てる対策には、任意後見制度や信託などがあります。信託については後ほど詳しく紹介します。

「介護・生活支援」から「財産の管理運用」まで幅広く対応できる任意後見制度(成年後見制度)とは?

賃貸経営の相続準備で大事なこと

では賃貸経営の相続準備では何をすればいいのでしょうか。考えるべきは、

 

  • ・誰に
  • ・何を
  • ・どのような方法で

 

引き継ぐかです。賃貸オーナーにとっての相続は、相続税のことだけを考えていてはいけません。賃貸経営はあくまでも事業です。事業としてどのように引き継いでいくのかをしっかりと考えておく必要があります。

例えば相続する人が複数いた場合、みんなに平等に賃貸アパートやマンションを分けて相続するのか、誰か一人に集約して相続するのかを決めなければいけません。賃貸経営の環境は厳しくなってきているため、通常の事業と同じように経営をしてくれる後継者を選ぶことが必要です。

後継者が決まれば、物件とともに必要な情報などを引き継いでいきましょう。不動産の相続をして終わりではありません。物件や現金などの資産は、どのような方法で引き継ぐのかも検討が必要です。

誰に引き継ぐのか|後継者を選ぶ

相続というと資産に目が行きがちですが、誰に引き継ぐかはとても重要です。賃貸経営をやる気がないのに引き継いでしまえば、最悪の場合、経営に失敗して損をすることもあります。誰が引き継ぐのかは本人のやる気や資質などを見て決める必要があるため、早めの準備をしておく方がいいでしょう。

まずはみんなの意思を確認するために話し合いの場を設けます。その際には、現在の経営状況がわかるような試算表や財産管理表などを用意しておくことがおすすめです。そこで、現在の課題などを共有しながら意見をもらうことで間接的に賃貸経営に参加してもらいましょう。

みんなからもらった意見やアイデアで良さそうなものは取り入れて結果を報告してあげることで、やる気がなかった子供がやる気になることも。そのようにして一緒に事業改善を進めながら賃貸経営を疑似体験し、やる気や資質を見極めていきます。オーナーズ・スタイル読者の大家さんからも、ちょっとしたきっかけから子供が賃貸経営に興味を持つようになったという事例が届いています。

【相続対策】賃貸経営の跡継ぎ問題解決の3STEP

何を引き継ぐのか|賃貸経営で重要な「金・人・情報」

誰に引き継ぐのかが決まれば、相続に向けて引き継ぐものを準備していくことになります。賃貸経営で引き継ぐものは「金・人・情報」です。預貯金や不動産などの財産は、リスト化してわかりやすくしておきましょう。亡くなった後は預金が封鎖されるため、当面の賃貸経営で必要な資金は口座を移しておくなどの準備も必要になるかもしれません。

特に注意しておきたいのが人と情報です。財産は相続したけれど、人と情報が引き継ぎできていなくて苦労するというケースはあります。賃貸経営では、建築会社や管理会社、仲介会社など、さまざまなパートナーが重要な存在です。それぞれの会社を選んだポイントや現状の評価なども残しておけば、今後の賃貸経営の参考になります。

最後に情報です。入居者との契約情報などは、管理会社をつけていればそちらで管理しているので安心です。もし自主管理の場合にはリスト化して引き継ぎましょう。また、物件の計画的なメンテナンスを行うために、建物の修繕履歴や図面をまとめておきます。図面がなくなってしまうとリフォームや大規模修繕を行う際に調査が必要になり、膨大な手間とコストがかかります。

「資産一覧表(財産目録)」と主な項目

アパートの相続準備はいつから? 何をする? どうやる?|賃貸経営の相続2

「運営管理表」と主な項目

アパートの相続準備はいつから? 何をする? どうやる?|賃貸経営の相続2

どうやって引き継ぐのか|信託・贈与・法人化

賃貸経営を引き継ぐときに活用される手段には、信託、贈与、法人化などがあります。相続税の問題だけでなく、いつから引き継ぐのか、どのように引き継いでいくのかも考えながら最適な方法を選んでください。

信託

信託とは、字の通り信じて委託することです。一定の目的に沿って財産の管理や処分を委託することができます。古くから信託銀行が業務として行っていますが、近年注目を集めているのが家族信託です。家族信託は、家族の中から財産の保管をしてくれる人を選びます。

例えば、現在賃貸経営をしている方を委託者兼受益者、長男を受託者として信託契約を結びます。自分が元気なうちは長男と一緒に賃貸経営を行い、もし認知症になった場合や賃貸経営を引退する場合には長男が受託者として賃貸経営をそのまま継続。自分は受益者として生活費を受け取ることができます。

もし、後継者が二人いる場合、それぞれのアパートやマンションを分けて信託契約することも可能です。このように、事前に信託契約を結んでいれば、認知症などのリスクにも対応できます。

法人化

相続税対策もしておきたい場合、法人化が選択肢のひとつになります。賃貸経営をしている方の法人のタイプは3種類。

 

  • ・不動産所有法人
  • ・サブリース法人
  • ・不動産管理法人

 

相続税対策として検討したいのが不動産所有法人です。オーナーが所有している賃貸物件の所有権を法人に移して、賃料収入も法人のものにしてしまいます。あとは賃料収入から役員報酬を家族へ払うことで、贈与税がかからずに相続財産を減らして相続税の減少、相続税支払い資金の確保が可能です。

このときに土地はオーナー所有で残したまま、建物だけを法人へ移すことで相続税対策をしながら相続準備をするケースがあります。土地の価格は大きく変わらないが、建物は減価償却によって年々価値が下がっていくため、場合によっては法人へ移転(売却)するときの譲渡所得を0に近づけることが可能です。

その場合、土地については借地権を設定し、相続発生時に法人へと譲渡することになるでしょう。このとき、借地権の認定課税の問題があるため、土地の無償返還に関する届出書を出します。詳しいことは税理士に相談して進めてください。

法人化のメリットは?具体的な手順は?プロがアドバイス

贈与

最後に、生前贈与をして後継者へ物件の所有権を移転してしまう方法もあります。贈与することで賃料収入も相続人に入り、相続税の支払い資金を確保することもできます。このとき、相続時精算課税制度を活用することで、贈与税を抑えることが可能です。

相続時精算課税制度とは、生前贈与を促進するために創設された制度です。本来は贈与時にかかる贈与税を先送りし、相続時に贈与財産と相続財産を合算して相続税として精算します。

この制度には2500万円の非課税枠があり、これを超えた分にかかる税率が一律20%です。アパート経営やマンション経営で得られる収入も先に移転することで、引き継ぎと同時に相続税対策をできる場合があります。

賃貸経営の相続税のことは専門の税理士へ

賃貸経営の引き継ぎ方法は、状況によって最善策は変わってきます。特に相続税についてはちょっとしたことで金額が変わるため、不動産に詳しい税理士へ相談するべきです。実際、ほんの少しの違いで評価額が変わり、相続税が変わったという事例があります。

道路として使われている部分を切り離して相続税&固定資産税の減額に【差がつく!土地持ち相続】
面積の大きい土地の相続対策は一体 OR 分割どちらを選ぶ?|フジ相続税理士法人/フジ総合鑑定の[差が付く!土地持ち相続]

アパート経営の相続準備は子世代の賃貸経営成功のポイント

早めの相続準備は、マンションやアパートを相続して賃貸経営を引き継いだ子世代大家さんの成功を左右すると言っても過言ではありません。せっかく残すなら、喜ばれる形で残してあげる方がいいのではないでしょうか。

まだまだ先のことであっても、少しずつ現在の経営での課題や空室対策についての意見を求めて、興味づけを進めてみてください。引き継ぎ方はいろいろありますが、状況によって最適な手段が変わります。引き継ぎの方針なども含めて税理士へ相談して進めましょう。

この記事をシェアする

関連する企業レポート

関連するセミナー・イベント

関連する記事