子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】

その他
  • オーナー事例
この記事が気になる

【この記事が気になるとは】
会員様限定のサービスです。 会員の方は、「ログインする」そうでない方は、
会員登録して再度アクセスしてください。

ログインする ⁄  会員登録する
閉じる
公開日:2023年8月25日
更新日:2024年9月12日
子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】1

座談会に参加していただいた3名のオーナー(左から水谷さん、越水さん、野口さん)

2019年3月に公開した記事『子世代大家さん座談会』のノーカット版。子世代大家ならではの相続あるある話や苦労話など。世代交代が進みつつある大家業で今、活躍している二代目・三代目大家さんに、どのように事業を引き継いできたのか、次の世代にどう引き継いでいくか、経験や思いを話し合っていただいた。〈前編〉では「引き継ぎの経緯」の実体験から「引き継いだ後」のご自身の賃貸経営への取り組みなどをご紹介しよう。

参加者プロフィール

子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】2

水谷紀枝さん/一般社団法人日本不動産経営協会所属

管理物件:遠隔地にある親名義の不動産(駐車場、店舗、レジデンスなど)18 件を委託管理。自己所有も2 棟あり

子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】2

越水隆裕さん/賃貸UP-DATE 実行委員会・代表

管理物件:5棟66 室、自主管理。空室対策やDIYリフォームを行う傍ら、町おこしや異業種交流でも活躍。42 歳

子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】2

野口裕樹さん/行動する大家さんの会所属

管理物件:3棟25室、駐車場4ヶ所を、自社で管理。不動産仲介管理会社アクトプロパティ(株)代表。39 歳

わが家はこうして賃貸経営を引き継いだ

――親から引き継いだのは、どんな物件ですか。

野口:私の場合は、祖父から引き継いだ形になります。米穀店の経営に忙しかった両親はともに不動産に興味がなかったので、賃貸経営にはタッチしていません。祖父は、私が5歳くらいの頃に最初のマンションを買って、少しずつ物件を買い増して行きました。現在3棟25室を所有しています。

越水:僕は27歳の時に、親から「早いに越したことはない」と、親名義の5棟の物件管理を任されました。物件の土地は、戦後まだ価格が低い時期に祖父が購入し、農業を営んでいたところ。税制改正で都市農地への課税が強化されて、賃貸住宅を建て始めたようです。

水谷:私は親元から離れて住まいを構えていまして、1年ほど前から親名義になっている店舗や駐車場、レジ(居住用物件)など、18件の不動産の“遠隔管理”を始めました。自分名義の賃貸物件も2棟あるんですが、大家業と管理業はまた別ですね。

――早い時期から跡継ぎを意識されていましたか。

野口:祖父は、まだ小さい私をいろんな場所に連れて行ってくれて「今度ここにマンションが建つんだよ」と施工現場を見せてくれました。それで自然に建築が好きになり、不動産にも興味を持つようになったと思います。不動産会社に就職して、売買営業や管理など色々な部署を回って10年間実務を学びました。7年前に独立したのを機に、祖父の賃貸物件の管理を引き継ぎました。

祖父は2年前に100歳で亡くなりましたが、長生きしてくれて助かった。私がもっと若い時に亡くなっていたら、両親が相続して家業の傍ら片手間な運営になっていたかもしれません。自分が社会に出て実務経験を積んだり、祖父の生前に一緒に相続対策を考えて実行したりできたので、すごく引き継ぎがうまくいったと思います。

水谷:私も三代目ですが、一人っ子なので「いずれ物件管理を任させるな」と頭ではわかっていました。兄弟がいないので必然的に介護とその後の相続がセットでついてくると。でも、親に甘えていつまでも娘気分でいるうちに、父が80代半ばを過ぎて気力が弱ってきたことにハっと気付いて、「私がやらなきゃ」と重い腰を上げた感じです。

子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】2

――賃貸管理についての知識はあったのですか。

水谷:結婚後に宅建免許を取って、不動産会社で働いたりしましたが、想定と違う部署で失敗。出産を機に会社を辞めた後、管理の練習のために、小さな不動産会社をつくって試行錯誤しています。最近、大家さんの会に入って勉強し始めたばかりで、まだまだ経験は浅いです。

――越水さんは、スムーズに引き継げましたか。

越水:実家が洋裁店なんですが、親元で仕事をするのが嫌で(笑)大学を卒業してイギリスに留学し、ファッション関係の仕事をしていました。

2年ほどして祖父が他界しまして、相続手続きのタイミングで呼び戻されたんです。そのとき親族がもめていて、人間関係の大変さを目の当たりにしました。祖父の思いが詰まった不動産5棟が分散して処分されないように、すべて父が受け継ぎ、兄弟には金銭での分割でした。母は反対していましたし、自分も複数物件の賃貸管理なんて面倒だろうなと思ってましたね(苦笑)。

経営安定化のため、独自の改善をプラス

――引き継ぐまでに、親御さんと一緒に管理の業務をされなかったのですか。

越水:父は職人気質で「背中を見て学べ」「自分で考えろ」という感じで何一つ教えてくれませんでした。銀行の通帳一枚だけ渡されて、いきなり管理しろと。でも、初心者にできるわけがないでしょう。しかも、父親は銀行や不動産に任せきりで、ローンの利息や手数料もよく把握していませんでした。蓋を開けたら、満室にしてもお金が足らない状態になっていたので驚きましたよ!最初の5年くらいは嫌で仕方なかったですね。

――いきなり未知の世界に入って大変でしたね。どのように管理ノウハウを身に着けられたのですか。

越水:自主管理で誰にも相談できないので、失敗を重ねて学んでいくしかなかった。叩き上げです。35歳になるまで、管理会社があることすら知らず、集金も建物の修繕も大家さんがするもの、不動産会社はお客さんを付ける会社だと思っていました。怖いモノ知らずというか、20代の頃から水道のパッキン交換も、簡単な電気工事もやっていましたね。何百万円も溜まった家賃の滞納も、督促して全部一人で取り返したんですよ!

――それはすごい!どうやって?

越水:法人契約で複数の部屋と駐車場を貸していて、従業員と家族が住んでいた物件です。初めの頃は不動産会社に「滞納があります」と連絡すると、「わかりました、頑張って取り返してきますね」「無理でした」。そんなやりとりが続きました。貸している法人の社長と直接話をしても「次に大きな仕事が入れば全部返します」と言って、たまに数万円入れてくれるくらい。積りにつもって3年で300万円を超えてしまったんです。

最初は月に1回、そのうち週に1回訪問するようになって、辛抱強く通って相談に乗っているうちに、社長の息子さんが事業を立て直して、少しずつ返済してくれるようになり、滞納も減ったんです。今は良い関係ですよ。別のケースでは、収入に対して家賃の負担が重いようだったので、所有物件の中で家賃の安い方に引っ越してもらいました。「生活が楽になった」と喜んでくれました。

子世代大家さん座談会 親世代からの引き継ぎで 失敗したこと・良かったこと【前編】2

――親世代から引き継いで、みなさんの代になって改善したことはありますか。

野口:祖父は、建物が古くなったら、家賃を下げるなり、建て替えればいいという考え方でした。今の時代はそれでは厳しいので、自分なりのやり方をしています。引き継いだ時はボロボロで、お風呂やキッチンも一世代前の設備でした。そこで配管も含めて最新のモノに入れ替えたり、間取りも2DKから1LDKにしたり、思い切ってお金を掛けてリノベーションを行いました。

祖父は「お前、ずいぶん大胆にお金を使うな」と言いながら、寛容に見てくれましたね(笑)。長い目で見れば、その方が家賃収入は増えると、わかってもらえたのではないでしょうか。

――親のやり方を変えると反発されませんか。

越水:うちは祖父も父も「金は後からついてくるもの、むやみに家賃を上げるな」というタイプだったので、彼らの信頼を勝ち取るために工夫をしています。

僕はすごくカラフルな部屋づくりをしていますが、父親は放任主義ですからリフォームした部屋を一度も見たことはありません。でも、毎月の収支記録と決算に関しては税理士と父親がやるので、そこでマイナスの数字が出ると怒られる。プラスの数字、つまり純利益を見せ続けることがポイントです。かといって「リフォームで家賃が上がった」と自慢気に言うと怒られます。「10年後に家賃が下がるのを防ぐために、この家賃設定をした」と説明し、納得してくれています。

水谷:私は父から教えてもらいながら、建具の蝶番を調整したり、駐車場の白線引きをしたり、簡単な修繕は自分でしています。嫁入り道具として工具一式ももらいました(笑)。

私の代ではじめたことは、リフォームを行う時には複数社に相見積もりを取ったり、設備をネットで購入して施主支給をすることなど。少しずつ自分なりのやり方を採り入れています。

――親の代から付き合いのある協力会社を替えたことはありますか。

水谷:親が高齢になると、ちょっとした変化が負担になるので、協力会社一つ替えるのも大変です。協力会社さんのほうでも代替わりがあるので、それとタイミングを合わせて「知り合いとのお付き合いで…」と替えるのがスムーズかもしれません。

越水:うちは、古くから付き合いのある会社を残しながら、新たな職人も入れて世代交代しています。親が懇意にしていた協力会社の職人さんは60~70代のベテランでDIYをする僕にいろんな技術を教えてくれます。その一方で、緊急の時に動いてくれる30~40代の職人さんも開拓しました。

野口:祖父は不動産会社任せのところもあったので、私も方法を全て替えました。ただ、親戚で長い付き合いの税理士を替えた時は、さすがに祖父から苦言が出ましたけど(苦笑)。

この記事をシェアする

関連する企業レポート

関連するセミナー・イベント

関連する記事