法人化のメリットは?具体的な手順は?プロがアドバイス
節税効果やさまざまなメリットがあると言われている法人化。ですが、法人化を検討していても「効果はあるの?」「面倒そうだ」と、なかなか実行できない人も多いのではないでしょうか。会社設立の具体的な流れや設立する上でのポイントを税理士の浅野さんに伺いました。
個人・法人の相続・事業承継のスペシャリスト。企業オーナーや地主からの相談案件を主に担当。セミナー講演多数。
会社設立のメリットは年々増加
「昨今の税制改正で高額所得者への増税が厳しくなり、個人で節税できる方法は限られてきました。個人で不動産を持って所得が一人に集中すると、税負担は大きいまま。法人に移せば色々な対策が打てます」と浅野さんは指摘する。
賃貸経営を個人事業主から法人に変える最大のメリットは、所得税の節税効果だ。
ポイントは1)個人と法人の税率の差、2)所得分散効果、3)経費計上の柔軟性、の3点。法人税の実効税率はすでに30%を切っているので、個人所得税の累進税率が30%を超える場合(課税所得で900万円超)は、法人が有利になる可能性が高い。
また、個人オーナー一人に所得を集中させるより、法人にして家族に役員報酬を払って所得を分散化することで適用される累進税率が下がり、所得税は軽減する。さらに、経費計上が認められる法人専用の保険を活用して、節税をしながら、大規模修繕費や退職金を積み立てられるなど、多様な対策が打てる。また事業承継対策としても有効だ。
「最近では、認知症への対策として法人化する方も増えています。認知症になると契約行為などの意思決定ができなくなるからです」
会社設立の方法
会社のタイプ選びは、相続対策とセットで考える
法人設立にあたり最初に知っておきたいのは会社の種類だ。代表的なものとして「株式会社」と「合同会社(持分会社の一種)」がある。
「設立費用は、合同会社のほうが株式会社よりも15万円程度安くなりますが、配当や報酬の決定方法など運営面や、相続時の出資者の扱いなどに違いがあるため、注意が必要です。また一般社団法人も注目されていましたが、2018年度の税制改正で、過度な節税行為に縛りがかけられました。それぞれの中身をよく理解した上で選んでください」
また、会社の事業内容による分類としては3種類に分かれる。所得分散効果は「不動産所有法人→サブリース法人→不動産管理法人」の順番で低くなる。
「ただ、家賃収入やキャッシュフローの状況、オーナーの年齢や資産の引き継ぎ方などによって、どれが向いているかの判断は分かれます。オーナー個人の相続税に重点を置くなら、資産を法人に移転しない管理法人が向いているケースもあるからです」
定款に3種類すべての業務をできるように定めておけば、設立後の組織替えは難しくない。サブリース法人から始め、タイミングを見て不動産所有法人に転換することも可能だ。柔軟に考えよう。
法人のタイプは3種類 目的に合わせて適切に選ぼう
賃貸住宅の所有権をオーナーから法人に移し、賃料収入をすべて法人が取得。オーナーや家族に報酬を払うことによる所得分散効果が一番大きい。
賃貸住宅の所有権をオーナーに残し、法人が一括借り上げ。法人は15 ~ 20%程度の報酬を得るケースもある。
賃貸管理業務を法人で行う。法人は5 ~ 10%程度の管理手数料を得る。業務内容と報酬の妥当性に注意。