法人化のメリットは?具体的な手順は?プロがアドバイス

相続/節税/保険
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公開日:2018年9月3日
更新日:2019年11月18日

手続き代行で手間いらず2~3週間で会社設立

会社の設立手続きは、下記のように多岐にわたるが、実際には司法書士などの専門家が代行してくれるので、オーナーは必要事項の判断をする程度で、あまり手間はかからない。通常で2~3週間、長くても1カ月程度で設立できる。

「実際の設立手続きよりも、前段階の準備に時間がかかります。あらかじめ相続対策を含めて検討し、誰が株を持ち、誰を役員にするのかなど、会社の基本情報を決める必要があるからです。家族でよく話し合った上で進めてください」

設立コストは株式会社の場合、定款認証の手数料5万円(合同会社は不要)、定款認証用の印紙代4万円(電子定款は不要)、登録免許税15万円~(合同会社は6万円~)、登記手数料が数千円など、合計25万円程度(合同会社は10万円程度)。他に手続きを代行する司法書士への報酬が5~10万円がかかり、資本金も必要だ。

なお、譲渡価格(簿価)を上回るローンが残る不動産を法人に移転する場合、自己資金で差額精算を行うこともあるのでご注意を。

新会社設立から法人営業開始までの流れ

  • 新会社設立の手続き (株式会社の場合)

    ❶会社の基本情報を決める
    (商号、本店所在地、事業目的、資本金、発起人/出資者、役員、事業年度、公告方法、決算日、株式譲渡制限など)
     ❷社印、実印、銀行印の3 点セットを作る
     ❸定款の作成と認証(公証役場)
     ❹代表発起人の口座に資本金を振り込み
     ❺登記書類作成、申請(法務局)

  • 各種契約の名義変更・届出

    ❶新会社名義の銀行口座を開設
     ❷国税について税務署に届出
     ❸地方税について地方自治体に届出
     ❹社会保険について年金事務所に届出

  • 開業準備

    【❶ - A不動産所有法人の場合】
    事業用資産の所有権を法人へ移転。通常は、譲渡税がかからないように建物のみを簿価で法人に売却する。オーナー所有の土地に地代を払う契約をし、「無償返還の届出書」を税務署へ提出

     【❶ - B管理法人・サブリースの場合】
    業務内容と管理報酬を決め、管理委託契約・サブリース契約を締結

     ❷入居者への告知
    自主管理の場合、入居者に対してオーナーが法人に代わり、家賃の振り込み口座を変更する旨の通知を個別に実施。管理会
    社が収納代行をしている場合は管理会社との手続きのみ

  • 法人での事業開始

    法人設立後の実務は、特に個人事業主時代と変わらない。顧問税理士と連携して、常に収支業況をチェックしながら必要な
    対策を実行

法人の運用

ランニングコストの大小より、運営次第で収支に大差

会社設立後には運営費用も変わる。顧問税理士への報酬は、個人の確定申告では年20~30万円程度だが、法人では決算書作成と申告で倍以上になるケースもある。資産の量や経営サポートなどのサービス内容によって違う。この他、法人住民税の均等割が最低でも年間7万円かかり、収支が赤字でも必要だ。社会保険(厚生年金・健康保険)への加入も義務となる。

負担が大きくなると思うかもしれないが、これらのランニングコストと節税効果を併せて、総合的な手取り額が増えるかどうかを試算した上で法人化の成否を判断するのが一般的だ。目先の金額に捉われないほうがいいだろう。

「資産移転時のローン金利や返済期間などの借り換え条件によって、手取り額は変わります。また、役員報酬の配分、生命保険の利用など、法人設立後の運営・活用次第で、収支に大きな差が出ます」

会社設立の注意

時期によって変化するメリット

会社設立のメリットがあるかどうかは、単に個人の所得規模だけでは決められない面がある。相続発生の見通し、所有している賃貸住宅の築年数、借入金の残高などは年々変化するため、時期によって効果が変わるからだ。

「数年前に試算して『効果がない』と思っていても、資産や収支・家族の状況が変わって、節税効果が高まっていることもあります。いつどういう形で法人化するか、タイミングの見極めが重要です」

法人を設立した後、効果が出なければ「休眠会社」にし、状況が変わってから再開させることも可能だ。

こうした様々なスキームを駆使してサポートしてくれる、税務コンサルタントと連携できるかどうか。それが、法人化が成功するか否かの分かれ目となる。

オーナー自身が法人化について検証するのは、なかなか難しい。信頼できる専門家に相談して総合的に判断しよう。新たな展望が開けるかもしれない。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2018年3月6日時点のものです。

取材・文/木村 元紀

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