人口が増えるエリアの共通点とは?~東京圏「人口3割超」の裏で進む選別~
今後の賃貸経営では、「東京圏だから安心」という考え方だけでは十分ではありません。本記事では調査結果をもとに、人口減少時代でも選ばれ続けるエリアの共通点と、オーナーが今後取るべき実践的な対策を解説します。
東京圏「人口3割超」の裏で始まるエリアの選別

「2025年(令和7年)国勢調査人口速報集計の分析」
2025年国勢調査速報によると、日本の総人口は2020年比で309万7千人減少しました。人口が増加した都道府県は東京都と沖縄県のみで、それ以外の45道府県では人口減少が続いています。

「2025年(令和7年)国勢調査人口速報集計の分析」
一方で、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の人口は約3,698万人となり、全国人口の30.1%を占め、初めて3割を超えました。

「2025年(令和7年)国勢調査人口速報集計の分析」
一見すると「東京への一極集中は今後も続く」と考えたくなる数字ですが、実際の中身は少し異なります。東京圏全体では増加しているものの、その増加を支えているのは東京都だけです。
埼玉県、千葉県、神奈川県はいずれも人口減少へ転じており、「東京圏だから人口が増える」という時代ではなくなりつつあります。つまり今後の不動産投資では、「東京圏か地方か」ではなく、「どのエリアが選ばれるのか」という視点が、これまで以上に重要になります。
東京でも人口動態に変化。都心ですら明暗が分かれ始めた

「2025年(令和7年)国勢調査人口速報集計の分析」
東京都全体では人口が増加しています。しかし東京23区を見ると、その動きは均一ではありません。人口が増えた区もあれば、
◆渋谷区
◆目黒区
◆千代田区などの区は人口減少へ転じています。従来であれば「人気エリア」と考えられてきた地域です。
その背景には、
◆マンション価格の高騰
◆家賃の上昇
◆居住コストの上昇
などがあり、居住コストが上昇したことで転出超過となったと分析されています。つまりブランド力だけでは人口を維持できない時代になったということです。
その一方で、
◆江東区
◆中央区
◆台東区
◆墨田区
◆港区
などでは再開発やマンション供給が続き、高い人口増加率を維持しています。今後は「人気エリアだから安心」という考え方よりも、「人口が実際に流入しているか」を確認することが重要になります。
人口が増えているのは「地味だが住みやすい街」

「2025年(令和7年)国勢調査人口速報集計の分析」
今回の調査で印象的なのは、周辺3県でも人口が増えている自治体が存在することです。
たとえば、
◆埼玉県では、朝霞市・蕨市・さいたま市
◆千葉県では、流山市・印西市・柏市
◆神奈川県では、海老名市・大和市・藤沢市・川崎市
などが人口増加となっています。これらの地域には共通点があります。
いずれも、
◆東京へのアクセスが良い
◆鉄道整備など利便性向上が進んだ
◆住宅供給が活発
という特徴があります。
必ずしも知名度が高い街ではありません。しかし「暮らしやすさ」が評価され、着実に人口を集めています。賃貸需要も、このような実需に支えられたエリアほど安定しやすいと考えられます。
郊外・地方でも明暗は分かれている
一方で、人口減少が加速しているエリアも少なくありません。東京圏外縁部や多摩地域では、人口減少率が高い自治体が目立っています。
これは単に転出だけではなく、少子高齢化による自然減が大きく影響しています。つまり今後は、「人口流入が止まった地域ほど空室リスクが高まりやすい」ことを意味します。
ただし、「人口減少=すぐ売却」という考え方も適切ではありません。人口が減少していても、
◆大学
◆工場
◆物流施設
◆病院
◆大型商業施設などの雇用を生み出す施設
がある地域では、一定の賃貸需要が維持されるケースもあります。数字だけを見るのではなく、その地域の実情まで確認することが重要です。
人口が増えるエリアに共通する3つの条件
今回の調査結果からは、人口が増えているエリアには3つの共通点が見えてきます。
①交通利便性が高い
単に駅が近いことだけではありません。近年は在宅勤務が定着したとはいえ、完全リモート勤務の割合は限定的であり、多くの社会人は週に数日以上出社しています。そのため、通勤時間の短縮や複数路線が利用できる利便性は依然として住まい選びの重要な条件です。
また、鉄道新線の開業や駅前再整備が予定されている地域では、将来的な人口流入も期待されやすく、賃貸需要が底堅く推移する傾向があります。
②再開発や住宅供給が続いている
人口が増える街では、大規模マンションの供給だけでなく、商業施設や公共施設、道路整備なども同時に進むケースが少なくありません。こうした都市整備は生活利便性を高め、新たな住民を呼び込む好循環を生みます。
一方で、新築供給が止まり、街全体の更新が進まない地域では人口流入が鈍化しやすく、空室率にも影響を与える可能性があります。
③生活利便施設が充実している
スーパーや病院だけではなく、
◆保育園
◆学校
◆ドラッグストア
◆行政サービス
◆公園
など、日常生活を支える施設が徒歩圏内に揃う街は、単身者だけでなくファミリー層にも選ばれやすくなります。
人口が安定している地域ほど、こうした生活インフラが継続的に整備される傾向があります。これらは賃貸需要にも直結する条件です。人口統計だけでなく、「なぜ人口が増えているのか」まで読み解くことが重要になります。
今回の調査で人口が増えている自治体を見ると、いずれも「東京だから」「都市部だから」という共通点ではなく、交通利便性や再開発、生活利便性など、住む理由が明確な地域であることが分かります。人口減少時代には、漠然と人気のある街よりも、「住み続ける理由」がある街ほど賃貸需要が維持されやすいと考えられます。
地主・賃貸オーナーが今できる3つの実践
人口動態は個人で変えることはできません。しかし、人口変化を踏まえた経営判断は可能です。
まず重要なのは、自分の物件がある自治体の人口推移を継続的に確認することです。国勢調査は5年ごとですが、住民基本台帳人口や自治体の統計資料を活用すれば、毎年の動向も把握できます。
次に確認したいのが、再開発計画や鉄道新線の整備計画、商業施設の開業予定などです。人口が減少している地域でも、こうした要因によって将来的に需要が回復するケースがあります。また、近隣の競合物件の家賃水準や空室率、募集条件も定期的に確認し、自身の物件が市場の中でどの位置にあるのかを把握することが大切です。
さらに、保有を続けるのであれば、設備更新やリノベーションによって競争力を維持する視点も欠かせません。人口が伸び悩むエリアほど、入居者から選ばれる理由を物件自体に持たせることが重要になります。判断に迷う場合は、管理会社や地域事情に詳しい専門家の意見も参考にしながら、早めに方向性を整理しておくことが大切です。
まとめ:「エリアが縮む」時代に問われるのは物件の競争力
2025年国勢調査速報は、「東京一極集中が続いている」という事実と同時に、「東京圏の中でも選別が始まっている」という新たな現実を示しました。
東京都全体では人口が増加している一方、神奈川県・埼玉県・千葉県では減少へ転じ、東京23区内でも人口を伸ばす地域と減少する地域が明確に分かれています。今後は「東京圏だから安心」「人気エリアだから大丈夫」という従来の考え方だけでは、安定した賃貸経営は難しくなるでしょう。
これからのオーナーに求められるのは、人口動態や再開発計画、市場環境を継続的に確認し、自身の物件の競争力を高め続けることです。人口減少時代の賃貸経営では、「人口が増えている地域」を追うのではなく、「選ばれ続ける理由がある地域」を見極める視点が、これまで以上に重要になっていくでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する026年8月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















