失敗なし!大規模修繕会社の選び方と見積もりのポイント
- 大規模修繕(外壁・屋根)
大規模修繕工事を検討していても、「どこに頼んでいいか迷っている」「費用が適正なのか疑問」といった声が少なくない。そこで会社の選び方や見積もりチェック法について2人の専門家に伺った。
賃貸オーナーに大規模修繕工事のアドバイス・コンサルティングを行う。セミナー講師なども務める。
分譲マンション管理組合コンサルとして1999 年に(株)シーアイピー設立。テレビ番組出演などメディア実績も多数。
大規模修繕会社の選び方
適切な大規模修繕の第一歩は建物の劣化診断から
初めに大規模修繕の流れを押さえておこう(図1参照)。ポイントは、施工会社に当たる前に、建物の劣化診断を受けることだ。
「修繕計画通りに実施すべきか、余裕があるかを判断するには劣化診断が必要。建物の劣化状態は、潮風にさらされる湾岸エリアと内陸エリアなど、環境で異なります。専門の検査会社に依頼して、第三者の立場から調査してもらうことをおすすめします。費用はシングル10室ほどの規模なら、6~7万円くらいでしょう」(土屋さん)
劣化診断の依頼先は、「既存住宅状況調査技術者」などが在籍する設計事務所などが望ましい。この資格の所有者だけが中古住宅の既存住宅状況調査を行うことができるので、客観的な立場から劣化状況を診断してくれるだろう。
建物に合った発注方式は「一括」か「分離」か
施工会社の選定前に知っておきたいのが発注方式(図2参照)。
発注方式は2種類あり、賃貸マンションの大規模修繕で多いのが「責任施工方式」だ。設計施工を一括で発注し、新築時の建築会社などに頼むケースが多い。しかし、「コストは高めで、工事監理も甘くなることも。信頼できる会社を選びましょう」(須藤さん)
そうなると、身近な会社に依頼するのではなく、専門会社などオーナーが複数社をリストアップし、絞り込むことがカギとなる。
一方で、分譲マンションなどに多いのが「設計管理方式」だ。
「設計と施工を分離発注する『設計監理方式』は、設計担当が工事監理も行うので品質維持と工事費の低コスト化が両立可能。しかし、専門家への費用が発生するため、小規模マンションやアパートなど工事費が1,000万円以下の場合は、逆に高くなります」(須藤さん)
実績チェックのコツ入居者対応もカギを握る
では、どのように会社を選べばいいのか。図3に挙げたポイントから、主な項目を解説しよう。
「税込500万円未満の小規模リフォーム工事には、特別な免許はいりません。しかし、大規模修繕は、建設業免許があったほうがいいでしょう。経営業務の管理責任者としての経験、専任技術者の設置などの許可要件をクリアする必要がありますから、一定の信頼性が担保できます」(土屋さん)
施工会社の信頼性は、単に社歴の長さで決まるわけではなく、大規模修繕の棟数や評判に左右される。
「なるべく物件の近くの施工事例を見学に行き、オーナーを紹介してもらい、感想を聞いてみることです。紹介を断るような施工会社は避けたほうがいい」(須藤さん)
大規模修繕は、入居者が生活している状態で工事を進める必要がある。多数の職人が出入りをする上に、騒音や振動などのクレーム対応を間違えると、退去を助長しかねない。施工会社が入居者対応に慣れているかどうかが重要だ。
中でもカギを握るのは、現場代理人、いわゆる現場監督の資質だという。施工現場での経験年数や人柄、入居者とのコミュニケーション力が問われるため、できれば面談して話を聞いてみよう。
「アフターサービスの内容を確認しましょう。また、ちょっとした不具合でも小回りが利いた対応をしてくれるかが大事。すぐに対応するには、施工会社が物件の近くにあることもポイントです」(土屋さん)
「5~10人の会社なら、社長の一声で対応が変わる。社長の人柄は確かめたほうがいいでしょう」(須藤さん)