どうする?所有者不明土地問題。国も活用に本腰!新たに施行される法律、補助金について解説
住んでいた人が亡くなってしまい現在の所有者が分からない土地や、所有者が判明しても連絡がつかない「所有者不明土地」が増えています。この問題を受けて政府では、昨年閣議決定された「骨太の方針2022」にも「空き家等の利活用や基本方針等に基づく所有者不明土地等対策を進める」と明記。所有者不明土地の解消に向けて、令和5年以降は不動産に関する法律が大きく変わっていきます。どんな内容なのか、詳しく解説します。
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所有者不明土地とは?
「所有者不明土地」とは、「①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地」「②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地」のことを指します。
地方に行くと、長らく手入れされず荒れ放題で、倒壊の危険や治安への悪影響がありそうな空き家や空地を見ることがありますが、これらは住んでいた人が亡くなった後で相続登記がされていない「所有者不明土地」の可能性が大。
実は現在、相続登記の申請は義務ではないため、申請しなくても不利益が生じることはありません。そのため、都市部への人口移動などで所有者による土地の所有意識も希薄になり、地方を中心に「誰が所有者か分からない、誰も管理しない」土地が増えているのです。
所有者不明土地の割合は、令和3年の国交省調査によると24%。実に九州本島の大きさより広い土地が所有者不明の状態なのです。高齢化などにより、これからもますます増えるとみられる所有者不明土地の防止を目的に国も本腰を入れており、法改正や新しい制度が創生されます。
各種民法見直しは令和5年4月1日からスタート
まず令和5年4月1日より施行されているのが、土地利用の円滑化を目指した「所有者不明土地の利用の円滑化を図る方策」。以下のような民法の見直しが行われています。
調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになります。
管理人は弁護士や司法書士などで、裁判所の許可があれば、土地の売却なども可能になります。これにより、公共事業や民間取引の活性化につながることが期待できます。
共有状態にある不動産について、連絡がつかない共有者が一人でもいると、利用や処分の決定ができなくなる問題を解消するものです。
例えば、不動産について軽微な変更をする場合は全員の同意は不要で、持分の過半数で決定可に。所在不明の共有者がいる場合に、他の共有者が地方裁判所に申し立てて許可を得れば、共有関係を解消できるようになりました。
隣地の所有者やその所在を調査しても分からない場合に、隣地から伸びてきている枝の切取り等ができるとともに、隣地を一時的に使用することができることを明文化。
ライフラインを自分の土地に引き込むために導管等の設備を他人の土地に設置すること、他人の所有する設備を使用するための事前通知や、費用負担についてのルールも整備されました。
相続が発生してから遺産分割がされないまま長期間放置されると、相続が繰り返されてどんどん相続人が増え、遺産の管理・処分が困難になるという問題があります。そのため、「被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分を考慮せず、法定相続分又は指定相続分によって画一的に行うこと」とされました。
これは、改正法の施行日前に開始した相続についても適用されます(5年の猶予期間あり)。そのため、早めの遺産分割が必要となります。
令和6年4月1日より相続登記の申請が義務化。申請漏れには罰則も
令和6年4月からは、不動産を取得した相続人が取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられます。さらに、正当な理由なく登記を申請しなかった場合は罰金が科せられるように改正。施行以前に相続した土地も、未登記であれば義務化の対象です。(3年間の猶予期間あり)
あわせて、資料収集などの登記手続の負担を軽減するために、相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申告することで登記ができるように簡略化。添付書面も簡略化され、非課税となります。
より手放しやすくするために、相続した土地を国に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」も創設
遠く離れた実家など、管理が難しい遠方の土地、建物を相続しても、かえって負担となる事例が増えています。このような、相続された土地が所有者不明土地の予備軍となる現状を解消するため、相続した土地を手放して国庫に帰属させることができる制度が新たに創設されました。これを「相続土地国庫帰属制度」といいます。
基本的に、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば申請できます。ただし、売買等によって任意に土地を取得した方や法人は対象になりません。共有地については、相続人を含む共有者全員で申請する必要があります。
以下のような土地は対象外となります。
国庫帰属が認められない土地の主な例 |
・建物、工作物、車両等がある土地 ・土壌汚染や埋設物がある土地 ・危険な崖がある土地 ・境界が明らかでない土地 ・担保権などの権利が設定されている土地 ・通路など他人による使用が予定される土地 |
つまり、もし実家を相続したとしても、制度を利用するためには更地にする必要があります。
申請後、法務大臣の審査が実施され、その審査手数料として一筆14,000円がかかるほか、承認を受けた場合には、負担金(10年分の土地管理費相当額)を納付する必要があります。負担金は宅地や農地、森林などは面積に応じて算定される他、それ以外は面積にかかわらず20万円です。
空き家の活用方法を募集する「空き家対策モデル事業」
所有者不明土地への施策とともに、空き家の増加抑制に関する取り組みも進みつつあります。令和5年3月3日には「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」も閣議決定。4月には「空き家対策モデル事業」が始まりました。
「空き家対策モデル事業」は、NPOや民間事業者等から空き家の活用やビジネスモデルを募集し、それに対して国が支援するというもの。例えば、地方公共団体の空き家対策を効率化するツールや、空き家所有者の活用・除却等の判断を迅速化し、手間やコストを軽減・適正化するサービスの開発といった提案が期待されています。
上記のようなソフト提案部門と、空き家の改修工事や除却工事の技術や工法、施工プロセス等について評価するハード提案部門に分かれています。
ソフト提案に要する費用については定額、ハード提案の改修工事については1/3、除却工事は2/5、除却後の土地の整備に要する費用は1/3が補助されます。募集については令和5年6月2日に締め切られており、採択予定時期は令和5年7月中旬を予定しています。
既存住宅の性能向上を目指す「長期優良住宅化リフォーム推進事業」
さらに、良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を測ることを目的に、令和5年4月7日より「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の募集が始まりました。以下の条件を満たす戸建住宅または共同住宅のリフォーム工事が対象となります。
①インスペクション(現況調査)を実施し、維持保全計画・履歴を作成すること
②工事後に耐震性と劣化対策、省エネルギー性が確保されていること
補助対象となるのは、性能向上リフォーム工事に要する費用や子育て世帯向け改修工事に要する費用、インスペクション、維持保全計画・履歴作成に要する費用で、1戸あたり100万円を限度額として、対象費用の1/3が補助されます。※長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合は1戸あたり200万円が限度額となります。
令和5年度の評価基準型については予算上限に達したため、残念ながら交付申請受付は締め切られました。しかし、住宅登録は可能で、もし申請受付が再開した場合はそれを用いて申請ができる予定です。受付申請が再開するかは未定ですが、建築を検討している方は、最新の情報を随時ホームページで確認するようにしましょう。
※この記事内の情報は2023年6月7日時点のものです。
取材・文/丸石 綾野
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