賃貸アパート・マンションの経営開始後に発生する税金の種類と特徴[資金・税金#4]
アパート・マンション経営の目的が相続対策であれ、節税であれ、常に税金は付いて回ります。賃貸経営を続ける以上、切っても切れない税金について、改めて整理して紹介しましょう。
住宅用地は固都税が大幅に軽減
不動産を所有していると、毎年かかるのが固定資産税と都市計画税です。いわゆる「保有税」の一種で、賃貸経営の経費にカウントするときは「固都税」と略されたりします。固定資産税は、全国にあるすべての土地建物に課税されますが、都市計画税は都市計画区域外では課税されません。
税率は、固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%(自治体によって異なるケースもある)。評価額にこの税率を掛け合わせて税額を算出します。
重要なのは、住宅用地の場合は評価額が大幅に軽減される特例があること。図1のように、1戸当たり200㎡以下の小規模住宅用地は、固定資産税が1/6,都市計画税が1/3になります。
つまり、更地にアパート・マンションを建てると税額が激減するわけです。固定資産税の節税のために、土地活用を始めたケースも多いでしょう。
なお、特例の対象は住宅が建っている土地です。店舗や事務所などは軽減されません。併用住宅の場合は、住宅の床面積の割合に応じて住宅用地として認められる比率が決められています。
また、1戸の床面積が40㎡以上240㎡未満の新築建物については、当初3~7年間は税額が半分になる特例があります。床面積が小さい一般的な単身向けのワンルームや1Kは特例が適用されません。
所得税は収入が多いほど税率が高い。青色申告を活かそう
個人事業でアパート・マンション経営をしていると、家賃収入から経費を差し引いた不動産所得に対して所得税と住民税がかかります。会社員や会社経営者で給与所得など別の所得がある場合は、すべて合算して計算する総合課税です。
所得税の特徴は図2の通り、課税所得が高くなるほど税率も上がる「超過累進税率」という点にあります。住民税は課税所得金額にかかわらず一律10%。所得税と住民税を合わせると、最高税率が55%に達し、所得の半分以上が税金で持って行かれてしまうわけです。
一方、所得が高くなるほど、基礎控除や配偶者控除、会社員の給与所得控除は縮小される仕組みになっています。つまり、個人は増税の傾向が強まっていることは間違いありません。そのため、高額所得者がアパート・マンション経営を活用した節税に取り組むケースが増えていると言えます。
アパート・マンション経営が自治体から不動産貸付業に認定されると、事業税もかかります。税額は、[(不動産所得―事業主控除290万円※)×税率5%]です。不動産貸付業の認定基準は、賃貸住宅の場合、戸建てが10棟以上、共同住宅で10室以上。住宅以外は同5棟10室以上です。小規模なアパート1~2棟で事業的規模は超えてしまうでしょう。
※年間控除額。営業期間が1年に満たない場合は月割りで計算
また、所得税の確定申告では、青色申告と白色申告の区別があることも知っておきましょう。青色申告は、税務署に開業届を出して承認申請を受けた上で一定の形式に則った帳簿を作成する方式。
白色申告は特別な手続きが不要で、簡易帳簿で構いません。青色申告の方がハードルは高い分、図3のようなメリットがあります。
親族への専従者給与が大幅に認められていること、損失の繰り越し控除ができること、青色申告特別控除が受けられることなどが特徴です。
青色申告特別控除は、運用資産が事業的規模で、電子申告を行う場合に最高65万円になります。所得税の「事業的規模」とは、住宅・非住宅を問わず「5棟10室以上」です。事業税の場合との微妙な規定の違いに注意してください。
所得が高いと法人税率のほうが低い。法人化も検討しよう
最後に法人税についても触れておきましょう。増税気味の個人所得税とは反対に、法人税は減税方向に傾いています。
法人税は、図4のように、法人税、法人住民税、法人事業税に加えて、頻繁に変わる地方〇〇税など、種類が多く、複雑な構造になっていますから、すべてを含めた「実効税率」で見るのが一般的です。
たくさんの税目が重なっているため、合計すると税率が高くなりそうに思えますが、実際は、中間所得層の個人所得税よりも低くなっています。
しかも、税率は原則一本で、個人所得税のような累進性はありません。中小法人で課税所得が800万円未満の場合に、特例税率が適用されるため、複数の段階に分かれています。
こうした法人税の特徴を生かし、法人を設立してアパート・マンション経営を行うオーナーも少なくありません。法人化には税率以外にも様々なメリットがあります。特に他の所得が大きい場合には、前向きに検討してみたほうが良いでしょう。
文/木村 元紀
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