相続財産の評価方法と調べ方[資金・税金#7]

アパート・マンション経営の収益性や節税効果の良しあしを判断する上で、重要なポイントになるのが土地と建物の相続税評価額です。そこで、種類や用途によって大きく異なる不動産の評価方法と調べ方について解説しましょう。

不動産の相続税評価額は種類と用途で異なる

亡くなった人が所有していた財産のうち、墓地や仏壇・仏具などの祭祀関係を除いたものは、すべて相続税の対象になります。

現金以外は、基本的に“時価”で課税されるかたちになり、財産の種類によって時価の評価方法が異なる点を、まず押さえておきましょう。主な評価方法は図1の通りです。

相続財産の評価方法と調べ方[資金・税金#7]2

※土地は宅地の場合。農地や原野・山林などの場合は評価方法が異なる

不動産の場合は、土地か建物か、自分で使うか他人に貸すか、つまり種類と用途によって大きく異なっているのが特徴です。この仕組みが節税対策につながってきます。それぞれについて解説しましょう。

土地は路線価を基に計算。借地権割合、借家権割合もチェック

まず、主に市街地にある土地(宅地)のうち、自宅の敷地や何もない更地などの自用地の場合は、路線価方式で評価されます。

路線価とは、道路に面した土地の1m2当たりの評価額です。調べ方も簡単。国税庁が公開している下図のような「路線価図」を見ればわかります。

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図2.路線価の例(国税庁「路線価図・評価倍率表」より)

たとえば、図2は東京都大田区田園調布の路線価図で、土地の所在地の前面道路に「900C」などと記載されています。数字は千円単位の1m2当たり単価で、この例では90万円。基本的には、この単価に土地面積をかけ合わせれば土地の相続税評価額が割り出せます。

これが基本です(その他の地区区分などの詳細は省略)。路線価は、国土交通省が毎年3月下旬に発表する「公示地価」の8割程度の水準を目途に定められていることを覚えておきましょう。

上記の数字の後についているアルファベット記号は、借地権割合です。路線価図の右上に、記号と借地権割合の対応表が出ていています。Aの90%からGの30%まで7種類です。「C」なら70%。利便性の高い都心に近いエリアほど借地権割合は高くなるのが一般的です。

この借地権割合は、貸地や貸家建付地の評価額を算出するときに使います。「貸宅地」の場合は、「自用地の評価額(路線価)×(1―借地権割合)」(図1参照)。自用地の路線価が上図の「900C」だとすると、「90万円×(1―70%)=27万円」です。貸宅地にしている場合の地主の権利を「底地権」とも言います。

手持ちの土地にアパート・マンションを建築して賃貸経営をする場合、土地の評価は「貸家建付地」となります。

計算式は「自用地の評価額(路線価)×(1―借地権割合×借家権割合)※」。借家権割合は全国一律で30%です。同じように路線価が「900C」だとすると、「90万円×(1―70%×30%)=71.1万円」となります。
※図1では「賃貸割合」も計算式に入っていますが、これについては後述。ここでは「賃貸割合=100%」を前提に試算しています。

なお、市街地以外で道路網が整備されていない地域の土地は「倍率方式」で計算します。これは土地の固定資産税評価額に、一定の倍率を掛け合わせる仕組み。この倍率も国税庁「路線価図・評価倍率表」に出ています。

大規模な土地は評価減を受けられる

相続財産の評価方法と調べ方[資金・税金#7]2

土地の評価額は、路線価に土地面積を掛け合わせれば計算するのが基本と説明しましたが、これには例外もあります。

土地の奥行が深い場合、形状がいびつな場合、土地面積が著しく大きい場合などです。それぞれ奥行価格補正率、不整形地補正率、規模格差補正率といった数値で調整します(詳しくは国税庁のホームページ等を参照してください)。

たとえば、以下のような「地積規模の大きな宅地」の要件に合う土地は、評価額が2~3割軽減されます。

●「地積規模の大きな宅地」の条件
(1)土地面積が500m2(三大都市圏以外は1000m2)以上
(2)普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区にある(地区は路線価図で指定)
(3)次のA~Cのいずれにも該当しない

A.市街化調整区域(開発行為を行える区域を除く)に所在
B.都市計画法に基づく工業専用地域に所在
C.容積率が400%(東京23区は300%)以上の地域の所在

かつては、周辺地域の標準的な宅地にくらべて著しく大規模な面積を持ち、工業用地やマンション用地に適さない土地は「広大地」と呼ばれ、最大で65%もの評価減が受けられました。

この「広大地評価」が2017年で廃止され、2018年以降の相続からは「地積規模の大きな宅地」に見直されたわけです。評価減の割合は縮小しましたが、面積が大きければ総額も増えますから、2~3割の評価減でも過小評価できません。こうした税制改正の動きにも注意しておきましょう。

建物は工事費の半分近い固定資産税評価額

建物の場合は、自宅などの自家用家屋の場合は、固定資産税評価額と同じです。固定資産税評価額は、実際の建築にかかった工事費の5~6割の水準と言われています。

図3は、新築時の建物評価額の目安※です。構造や地域によって、微妙に異なることがわかるでしょう。昨今、建築費が高騰していることからすれば、現在の評価額は工事費の半分以下になっているといえるかもしれません。

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※図3の数値は、建物の所有権保存登記をする際の登録免許税を計算する基になる課税標準を示しています。「課税標準=固定資産税評価額」とされていますが、新築時はまだ固定資産税評価額が確定していないため、こうした基準が定められています。実際の固定資産税評価額とは異なる場合があるため、あくまでも1つの目安と考えてください

そして、アパート・マンション経営をしている場合は、「自家用家屋の評価(固定資産税評価額)×(1―借家権割合)」で計算します。

借家権割合は前述の通り3割ですから、仮に固定資産税評価額が建築工事費の5割とすると、貸家の評価額は「建築工事費×5割×(1―3割)」。つまり、建築工事費の35%程度になると考えておけばいいでしょう。

賃貸割合にも要注意

さて、上述の「貸家建付地」と「貸家」に関する評価額についての説明では、簡略化のため「賃貸割合」を省略しました。実務面では重要なため、念のため押さえておきましょう。

賃貸割合というのは、1棟のアパートや賃貸マンションのうち、現に借り手が入居している住戸の割合のこと。たとえば、満室なら100%、全10戸のうち3戸空いていれば70%となります。つまり空室分を控除するわけです。

ただし、入居者の入れ替えのために一時的に空いていて募集活動をしている場合はカウントしません。年間を通じて空室が常態化している場合に控除する形になります。

新築時には満室スタートが多いため、100%を前提に計算するケースも少なくありません。

しかし、築年が古くなり、空室率が高くなって来ると、反対に賃貸割合が小さくなってしまいます。評価減の効果が薄れるため、相続税の節税対策の見直しも必要になってくるでしょう。

文/木村 元紀

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