大規模修繕の資金はどう準備する?
外壁や屋上の修繕が必要と感じながら、資金がネックになって実行できないと、空室率が悪化する恐れも!その悪循環を絶つ資金をどう作る? コツコツ積み立て、一気に融資、はたまた保険? 大規模修繕の費用を準備するための様々な方法を紹介しましょう。
オーナーはどうやって修繕資金を用意している?
計画的に大規模修繕を実施しているオーナーは2割くらいしかいないといわれます。その数少ないオーナーは、どのように修繕資金を調達しているのでしょうか。面白いデータがあるので紹介しましょう(§5-8参照)。
さすがに計画的に修繕を実施しているだけあって、修繕資金を予め確保しているオーナーが8割を超えます。しかも6割は「積み立てている」との答え。
それ以外に、管理会社が関わって積立をしているケースもあります。「管理会社に家賃の一部を修繕費として積み立てさせている(積み立ててもらっている)」というオーナーが約16%もいるのです。「自分では使ってしまう」おそれがあるので「天引き」してもらっているかもしれません。
さらに「管理会社が家賃の一部を修繕費として積み立てている」というケースも7%近くいます。「管理会社に~させている」と似てますが、「管理会社が~している」というのは、オーナーに無断で管理会社が差強いているわけではないでしょう。サブリース(一括借上げ)会社が、「修繕費保証」といった名目で徴収しているケースなどが該当すると思われます。
あらかじめ修繕資金を積み立てていない場合はどうする?
事前に修繕資金を確保していないオーナーは、その都度「手持ちの資金で対応する」ケースが多いようです。融資を利用するのは、わずか3.5%です。ただし、これは計画的に修繕しているオーナーを対象にした割合です。必要に応じて修繕をしているケースを含めれば、もっと多くなるでしょう。オーナーズ・スタイルが2017年12月に読者向けに実施したアンケート「大規模修繕の資金調達法」では、4分の1(約27%)が借入でした。しかも必要資金の9割以上を借入しているケースが4割をしめます。
前出の国交省の調査では、修繕資金の積立方法のトップは「普通預金」、次いで「積立型定期預金」でした。普通預金では利息もほとんど付かず、すぐに引き出せますから、強制的に資金をプールする方法としてはあまり好ましくないでしょう。かといってハイリスクの投資商品にするわけにもいきません。
月々の修繕積立金はどのくらい?
ちなみに、修繕積立金の目安は§5-10の通りです。シングル向きで1戸当たり月々5,000円前後、10室のアパートなら年間60万円です。
なぜ、修繕資金を積み立てないのか?
修繕費の積み立てが進まないネックの1つに、必要経費にならないことが挙げられます。積立金は将来の修繕に備えて貯えるものなので、各年度に実際に修繕して支出した費目ではないからです。区分マンションの場合は、管理組合が強制的に徴収し、オーナーには返還義務がないのが一般的なので、例外的に経費計上が認められます。
法人の場合は、法人専用の生命保険を活用することによって、保険料を損金算入して節税しながら、将来の解約返戻金を大規模修繕費に充てるという方法もあります。現状では個人向けのこうした商品はありません。
このような賃貸オーナーの大規模修繕の資金確保の課題解決を目的に、2023年5月に、全国賃貸住宅修繕共済協同組合による「賃貸住宅修繕共済」の販売が開始されました。将来の修繕に備えつつ、その共済掛金は全額経費へ算入が可能となっています。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
文/木村 元紀
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