賃貸アパート・マンションの雨漏り修繕、原因と対処法の基礎知識[豆知識#4]

賃貸オーナーにとって、雨漏りはもっとも厄介なトラブルの1つです。入居者からのクレームにつながるだけはありません。適切に対処しないと、建物の構造自体にまで影響が及び、修繕コストが大きく膨らむおそれがあるのです。雨漏り問題を解決するため、必要な基礎知識をガイドしましょう。

雨漏りが起こる部位の3大ポイント

長く安定した賃貸経営を続けるには、入居者が安心して快適に住める状態を保つことが大切です。そのために、住宅としてもっとも重要な部分について、品質確保促進法(品確法)で長期保証が義務付けられています。新築の場合は10年保証です。賃貸住宅も例外ではありません。

同法では、保証対象を2つ規定しています。1つは、建物自体の耐震性や耐久性に直結する基礎・土台・柱・壁などの構造耐力上主要な部分。そして2つ目が、雨水の侵入を防止する部分です。それだけ、雨漏りを防ぐことが大きなポイントになると言えるでしょう。

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雨水の侵入を防止する部分とは、具体的には図1の通り、屋根と外壁の仕上げ(下地を含む)と開口部まわり、そして雨水用の排水管に関わる部分です。

図1に示した3つの要素は、以下の「雨漏りが起きる3大ポイント」と重なります。

1.屋根・屋上、外壁、パイプ周りの取り合い部
2.開口部・サッシ周りの取り合い部
3.笠木・パラペットの取り合い部

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ここで言う「取り合い部」というのは、構造部材と建具や仕上げ材が接する部分を指します。これらの取り合い部の防水性能、いわゆる“雨仕舞い”が悪くなったときに雨漏りが発生する可能性が高いわけです。

また、パラペットというのは、バルコニーや屋上の手すり壁(欄干)、笠木はパラペットの上にかぶせる横木です(図2)。屋上が平らな陸屋根マンションに付いています。

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アパートの場合は、図3のような複雑な形状をした傾斜屋根も、雨漏りしやすいタイプです。特に、谷状にへこんだ「入り隅」部分は、雨水が集まって劣化しやすいと言われています。

雨漏りが起きる3つの原因

では、こうした部分で、なぜ雨漏りが起きるのでしょうか。原因は、次の3つです。

1.経年劣化
2.地震など災害による損傷
3.施工不良(建築時から存在した瑕疵)

まず、経年劣化はどんな建物でも避けられません。雨仕舞いにかかわる防水層や外壁仕上げ材は、新築後10数年たつと劣化が進み、ひび割れ、亀裂、破損などが発生し始めるのが一般的です。これに対して、適切な修繕をせずに放置していると、雨漏りが起きる可能性が高まります。

日常の維持管理も大切です。例えば、屋上には雨水を排出するためのルーフドレン(排水口)が付いていますが、雨風に交じって飛来してくる落ち葉や砂泥などが周囲に堆積してくると、排水がうまくできずに水たまりができたり、落ち葉が腐食したりします。

そうすると、金属製のドレン・キャップが錆びたり、排水パイプが傷んだりして、劣化が進みやすくなるわけです。定期的な点検、清掃やゴミ除去などのメンテナンスが欠かせません。

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錆びて劣化したルーフドレーン(屋上排水溝)

次に、それほど築年数が古くなくても、地震や台風などの自然災害によって建物が損傷を受ける場合があります。大きな災害があったら、早めに建物周りの目視点検をして、問題のある個所を速やかに補修することが大切です。

3番目の施工不良は、1・2番に比べると稀かもしれません。また、前述した品確法に基づく新築住宅の10年保証の期間内であれば、施工会社に無償で修繕を求められます。ただ、何か問題が起きないと気付きにくいうえに、原因となる場所が発見しにくいのが難点です。

例えば、図2で紹介したパラペットにかぶせた笠木の下部にきちんと防水処理が行われていないケース。その部分から水が漏れていたとしても、仕上げ材に覆われた外側からはわかりません。雨漏り調査や補修工事の経験や実績がないと、原因にたどりつけないという指摘もあります。

設計ミスの可能性という場合もあります。例えば、鉄骨系プレハブ工法のALC(軽量気泡コンクリート)外壁の仕上げがタイル張りのケース。ALC外壁は、パネルの継ぎ目が多いため、目地に充填するシーリング材を定期的に打ち替えるメンテナンスが欠かせません。しかし、ALCパネルの外装をタイル張りにしてしまうと、パネルの目地がタイルで覆われて隠れてしまうため、中のシーリングが劣化して亀裂ができても外からは見えません。

そもそもALCパネルは素材自体に気泡が多数含まれているため、どこをどう伝って水が漏れているか発見しにくいのもネックになります。「ALC外壁+タイル張り仕様」は新しい建物では採用されなくなっているようですが、古いタイプでこの組み合わせは要注意です。

大家がするべき予防策とは

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賃貸経営の場合は、室内に雨水がポタポタ垂れるほど悪化し、入居者の家財道具などに実害が出てしまうと、退去されたり、損害賠償を求められたりする恐れもあります。なるべく、雨漏りのクレームが起きないように、賃貸オーナーがするべき予防策を次に整理しました。

✓日常の維持管理の徹底
屋上のルーフドレーンや傾斜屋根の軒先にある樋の清掃も大切。

✓定期的な点検と予防的メンテナンス
初期段階のダメージを発見し、大きな損害になる前に応急対応。

✓災害時の臨時点検、退去時のチェック(クロスのシミ、カビ、異臭など)
原状回復時の室内点検、室内の異常を確認する入居者へのアンケートも有効。

✓計画修繕を着実に実施
建物診断で劣化状態と雨漏りの予兆を徹底調査して、“根本治療”を実施。

実際に、雨漏りが置きてしまった場合は、すぐに対処することが大切。ただ、単純に損傷を受けた箇所を修繕するのとはアプローチが違います。というのも、雨漏りの発生した箇所と原因になった場所が隣接しているとは限らないからです。

例えば、室内の天井から雨漏りしている場合でも、屋上防水の破損やその部屋の外壁にある亀裂が原因とは限りません。3階の壁面のクラックから侵入した雨水が1階の天井から漏れるなど、発生個所から離れたところから建物内部を水が伝わって来ることもあります。逆に、ひび割れがあっても雨漏りしないケースは少なくありません。例えば、幅0.3mm以下の“ヘアークラック”は特に補修が必要のないひび割れとされています。

そのため、初めに雨漏りの侵入箇所と経路を調査して特定することが重要です。

雨漏り調査の方法

雨漏り調査には、次の3つの方法があります。

1.目視調査
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(イメージ)

調査員が肉眼で現場を観察して、原因を推定する方法。勘と経験に頼る面があります。

2.散水調査
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雨水の侵入箇所と疑われる場所に試験水をかけて雨漏りを再現させる方法。建物の構造を理解し、侵入経路の仮設を立てて実施するノウハウが必要です。水の代わりに紫外線に反応する専用の検査液を流して可視化する「紫外線投射発光調査」という方法もあります。

3.サーモグラフィー調査
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表面温度の波長の違いを色画像に変換して表示する赤外線カメラを使い、水が流れて温度の低下する箇所を特定します。専用の装置と赤外線建物診断技能師の資格者が行うため、他の調査よりも、やや費用は高めです。

調査方法自体の優劣はありません。建物の状況、雨漏りの症状などに応じて、どれが適切な方法かは変わってきます。雨漏り調査や補修の経験や実績のある会社であれば、複数の方法に対応しているでしょう。費用の見積もりや調査方法に関する事前説明に納得できるかどうかがポイントです。

補修工法の種類も、建物の構造や劣化状態、原因・侵入経路などによって数百とも数千ともいわれます。素人が良し悪しを判断するのは難しいでしょう。雨漏り補修の経験豊富な会社に依頼するのが賢明です。

修繕の方法や会社の選び方については、こちらも参考にしてください。

文/木村 元紀

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