アパート・賃貸マンションの大規模修繕、良い会社の見極め方[会社選び#2]

賃貸住宅の大家さんが自ら大規模修繕の施工会社を選ぶ際に、どのように信頼性や技術力を見極めればよいのでしょうか。管理会社の紹介や設計事務所を通す場合も、賃貸住宅の経営者として知っておきたいポイントを紹介します。

施工会社を見極める3つのポイント~その1.信頼性

施工会社を選ぶ際にチェックすべきポイントは、大きく分けると3つのカテゴリーに分かれ、合計10のポイントがあります(図1参照)。主な点について具体的に解説しましょう。

図1.施工会社選びのポイント
信頼性 1 工事内容に適した業種か、財務内容はしっかりしているか
2 建設業免許はあるか、有資格の技術者は何人いるか
3 大規模修繕工事の実績(地域・規模別の棟数・工事金額)
4 施工品質・評判(事例のオーナーの紹介を受けて聞き取り)
実力 5 見積りの出し方は適切か
6 施工方法・管理体制(工法・工程・人員・安全・品質管理等)
7 入居者・近隣対応はしてくれるか、慣れているか
8 現場監督(施工管理)予定者の経歴や資格、人柄
契約 9 工事保証の内容、アフターサービス体制、瑕疵保険への対応
10 工事完了報告書は出してくれるか(過去の事例をチェック)

 

信頼のおけるポイント「建設業免許の有無」

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会社の信頼性といえば、健全な経営しているかどうかが重要でしょう。ただ、株式上場していない会社の場合、決算報告などの財務情報はオープンにされていないため、なかなか経営状態は見えにくいかもしれません。そういう意味では、まずはじめにチェックしやすいポイントは「事業免許の有無」です。

小規模なリフォーム工事では、施工会社に特別な免許は不要です。いわゆる「街のよろず代行サービス業/便利屋さん」が、浴室やトイレのリフォームをするケースも珍しくありません。しかし、大規模修繕の場合は、建設業免許のある施工会社のほうが信頼性があります。

原則として、建物一棟を新築する「建築一式工事以外」の修繕工事の場合、税込み500万円以上の工事を請け負う場合に建設業許可が必要になります。

建設業免許を持たない事業者が、工事内容を細分化したり工期を分けたりして、契約金額を500万円未満に抑えるケースもあるようですが、もともと1式の修繕工事であれば、法的には許可が必要です。名義貸しや丸投げも建設業法違反になります。

検討している施工会社が建設業免許を持っているかどうかは、国土交通省が運営するサイト「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。

信頼のおけるポイント「有資格者の有無」

大規模修繕の対象となる工事は、それぞれ専門性が高く技術力が問われます。そのため、施工会社に「国家資格を持つスタッフがいるかどうか」も、信頼性を見極めるポイントのひとつになります。

例えば、外壁塗装なら「一級塗装技能士」、防水工事なら「防水施工技能士」などです。会社の代表者や現場管理責任者がこれらの資格を持っているかどうか、資格を取得しているスタッフがどれだけ在籍しているかなどをチェックしましょう。

信頼のおけるポイント「.施工実績」

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どんな分野でも同様ですが、やはり施工実績がどのくらいあるかが重要です。特に、大規模修繕の場合は、外装工事の実績がものを言います。

普段は内装リフォームが中心で、何年かに一度、外装工事を担うという程度では、大規模修繕の実績があるとは言えません。年に数棟単位で継続的に工事を請け負っているかどうかがポイントです。

また施工対象についても確認が必要です。持ち家か賃貸か、マンションかアパートか、大規模な建物か中小規模な建物か、それぞれで技術力やノウハウは異なります。例えば、所有している物件が小規模なアパートなら、同じような条件の建物に対する施工実績を聞きましょう。

さらに、近隣で実施した施工事例を紹介してもらい、その大家さんに工事中や終了後の対応をヒアリングするのも良いでしょう。できれば工事が完了してから数年後の事例が複数あると良いかもしれません。少し時間が経ったほうが、施工品質やアフターケアの実態を推し量れるからです。

施工会社を見極める3つのポイント~その2.実力とノウハウ

実力を見極めるポイント「見積もりの内容」

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会社の姿勢が現れるのが、見積書の形式や記載内容です。外壁塗装、防水工事など大項目ごとに「材工一式/〇〇万円」といった大ざっぱな記述しかない場合は、注意しましょう。工事項目が細分化され、それぞれの仕様、数量、単価が記載されているかどうかがポイントです。

時期を見極めるポイント「施工体制」

相見積もりを取るときに、金額だけでなく、どのように工事を進め、現場でどのような施工管理を行うかについても提案してもらうといいでしょう。

大型マンションの大規模修繕では、設計事務所が立てた修繕計画や仕様書に基づいて、元請の施工会社が工程表、品質管理、安全対策、近隣・入居者対応についての概要などを記した施工計画書を作成します。

小規模マンションやアパートで、そこまで用意しないかもしれません。その場合は図2のような項目をヒアリングしてみることをお勧めします。それによって、施工会社が賃貸住宅の修繕工事に慣れているか、居住者の対応ノウハウがあるかどうかがつかめるからです。

図2.施工計画書の主な項目
●工事の工程
●仮設計画
●工事車両進入路・駐車
●植栽・駐輪駐車場の養生
●住民の安全確保、緊急時の体制
●施工要領(材料、施工方法など)

 

実力を見極めるポイント「入居者対応」

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賃貸住宅の場合は、特に入居者への配慮が求められます。大規模修繕工事は、小さなアパートでも施工期間は1~2カ月、大規模マンションでは半年~1年に及ぶのが一般的。事前の説明や必要事項の告知に加えて、施工中の対応が重要です。

図3.入居者への説明・告知
●ベランダ設置物の一時移動
●ベランダ出入り・洗濯物制限
●エアコン・換気扇使用制限
●一時断水・排水制限
●敷地内への工事用車両の進入
●駐車場利用不可の場合の対応
●足場・養生シート・資材の保管
●硬磁騒音・臭気・振動対策

 

施工中は、建物が足場や養生シートに覆われるため、バルコニーが使えなかったり、洗濯物が干せなかったり、騒音・振動・臭気などもあり、入居者に何かと制約やストレスがかかります。

資材の搬入、職人の出入りもあり、小さな子供のいる家庭では、安全に対する懸念もあるでしょう。対応を一歩間違えると、入居者の不満が溜まってクレームが増し、退去を招きかねません。

入居者対応の良しあしについては、現場監督(現場管理代理人)の経験値や人柄も重要だと言われます。

どれだけ場数を踏んでいるか、入居者とのコミュニケーションや職人への指示が的確か、修繕の知識は豊富か、などが問われるわけです。スケジュール管理がしっかりしているかどうかも現場監督の力量にかかっています。こうしたベテランの現場監督がいる施工が望ましいでしょう。

施工会社を見極める3つのポイント~その3.契約・アフター体制

契約時の見極めポイント「工事請負契約」

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住宅設備機器の交換や中小規模のリフォーム工事では契約書を取り交わさなかったり、『注文書/請書』という簡単な書面で済ませてしまったりするケースが少なくありません。しかし、大規模修繕では、きちんと書面で『工事請負契約』を結んだほうがいいでしょう。

契約書に記載する事項としては、工期・引き渡し日・請負代金・支払い回数と時期などが挙げられます。修繕計画の設計図面、工事費内訳書・仕様書などの添付書類も併せて確認しましょう。

施工会社の規模が小さい場合は倒産の懸念もありますが、完成保証保険に入ることでリスクをある程度はカバーできます。こうした保険への加入の有無に加えて、工事完了報告書・検査記録など、修繕履歴の記録として後々まで保存しておきたい書類も発行してもらえるかを確認しましょう。

契約時の見極めポイント「アフターサービス体制」

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修繕工事は、予定通りの工程が済めば終わりというわけではありません。どんなに技術力の高い施工会社が実施したとしても、クレームやトラブルをゼロにはできないと言われます。

建物の置かれた環境や気象条件などによって、塗装が部分的にはがれてきたり、壁にヘアークラックが見えたり、何らかの不備・不具合は起きるものと考えておいたほうがよいでしょう。

その際に迅速、的確に対応してくれるかどうかは、施工会社のアフター体制次第です。塗料や防水層など材料に対するメーカー保証と、施工会社の保証が異なるケースも少なくありません。

施工方法によっては、長期保証が付く場合と付かない場合もあります。加盟団体や組合が引受先となる保証の仕組みもあり、施工会社が倒産しても無償補修などを受けられるようです。それぞれの保証項目・保証範囲・保証内容・保証期間などについて確認しましょう。

文/木村 元紀
※この記事内の情報は2022年9月30日時点のものです

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