旧郵政省にも直談判!国からも認められた、世界初の宅配ボックス開発秘話
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近年のネット通販利用の急速な伸びに伴い、社会問題化している「荷物の再配達問題」。その解決方法として日本全国さまざまな場所で導入が進んでいるのが「宅配ボックス」です。
実はこの「宅配ボックス」、世界で初めて開発したのは株式会社フルタイムシステムという日本の企業と言われています。今回はその開発、そして普及までの道のりを(株)フルタイムロッカーの竹迫新吾さんに伺いました。
宅配ボックスへの想いは誰よりも熱い。「お客さま儲かる営業部」に所属し、利用してくれる人にとって最高に便利なものを提供するために尽力。現在は趣味でゴルフを猛練習中。公私両面で、座右の銘でもある「人間万事塞翁が馬」を胸に、日々気を引き締めて行動している。
36年前に誕生した宅配ボックスはもうコンピュータ制御式だった!
編集部:今でこそ色々な種類がありますけど、世界初の宅配ボックスっていつごろに作られたんですか?
竹迫さん:第一号機がつくられたのは、1983年、今から36年前です。コンピュータ式で電話が付いており、連絡を受けると自社のコールセンターから遠隔操作で扉の開閉ができるというものでした。最初は全体の半分ほどがコンピュータで、半分が荷物を入れるボックスでした。今は技術の進歩で半導体や基盤が小さくなったおかげで、コンピュータは小さなボックス1個分くらいですね。
編集部:小型化に技術の進歩を実感しますね!最初からコンピュータ式を選択したのには何か理由があるんですか? ダイヤル式(機械式)のほうが開発は簡単そうな気がするんですが…。
竹迫さん:そうですね。でも、ダイヤル式とコンピュータ式では、運用後のトラブル対応の早さも手間も圧倒的に違ってくるんです。ネットワークでつながっているコンピュータ式は専用回線でつないだコールセンターから遠隔操作ができるので、トラブルがあったときに現地での対応がいらず、すぐに解決できます。それにコンピュータ式は使用の履歴が残るので、入居者も宅配業者の方も安心して使っていただけます。
そもそも入居者がより便利に使えるものにしたいという思いを最優先して開発していたので、コンピュータ式での開発は自然な流れでした。
「ゴルフバッグ盗難事件」が人気設備誕生のきっかけに
「これまで世の中になかったものを作る」ことは試行錯誤の連続
編集部:宅配ボックスを開発するきっかけはどういったことだったんですか?
竹迫さん:開発者は当時マンション管理業を営んでいた現当社社長の原幸一郎です。当時はマンションに届いた受取人不在の宅配便は、常駐する管理人が代わりに受け取っていました。しかし、ライフスタイルが変化して荷物量が急増しつつあったある日、預かったゴルフバッグを管理人室の外に置いていたところ、何者かに盗まれてしまったんです。
編集部:えっ、ゴルフバッグを盗むなんてなかなか大胆な犯行ですね。そこから原さんはどうされたんですか?
竹迫さん:はい、結局原がゴルフバッグを弁償することになりました。しかし、そこから防犯と管理人の手間を減らす方法はないかと考えるようになり、「無人で預け入れと受け取りができる、管理人さんをサポートするロボットをつくろう」と思い立ったんです。そして思いついたのが宅配ボックスでした。元々は管理業務の代行という位置づけでのスタートでしたが、当時はマンション管理業もコールセンターも一般的ではない時代ですので、弊社はものすごく新しいことを合わせて開発していくことになりました。
ゼロからのスタートながら、現在まで活用される基準を生み出す
編集部:何もないところからのスタートだったんですね。今でこそ基準があるロッカーのサイズや数はどうやって決めたんですか?
竹迫さん:原が当時管理していたマンションの住人の方にアンケートをとりました。大きさは、当時宅配便は段ボール製のみかん箱が一般的だったので、ボックスサイズは「みかん箱が入る大きさ」を基本に。それと、アンケートの「宅配ボックスがあったら使いますか?」という問いに対して、住人の3分の1が「あったら使うかも」、3分の1が「あったら便利かも」、そして残りの3分の1が「あっても使わない」という回答結果だったので、ボックス数は総住戸数の3分の1を基本にしました。これは今でも設置する際の基準の数字になっています。
編集部:へえ、そうだったんですか!時代も商品も進化してきた中で変わらないものがあるのは、何だか感慨深いですね。
竹迫さん:そうですね。今でこそ当たり前にあるものですが、その当時はこれまで世の中になかったものをつくる、まさにゼロからのスタートだったので、開発は試行錯誤の連続でした。試作品もたくさんつくり、開発を始めてから3年をかけて、ようやく第一号機の完成までたどり着くことができました。