旧郵政省にも直談判!国からも認められた、世界初の宅配ボックス開発秘話

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公開日:2019年2月25日
更新日:2019年11月29日

旧郵政省に認めてもらうために本社も移転

どこよりも早く「再配達問題」の解決に取り組んだ

編集部:開発した後、普及するまでにも色々なご苦労があったとか。

竹迫さん:はい、旧郵政省から認めてもらうのに10年以上かかっていることもその一つですね。

編集部:認めてもらうというのは?

竹迫さん:はい、きっかけは宅配ボックスを導入したマンションの入居者から「郵便局からの荷物がロッカーに入らない」とコールセンターに電話があったんです。原は当初「そんなわけはない」と思ったそうですが、当時の郵便局は荷物の受け渡しは「対面」か「サインが必要」というルールがあり、配達の方はそのルールを守ってボックスに入れてくれなかったことが判明しました。そこで原は、当時の郵政省へ直談判をしに行ったのです。

編集部:え、直談判ですか!?

竹迫さん:はい。旧郵政省内で検討してもらうために、説得材料がほしかったのですが、ゼロからのスタートなのでデータもゼロから作成しなくてはいけません。そこでまずは郵便局を回り、再配達になってしまう荷物の多さなどを調べました。また、自社コールセンターに残っている利用履歴記録も活用し、データを準備しました。当時は配達に1回行く中で30%は再配達。再配達に行くとその30%が再々配達というデータが出ましたので、それを解決する方法が必要です、と。

そして「宅配ボックスの導入によって再配達がこれだけ減っています」というデータを出してアピールしました。配達する側の手間が軽減するのはもちろんですが、入居者の方の利便性をいかに高めるかという、マンション管理会社ならではの視点から生まれています。

編集部:まだそれほど普及していないところから、自社のデータを活用してのアピール。宅配ボックスの道を切り拓いてきたんですね。そこから認められるまではどのぐらいかかったんですか?

竹迫さん:最初の直談判は1991年。その後「不在時の配達方法として無人ボックスへの預け入れを可能にする」という通達が旧郵政省から出たのは3年後。郵便規則が改正され、無人ボックスが指定場所配達として認められたのは最初の直談判から8年後の1999年でした。

1996年には、旧郵政省に通う時間を削るために、大阪にあった本社も東京に移転しました。その熱意が伝わって認めてもらえたのかもしれませんね。

旧郵政省にも直談判!国からも認められた、世界初の宅配ボックス開発秘話0

創業以来、コントロールセンターから24時間365日体制で遠隔管理。入居者とコミュニケーションを取ることができる同社の強みが、宅配ボックスの改善へとつながった

今では電動自転車やPCなどのシェアリング、顔認証での解錠も可能

編集部:まさに宅配ボックス界のパイオニアですね!そういった動きがなかったらここまで普及していなかったかもしれません。

竹迫さん:郵便規則の改正からは他社も参入してきて一気に普及が進み、今では集合住宅だけでなく駅やコンビニ、大学などの公共スペースなど、様々な場所に置かれるようになっています。分譲マンションへの普及率は99%、賃貸住宅の物件検索サイトでも「ほしい設備」上位の常連になりました。

編集部:最新の宅配ボックスにはどんな機能があるんですか?

竹迫さん:荷物の預け入れ、受け取り機能に加え、シェアリングサービスと連動した製品があります。サイクルシェアリング、マイカーシェアリングをはじめ、PCやタブレット端末、お掃除ロボットなど、シェアするものは多種多様です。

今でこそシェアリングは一般的になっていますが、弊社では先駆け的に行ってきました。これらもコンピュータ式でネットワークされ、遠隔操作ができるからこそのサービスです。さらに宅配ボックスでの顔認証登録を可能にした、顔認証セキュリティサービスも誕生しています。

編集部:すごい! 顔認証で宅配ボックスやエントランスの鍵が開いてしまうなんて本当に便利です。

旧郵政省にも直談判!国からも認められた、世界初の宅配ボックス開発秘話0
旧郵政省にも直談判!国からも認められた、世界初の宅配ボックス開発秘話0
旧郵政省にも直談判!国からも認められた、世界初の宅配ボックス開発秘話0

(左)入居者が共有で使用できる全自動掃除機 (中)顔を近づけるだけで解錠できる顔認証付き宅配ボックス (上)シェアリングサイクルのキーボックスとしても活用されている

これからも入居者の利便性を最優先して開発していく

編集部:開発当時から今までのお話しを聞いて、技術の進歩をひしひしと感じています。

竹迫さん:そうですよね。箱の大きさも開発当時の「みかん箱」サイズからどんどん小さくなり、今はSサイズやSSサイズが主流。製品によって、サイズや機能の異なるボックスを組み合わせることもできるようになりました。

宅配ボックスの本来の用途から展開したこれらのサービスも、根本にあるのは入居者の方の利便性を高め、より快適・安全に暮らしていただけるようにとの思いが込められています。これからもその思いを忘れずにどんどん開発を進めていきたいですね。


 

再配達問題や環境問題、働き方改革など、様々な問題解決に貢献する設備&サービスとして今では欠かせない存在となった宅配ボックス。賃貸住宅向けの商品もかなりコンパクトになり、ここからさらに進化していくことでしょう。

ちなみに5月1日は「宅配ボックスの日」。これは、宅配ボックス普及の功績を称え、日本記念日協会側から同社の創立日を記念日として登録したいとの打診があったそうです。2019年はちょうど新元号が始まるタイミングですが、ちょっとした豆知識として覚えておくのも良いかもしれませんね。

今後も重要な役割を果たすべく、宅配ボックスがどのような進歩を遂げていくのか、今から楽しみです。

※この記事内の情報は2019年1月25日時点のものです。

取材・文/神戸 久美子

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