不動産登記を基本からわかりやすく解説!目的やかかる費用、必要なタイミングとは
土地や建物などを相続、売買したときに必ず発生する「不動産登記」。2022年5月から相続登記が義務化されたことで、これまでより身近なものになりました。不動産登記とはどんなタイミングで、どのように行われるものなのでしょうか。基本から解説します。
不動産登記とは
不動産登記とは、その不動産の所有者は誰なのか、どんな不動産なのかを「登記簿」という公的な帳簿に乗せることで明らかにすることを指します。登記した内容は一般に公開されていて、所有者でなくても閲覧が可能です。
不動産登記の目的
法務省のホームページには、不動産登記は以下のように定義されています。
不動産登記は,わたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか,所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し,これを一般公開することにより,権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし,取引の安全と円滑をはかる役割をはたしています。
土地や建物は、誰かがそこに住んでいたとしてもその人が所有者とは限りません。公的かつオープンな情報として不動産の権利関係その他を登録することで、所有者の権利を守ったり、権利を譲渡する際の手続きをスムーズにしたりすることが不動産登記の目的です。
不動産登記をしないとどうなる?
不動産登記が行われていなければ、たとえ先祖代々受け継いできた土地だとしても所有権を主張することはできません。
また、不動産を購入した際も登記をしていなければ、もし後から別の人に二重売買されてしまったら、たとえ自分が料金を払っていたとしても所有権はありません。その不動産は先に登記した人のものになってしまいます。
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不動産登記の種類
不動産登記は、目的別に大きく「表題登記」「所有権保存登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」の4種類に分けられます。
表題登記
「表題登記」は土地や建物を新たに登録するために行うもので、不動産を取得してから1カ月以内に登記申請が必要です。多くは新築の建物を建てたときや、未登記の建物を購入したときに申請する「建物表題登記」です。
所有権保存登記
「所有権保存登記」は、所有権や抵当権などといった不動産の権利関係を記録する「権利部」に所有者として名前を記すことを指します。こちらも建物の新築時などに行うことになります。
所有権移転登記
「所有権移転登記」は不動産の所有権を移す際に行います。相続や贈与を受けたとき、購入したときに登記を行い、新しい持ち主に所有権を移します。ちなみに不動産の固定資産税は登記簿上の所有者に対して課されるため、移転登記が済んだら課税の通知が届くようになります。
抵当権設定登記
不動産をローンで購入する場合、金融機関が担保として不動産に付ける「抵当権」を明らかにするのが「抵当権設定登記」です。もしローン返済が滞った場合に、金融機関は裁判所に申し立てて不動産を競売にかけることができます。ローンを完済したら「抵当権抹消登記」を行います。
土地分筆登記…土地を複数に分ける際に行う
土地合筆登記…複数の土地をまとめて1つにする際に行う
土地の地目変更登記…土地の地目を変更する際に行う
建物滅失登記…建物を取り壊す際に行う
登記簿謄本の取得方法と費用
登記簿謄本とは
登記簿謄本は、正式には「登記事項証明書」といい、法務局で取得できる不動産の情報や所有権が登録された書面です。所有者でなくても誰でも、オンラインでも取得が可能です。
登記簿謄本の取得費用
登記所の窓口で交付を請求する場合は手数料が600円、オンライン請求で証明書を郵送で受け取る場合の手数料は500円、オンライン請求+最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取る場合の手数料は480円です。手数料はインターネットバンキングでの電子納付や、Pay-easyに対応したATMで支払うことができます。
登記簿謄本の閲覧費用
登記内容をパソコンなどで確認したい場合は「登記情報提供サービス」が利用できます。利用料金は閲覧できる範囲により異なりますが、不動産登記情報の全部事項を確認する場合は331円、所有者事項は141円となります。個人が利用する場合は、支払い方法はクレジットカードによる即時決済です。
パソコンなどで閲覧した情報はプリントアウトすることができますが、「登記事項証明書」と異なり、法的証明力のある書類とはみなされません。
登記記録の内容と見方
実際の登記簿謄本(登記事項証明書)を見てみましょう。「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」「共同担保目録」の4項目から成り立っているのが分かります。それぞれに記載される内容は以下の通りです。
①表題部
土地の場合…所在、地番地目(土地の現況)、地積(土地の面積)など
建物の場合…所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積など
マンションなど区分建物の建物については、建物全体の情報と、専有部分の情報がそれぞれ記載されます。
②権利部(甲区)
権利部(甲区)には所有者に関する情報が記録されています。所有者の住所や氏名、所有権を取得した日付や手段などが分かります。他にも所有権移転登記や差押えなど、不動産が経てきた歴史がある程度分かります。
③権利部(乙区)
権利部(乙区)には抵当権や地上権、地役権など所有権以外の権利に関する情報が記載されています。不動産の利用を制限する権利が登記されている場合もあるため、購入する場合は事前に必ず確認しておきましょう。
④共同担保目録
ローンを利用して住宅を購入する場合、土地と建物の両方に抵当権を設定することがあります。その際に、共同で担保となった土地と建物の所在、地番、家屋番号が共同担保目録に記載されます。
不動産登記はいつ必要?
「不動産登記の種類」の項でも少し触れましたが、不動産登記が必要になる場面と、その際に必要な不動産登記について解説します。
不動産を取得したとき
建物を新築したとき、未登記の建物を購入したときには「標題登記」と「所有権保存登記」が必要です。また、中古不動産を購入したり、相続・贈与などで取得したりしたときには、所有権を自分に移す「所有権移転登記」を行います。2022年に義務化された「相続登記」とは、実際には「相続による所有権移転登記」のことです。
住所や姓が変わったとき
不動産そのものに変化はなくても、所有者が引っ越して住所が変わったときや、結婚などで姓が変わったときは登記名義人の「住所・氏名の変更登記」を行います。
ローンを借り入れたとき、または完済したとき
不動産を担保に銀行から借り入れを行うときは「抵当権設定登記」を、ローンを完済したときは「抵当権抹消登記」を行います。
建物を取り壊したとき
建物を取り壊してその不動産自体がなくなってしまったときに「建物滅失登記」を行います。
不動産登記にかかる費用と費用を安くする方法
不動産登記には「登録免許税」と「司法書士への報酬費用」がかかります。それぞれ次のようなものです。
登録免許税
「登録免許税」は主に所有権の移転登記の際にかかる税金で、国に納付します。土地の売買にかかる税率は不動産の価額の2%ですが、2026年3月31日までは1.5%の軽減税率が適用されます。不動産の価額とは、基本的には固定資産税評価額ですが、固定資産課税台帳に登録がない場合は登記官が認定した価額になります。
建物についても、新築で建物を建てた場合などの所有権保存登記に0.4%、中古建物を購入した場合などの所有権移転登記に2%の税率が適用されます。ただし、居住用の建物や長期優良住宅などの場合は軽減税率が適用されます。詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。
司法書士報酬
不動産登記は司法書士に依頼するのが一般的であるため、報酬がかかります。金額は依頼する司法書士や物件の規模や内容、地方によって変わりますが、2018年に行われた日本司法書士連合会のアンケートによると、関東地方では以下が平均となっていました。司法書士報酬は都市圏では高く、地方では比較的安い傾向があります。
所有権移転登記(贈与) | 47,806円 |
所有権移転登記(売買) | 51,909円・91,375円 |
所有権移転登記(相続) | 65,800円 |
所有権保存登記 | 24,707円 |
抵当権設定登記 | 39,267円・74,955円 |
抵当権抹消登記 | 15,613円 |
所有権登記名義人住所変更登記 | 12,123円 |
金額が2つある登記は業務内容によって分けられており、面識のない登記義務者の本人確認情報の作成を含む場合、司法書士報酬が倍近くになります。他にも相続人が多いなど案件が複雑になるほど司法書士報酬は上がると思っていいでしょう。
登記にかかる費用を安くする方法
登記にかかる費用を安くする方法はいくつかあります。まず考えられるのは、自分自身で登記手続きをすること。この場合、司法書士報酬はかかりません。
ただし、すべてを自分で行うと時間と労力がかかるため、必要書類の収集などできることは行い、司法書士には申請書の作成と提出のみを依頼する方法もあります。
司法書士に依頼する場合は複数の司法書士事務所から見積もりをとり、報酬を比較したうえで決めるようにしましょう。相続などで登記以外の手続きも必要な場合は、まとめて依頼することで報酬の割引に応じてくれる場合もあるかもしれません。
また、登録免許税にはいくつか軽減税率が適用される条件があり、当てはまるものがないか探してみましょう。例えば、個人の住宅用で床面積50㎡以上の家屋には、2027年3月31日まで所有権保存登記の税率0.4%→0.15%が適用されます。他にも、長期優良住宅や認定低炭素住宅の新築などには軽減税率が適用されます。
もし相続登記で他の相続人が存在するのであれば、登記にかかる費用を分担してもらえないか交渉してみても良いでしょう。ただし、その相続人にとって相続がメリットとならない場合は難しいかもしれません。
不動産登記に必要な書類
前項で「自分で不動産登記ができるならやってみたい」「自分でできるかどうか知りたい」と思われた方もいるかもしれません。実際に不動産登記に必要な書類と、基本的な流れを解説します。
不動産登記に必ず必要な書類
必要書類は登記の種類によっても異なりますが、共通して必要なのは次の2つです。司法書士に依頼する場合は委任状も必要です。
☑登記申請書…法務局のホームページからダウンロードが可能です。
不動産登記の申請書様式について|法務局
☑本人確認書類…パスポートや運転免許証、個人番号(マイナンバー)カードなど
登記申請書と本人確認書類以外で必要な書類
☑登記識別情報通知書もしくは登記済証(権利証)…不動産を取得したときの書類
☑印鑑証明書・実印…発行から3カ月以内
☑抵当権抹消書類…抵当権が付いている不動産を売却する場合
☑固定資産税の評価証明書…登録免許税算出のため
☑登記原因証明情報
☑住民票…登記簿の住所と印鑑証明の住所が違う場合
☑不動産売買契約書
☑印鑑証明書・実印
☑住民票
☑被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本など
☑登記識別情報通知書もしくは登記済証(権利証)
☑相続人の住民票
☑相続人の戸籍謄本
☑固定資産税の評価証明書
☑相続人の印鑑証明書・実印
☑その他(遺言状、遺産分割協議書など)
☑住民票
☑建築確認通知書
☑建物図面・各階平面図
☑確認済証・検査済証
☑工事完了引渡証明書
☑施工業者の印鑑証明
☑印鑑証明書・実印
☑登記識別情報通知
☑抵当権設定契約書など…金融機関が作成
☑登記識別情報通知
☑抵当権設定契約書など…金融機関が作成
☑登記原因証明情報…ローンを完済したことを証明する書類で、金融機関が作成
☑登記事項証明書
☑建物図面等
☑建物滅失証明書…建物を解体した業者が作成する証明書
☑解体業者の印鑑証明
不動産登記の基本的な流れ:申請から完了まで
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STEP1
必要書類の作成・準備
前項のような書類を揃えます。それぞれの書類を取り寄せたり、場合によっては遠方に出向いたりする必要があり、最も手間のかかる段階と言えるでしょう。印鑑証明書などオンラインで取得できる書類もあるため、できる限り利用しましょう。
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STEP2
登録免許税の計算
登録免許税は登記申請のタイミングで支払うため、自身で申請する場合は算出する必要があります。軽減税率が適用されるかどうかもしっかりチェックしましょう。納付方法は、収入印紙、現金、電子納付があります。
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STEP3
登記申請書の作成
法務局のホームページからダウンロードした書類に記入するか、オンライン申請の場合は直接入力します。オンライン申請には事前にパソコンなどの環境整備と申請用ソフトのダウンロードおよびシステムへの登録が必要です。また、添付書類もPDFファイルに電子化しておきましょう。
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STEP4
申請書と必要書類の提出
書類がすべて揃ったら、いよいよ申請です。窓口申請の場合は不動産の所在地の管轄に提出する必要があるため、あらかじめ法務局のホームページで管轄区域を調べましょう。書留による郵送も可能です。
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STEP5
登記識別情報と登記完了証を受け取る(登記完了)
必要書類が受理されたら法務局で審査が行われ、問題がなければ登記識別情報と登録完了証が作成されます。登記申請書に押印した印鑑と身分証明書を期限内に法務局に持参すれば、登記識別情報と登録完了証を受け取ることができます。郵送やオンラインでの受け取りも可能ですが、いずれの場合も取扱いと保管には充分注意しましょう。
まとめ
不動産登記は必要書類の手配をはじめ手間も時間もかかります。オンラインでの申請が可能とはいえ、自分で行うのはそれなりにハードルが高めです。
もし申請書類や添付書類にミス・不備があった場合には、法務局から差し戻しがあります。どんな些細なミスでも申請者が訂正し、追加提出や差替えを行わねばならず、書類によっては申請をいったん取り下げて、もう一度最初からやり直す場合も。一生のうちで慣れるほど何度もあることではないので、プロにまかせた方が無難かもしれません。
ところで、「地面師」のドラマが最近話題になっています。この元ネタは、土地の所有者になりすました犯人から、大手ハウスメーカーが50億円以上をだまし取られた実際の詐欺事件。このときは土地の購入・支払い後に法務局より本登記却下の連絡が入り、ニセの所有者から土地を購入していたことが判明しました。
詐欺が成り立つには様々な要因があったとはいえ、日頃から不動産を扱っているハウスメーカーの社員ですらだまされてしまうのですから、土地の権利証明は複雑で、金額も大きいためかなりのリスクを伴います。
そういった意味でも、売主が本物かどうかや取引に違法性がないかをチェックできる法律の専門家に登記を依頼した方が、自分でやるよりも安全といえます。また、ローンを借り入れる際の抵当権設定についても、取引の安全性確保のために、司法書士への依頼を条件としている金融機関がほとんどです。
相談や見積もりまでは無料の司法書士事務所もあるため、まずはどれくらいの費用がかかるかを含め、相談してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2024年9月17日時点の情報をもとに作成しています
記事・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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