アパート・マンション経営をスムーズに引き継ぐための準備や手続きを詳しく解説

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公開日:2024年9月25日
更新日:2024年9月25日
アパート・マンション経営をスムーズに引き継ぐための準備や手続きを詳しく解説1

不動産賃貸業=“大家さん業”を営むオーナーは、自分の代で賃貸事業をたたもうと思う人は少ないでしょう。資産を守り育てていくには、早めに次世代に引き継ぐ活動を始めたいところ。どうすればスムーズに事業を承継できるのか、準備不足のリスクから必要な手続きまで、詳しく解説します。

この記事の監修
アパート・マンション経営をスムーズに引き継ぐための準備や手続きを詳しく解説2

税理士法人新宿総合会計事務所(左)代表社員 税理士 杉江 延雄さん(右)相続専門チーム チーフ 税理士 藤澤 直弘さん

税理士法人新宿総合会計事務所は、相続税に強い税理士事務所で、生前対策から遺言・相続発生後まで幅広くサポート。「ワンパック相続」サービスは、相続税専門の税理士と各専門分野の司法書士・行政書士・社会保険労務士がチームとなり、相続発生後のあらゆる手続きを代行してくれます。

相続でいきなりの引き継ぎは困惑と経営の混乱を招く

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先祖代々の不動産や賃貸事業を受け継ぎ、自身も資産を築いてきたオーナーは、同じように次の世代に事業を引き継ぎ、守っていって欲しいと願っている人が多いでしょう。しかし「大家さん業」の引き継ぎがうまくいかないと、財産の一部を失いかねません。

「賃貸経営を長年一人で取り仕切ってきたオーナーさんは『自分が目の黒いうちは手出し無用』という姿勢の方が目立ちます。お子さんは会社勤務だったり、自分の仕事をもっていたり、賃貸経営にはまったくタッチしていないことがほとんど。結果として、相続間近になって慌てて相談に来るケースが少なくありません」(杉江さん)

何も準備しないまま相続を迎えてしまうと、困惑するのは賃貸不動産を残された子どもの方です。

「管理会社に任せているから問題ないと思うかもしれません。しかし、元のオーナーが亡くなると、新オーナーとの管理委託契約が改めて必要となります。賃貸不動産の相続人が遺産分割で決まるまでは共有状態になるため、収納代行している家賃は管理会社がプールしておく、または相続割合で按分して受け取ることに。様々な手続きもストップしてしまいます」(杉江さん)

急な相続が発生!引き継ぐ準備ができていないとアパート・マンション経営はどうなる?

例えば、募集活動の問い合わせへの回答、トラブル対応、退去時の敷金精算、原状回復にも支障をきたします。

何をするにも共有者全員の合意を取らなければいけないため、作業は停滞し、混乱を招きます。共同相続人の代表者が暫定的に肩代わりする場合もありますが、賃貸経営の経験のない子どもが適切に意思決定をするのは難しいでしょう。賃貸経営がうまく運用できなければ、入居者の退去を誘発して空室が増加しかねません。資金繰りも悪化します。

相続に至る前でも、オーナーが認知症になって判断能力を失ってしまうと、あらゆる契約行為が不可能になります。賃貸借契約も修繕の発注もできません。

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不便な共有状態

相続人が決まるまで共有財産に。家賃は按分、契約行為や修繕工事は相続人全員の合意を取る必要が…

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賃貸管理の空白

管理会社との委託契約は亡くなった時点で終了!相続人との再契約まで手続き停滞(サブリースは除く)

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不透明な経営実態

入居者との賃貸借約や管理会社との委託契約の内容、収支の状態など、経営の全体像がつかめず混乱!

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空室増加の可能性も

入居者のトラブル対応や管理会社との連携がうまくとれず、退去を引き起こして空室の増加に至ることも

やはり、大家さん業の引き継ぎ準備は、オーナー自身が元気で余裕があるうちに、子どもの側はゆとりをもって受け入れる心構えを持てるタイミングで動き始めたいところ。ではいつ何をすればいいのか、次から具体的に解説します。

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”事業”をのこす|資産と大家さん業の全体像を洗い出して把握

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大家さん業の引き継ぎは、資産の相続と一緒に考えましょう。全体を俯瞰して情報を共有することが大切です。

不測の事態が起こる前に準備しておくことが大事

杉江さんは「まずご自身で、大家さん業と財産にかかわる全体像をつかむことが大切です」と強調します。

大家さん業は、営んでいる一部の不動産を受け渡すだけで、引き継ぎが終わるわけではないからだ。賃貸経営のノウハウと人脈も一緒にバトンタッチする他、不動産の将来的な運用方針を決めておくことも重要です。

事業を引き継がない相続人との間で、バランスの取れた遺産分割を目指すことも欠かせません。つまり、全体像とは、賃貸経営にまつわるハードとソフト、それ以外のすべての相続財産をオーナー自身が把握したうえで、家族に伝えていくための道筋を示す設計図ともいえます。

引き継ぎ準備の具体的な流れは右下の通り。全体の流れをつかんで取り組んでいきましょう。

大まかなイメージを掴もう!引き継ぎ準備の流れ

  • 財産と事業の全体像を洗い出す

    すべての資産を網羅した一覧表(財産目録)を作成して相続税の総額、現金収支を把握。次に、賃貸経営の事業にかかわる協力会社、入居者情報、修繕履歴や図面、帳簿などの資料類の内容と保管場所のリストを作ります。

  • 誰に渡すかを決めて家族と共有

    賃貸不動産を相続人のうち誰に渡すか、オーナー自身でまず想定。必要に応じて子どもと個別に対話して適性を見極めます。次に、家族全員で集まり、財産の分け方、事業を継いでもらいたい相続人を伝え、共通認識を持ちます。

  • 遺言書・信託などの手続き

    遺言書は、遺産分割の内容や賃貸経営を引き継ぐ相続人を明示することで、相続発生後の各種手続きや経営の継続がしやすくなります。認知症に備えて事業の受託者を決める家族信託などの手続きを含め、意思能力のあるうちに進めましょう。

  • 引き継ぎの予行演習

    大家さん業引き継ぎの意識付けや、経営ノウハウを身に着けてもらうために、オーナーの生前から後継ぎ候補に経理実務などを手伝ってもらい、予行演習を行います。協力会社との打ち合わせに同行してもらうなど、人脈づくりも支援します。

財産目録と相続税の把握。経営関係の情報と資料整理

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全体把握の第一歩として、賃貸不動産を含むすべての財産のリスト作りから始めましょう。

まず預貯金、金融資産、不動産、その他の財産、負債をもれなく書き出して一覧にまとめます。次に不動産鑑定士や税理士など専門家のサポートを受けながら、それぞれの財産について時価と評価額を踏まえて相続税額を算出。これによって、納税や遺産分割などの必要な相続対策の方向性が見えてきます。

賃貸不動産にはアパートや賃貸マンションだけでなく、駐車場や貸地も含まれます。収益性が高いか低いか、子々孫々まで残したいのか売却して現金化してもいいのか、大事な資産の優先順位をつけて伝えておきましょう。

財産リストの作成と並行し、「引き継ぎチェックリスト」に記したような、大家さん業にかかわる情報や資料の準備も進めましょう。

賃貸不動産の入居者情報、建物の修繕履歴や修繕計画、管理会社やリフォーム会社、税理士などの協力会社の連絡先、帳簿類など多岐にわたります。こうした資料がそろっていれば、賃貸経営を見通すことができ、相続人が引き継いだ後も事業を継続しやすくなります。

「古くから貸している底地などの不動産の中には契約書がなかったり、敷金や保証金の保管状況が曖昧なケースもあります。また権利関係が複雑な共有不動産、未確定の土地境界線など、問題点を洗い出して、解決に向けて動きましょう」(藤澤さん)

全部そろっていると、みんなうれしい!「大家さん業」引き継ぎチェックリスト

賃貸経営にかかわる手続きは下にまとめた通り多くあります。引き継いだ相続人が、スムーズに賃貸経営を続けていけるように、必要な情報をまとめておきましょう。

関連資料をファイリングしておくか、保管場所と手順を明記した書類を残しておけば、後継者も戸惑わないで済みます。管理会社・リフォーム会社・仲介会社などのパートナー会社との連携も取りやすくなり、入居者とのトラブルや退去の防止にもつながります。

引き継ぎ後に必要になる主な手続き
● 管理会社との管理委託契約の再締結
● 家賃等の受取口座の変更
● 銀行など金融機関への連絡
● 火災保険の名義変更
● 入居者への連絡、賃貸借契約書の巻き直し
● 相続登記

委託管理の場合は管理会社から入手
□入居者情報(レントロール)※物件ごとに作成
部屋番号、契約者名、振込名義、家賃、共益費、敷金、契約開始日・終了日、保証人・保証会社、入金・滞納状況、トラブル履歴

□建物修繕履歴 ※物件ごとに作成
実施年月、場所、件名(作業・工事種別)、修繕内容、金額・委託先

 

オーナー自身で整理
□帳簿:事業収支を把握できる帳簿類、確定申告書の控えなど

□貸金庫:場所と暗証番号・保管内容

□各種資料:契約書や図面類など、資料(下記*)の保管場所

□パートナー企業・担当者・連絡先
建築会社、管理会社、仲介会社、内装リフォーム会社、外壁塗装会社、室内クリーニング会社、建物清掃会社、電気工事会社など、協力会社の社名、担当者名、電話番号を必須でリスト化。依頼した経緯、親との関係、評価などがあれば、なお良い。

□相談先、メインバンク、税理士、司法書士、弁護士、金融機関などの連絡先

 

※その他資料
□賃貸借契約書
□管理委託契約書、サブリース契約書
□新築時の施工図面・建築確認済証・改修図面、保証書
□固定資産税課税明細
□法人化している場合:法人の登記簿謄本、定款、株主名簿など

後継ぎ候補に伝えるのはタイミングを見計らって

次は全体像を踏まえて、どの賃貸不動産を誰に受け渡すかを決めていきます。ひと昔前のように、後継ぎは長男とは限りません。賃貸経営の適性や意欲は、弟や妹が強い可能性もあります。オーナー自身で徐々に絞り込んで、気持ちが決まったら、子どもの意思を確認しましょう。

「お互いに真剣に取り組むなら、お父さん・お母さんと継がせたい子どもが1つのテーブルを囲んで、今後の話をするのが一番重要だと思います」(杉江さん)

話すタイミングも大切です。

「早ければ早いに越したことはないという説もありますが、そうとは限りません。子どもたちにとっても、適切な時機があります。30~40代の働き盛りの段階では『忙しいから』と聞く耳を持たない可能性も。50歳を過ぎ、定年が視野に入り第二の人生を考え始める段階で話をすれば、伝わりやすいでしょう。意欲がありそうなら、まずは通帳入金や申告書のチェックなど、経理事務の手伝いなどを任せて様子を見るのも有効です。培ったノウハウ、築いてきたネットワークを次世代に徐々に受け渡して行きましょう」(杉江さん)

もっとも、大家さんの中には、子どもが小さい頃からリフォーム現場に連れて行くなど、興味を持たせて、意識付けをしているオーナーもいます。自分のスタイルで準備を進めましょう。

”思い”をのこす|引き継ぎをスムーズにし思いも伝える遺言書

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遺言は相続争いを防ぐ“治療薬”にとどまらず、大家さん業を引き継ぎやすくする潤滑剤にもなります。

相続発生後はやることが多い。素早い遺産分割がカギ

引き継ぎの本番は、相続発生が合図になります。そこから短期間で遺産相続や賃貸経営にまつわる手続きを行わなければいけません。

亡くなったら1~2週間以内に、葬儀を執り行い、死亡届や年金支給の停止を申請。3カ月以内に相続放棄をするか否かを決め、4カ月以内に故人の所得税の「準確定申告」を行います。相続税の申告納税は10カ月以内。次から次へと締め切りが迫ってきます。

以下に相続が発生した後にやることをまとめていますが、手続きの多さがわかるかと思います。引き継ぎの準備を怠り、後継者が決まらないまま相続が発生してしまったらどうなってしまうでしょうか。

相続発生後に子世代が自身で行える手続きもありますが、短時間で間違いなく進めるには専門家の力を借りた方がベター。親世代が生前に準備できる項目もあるので、できるところから始めましょう。

相続発生時に実際にやること
1.戸籍の収集(司法書士)
2.不動産の謄本、公図、測量図、名寄帳、
3.評価証明書の取得(司法書士)
4.銀行等残高証明書の取得(行政書士)
5.通帳3年以内状況確認(税理士)
6.未支給年金の請求(社会保険労務士)
7.死亡保険金の請求(行政書士)
8.財産目録の作成(税理士)
9.遺産分割協議書の作成(司法書士)
10.不動産の名義変更(法務局) (司法書士)
11.預金・証券等の名義変更・払戻等(行政書士)
12.相続税申告(税理士)
13.税務調査(事前調査・立会い・交渉・申告)(税理士)

新宿総合会計事務所「ワンパック相続」より抜粋。()内は同事務所に依頼した際に担当する士業

引き継ぎの空白を作らず手続きを円滑にする遺言書

遺産分割をスムーズに進め、賃貸経営の空白期間を作らないために役立つのが遺言です。第一に、親が遺産分割を決めることで、相続争いを防ぐ効果があります。

さらに、大家さん業の引き継ぎという観点からみると、新旧オーナーをつなぐ潤滑剤としての効果も。あらかじめバトンを渡す相手を指定しておけば、遺産分割協議も早期にまとまり、相続人を確定できます。賃貸経営の主導者が決まれば、口座や管理契約等の変更もスムーズです。

「『代々の土地は長男に、思い入れのある物件は長女に継がせたい』『子どもがいないので、すべて妻に相続させたい』など、渡したい人・モノが明確な場合に遺言書で指定することで、トラブルが起こりにくくなります」(杉江さん)

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自身の思いを付言事項として残すこともおすすめです。法的効力はないので、あまり意味はないという見方もあります。しかし誰に何を遺すか、その理由やどう扱ってほしいかという希望、メッセージを添えることで、家族の結束力が高まり、話がまとまりやすくなるケースも多いのです。

遺言書を書く前には、相続税の試算を行うことも大切です。

「相続人ごとの納税額がわかるので、分割割合を決める参考にもなります。数パターンでシミュレーションをしましょう」(藤澤さん)

自筆証書遺言と公正証書遺言をどう使い分ける?

法的に認められた遺言書には、自分の手書きで作れる「自筆証書遺言」と、公証役場の専門家と証人の立ち合いで中身を確認しながら作成する「公正証書遺言」に大別できます(※1)。

※1 秘密証書遺言もあるが、ほとんど利用されていないため割愛

「自筆証書遺言は手軽に作れる半面、家庭裁判所の検認を受けなければ効力を発揮しません。この検認には2カ月くらいかかります。公正証書遺言なら検認が不要で、すぐ手続きに利用できます。素早く進めるために、公正証書遺言を推奨しています」(杉江さん)

ただし、公正証書遺言は作成するときに手間と時間、コストがかかります。

「現在(※2)、公証役場が混んでいて遺言作成に2カ月程度かかるケースが少なくありません。もし相続が間近に迫っている場合には、まず自筆証書遺言を用意し、並行して公正証書遺言の作成に取り組む方法もあります」(藤澤さん)

※2 2024年7月現在

自筆証書遺言の例を下に示したので参照してみてください。ポイントを押さえて、みんなが納得する遺言書を用意しておきましょう。

遺言を書くタイミングも重要です。大家さん業の引き継ぎを考え始めたら、早めに取り組みましょう。少なくとも判断能力が衰えてくる前には書いておきたいところです。

「時間がたてば財産の内容も家族の人間模様も変わります。3~5年に一度は見直して修正することをおすすめします」(杉江さん)

要件を満たさないと無効になる⁉「遺言書」作成のポイント

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自分の手書きで作成できる自筆証書遺言を例に、書き方の注意点とポイントを紹介します。なお、公正証書遺言は、法律実務の経験者である公証人が作成をサポートするため、無効になるリスクは少なくなります。

●遺言書は自筆、財産目録はパソコン可
遺言書は本文と日付、署名はすべて遺言者本人の手書きが原則。財産目録についてはパソコンでの作成も可能になった(2019 年から)。登記事項証明書や通帳のコピーの添付もできます。

●財産の中身と相続人を具体的に明示
個々の財産を特定して、誰に何を残すかを具体的に記します。不動産なら所在地や土地・建物の別、面積など。預貯金は金融機関名と口座、有価証券なら社名と株数などを明記します。

●付言事項で思いものこせる
法的な効力を持たせる本文とは別に付け加えられる言葉。家族への感謝の気持ち、事業の後継者へのメッセージなど自由に書けます。相続人の不満解消、トラブル防止にも役立ちます。

Check!遺産分割の仕方によって相続税額が変わる

法的効力は問題がなくても、相続税が高い分割割合になっている遺言もあります。配偶者が相続する割合、小規模宅地特例を誰に適用するかによって税額は大きく変わるので、事前に相続税の試算をしたうえで作成することが賢明です。

Check!法務局での保管制度も検討を

自筆証書遺言は紛失や改ざんのリスクがありますが、法務局の保管制度を活用すると、原本と電子データが長期間適性に管理されます。家庭裁判所の検認も不要。相続人は遺言書の閲覧ができ、遺言書情報証明書の交付も受けられます。

生前にアパート・マンション経営を引き継ぐ主な方法

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ここまでは大家さん業を相続と同時に引き継ぐ手続きを解説してきました。一方で、オーナーが生きている間に事業を引き継ぐことも可能です。代表的な方法を紹介します。

生前贈与

賃貸住宅の建物だけを子どもに譲れば経営権が移転します。相続時精算課税制度を利用すれば2500万円まで贈与税ゼロで資産を贈与できます。土地はのちに相続で受け継げば完全所有権になります。

家族信託

家族信託は、信託の仕組みを活用して、家族に自分の財産の管理や運用、処分を任せられる制度。認知症対策にもなります。遺言は相続人への一度きりの財産移転しか指定できませんが、家族信託の場合は、相続人以外を含む複数の親族に連続して経営権を移すことができます。

法人化

資産管理会社を立ち上げて賃貸事業を移転する方法も。生前贈与と同様、土地所有権はオーナーに残し、建物だけを法人に移すケースが多くあります。法人化は所得税対策にも有効です。

アパート・マンション経営の引き継ぎ、こんな時どうする⁉よくある相談Q&A

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Q1.家族会議や対話が大切だと言われますが、話し合うタイミングや話すきっかけがなかなかつかめません。

A.いきなり全員で家族会議をしても本音は出ません。家族それぞれの適性を見て、後継者の候補と個別に対話するなどの根回しも大切です。

特定の誰かをエコひいきしていると思われると、兄弟で揉めて相続争いを招くもとに。お正月やお盆など、みんなが揃う機会を設けて話をしてみましょう。親世代オーナーから歩み寄って行くのが大切です。

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Q.管理会社に入居者募集から賃貸管理まで委託中です。そのまま受け渡せば大丈夫では?

A.管理会社は、委託された業務の代行が基本です。原状回復や設備導入など、かかる費用のイメージを持っていないと、言われるがまま割高になるおそれも。

賃貸物件の資産価値を守り、収益を高めるための意思決定の考え方など、子世代に賃貸経営のノウハウを伝授するのは親世代オーナーの役割と心得ましょう。

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Q.子どもに少しずつ賃貸経営の権限を移したいのですが、何から任せればいいかわかりません。

A.まずは入金管理や帳簿付けなどの経理を手伝ってもらったり、協力会社との打ち合わせに同席してもらいましょう。

空室対策のためのリフォームや入居者募集のアイデアを一緒に考えるのもおすすめ。セミナーや物件見学会、大家さんフェスタなどのオーナー向けイベントに親子で参加して、情報収集するのも良いでしょう。

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Q.早く賃貸経営に慣れてもらおうと、築30年の物件を渡そうとしたら「いらない」と拒絶されました。なぜ?

A.築古で空室が多い物件ではありませんか?手間がかかりそうな物件の場合、賃貸経営を継ぐこと自体に拒否感を持ち、現金で相続したいという子世代も多いようです。

賃貸経営に魅力を感じて、これからも財産を守って行こうと思ってもらえるように、修繕やリノベーションをして、資産価値や競争力を高めた上で譲り渡しましょう。

まとめ

今回は「大家さん業」の引き継ぎにスポットを当てて解説しました。実際には、相続税を把握したら、納税や節税対策・分割対策などの相続対策もあわせて行うことが賢明です。

その際に注意したいのは、過度な生前贈与や負債の膨張など、節税に偏った対策に向かうこと。残りの人生に必要な生活費を確保してオーナー自身の人生を豊かにしながら、次世代の後継者も受け継ぎたくなる不動産にできるよう、バランス良い対策を進めてください。

※この記事は2024年9月5日時点の情報をもとに作成しています

取材・文/木村 元紀 イラスト/高村あゆみ(よくある相談Q&A部分以外)

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